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第15回くらがく(フードロスについて)

はじめに

「ごはんを残さず食べてね。」
このような言葉を誰しもが一度は言われたことがあるのではないでしょうか。両親や祖父母、学校の先生、食べ物を提供してくれる人など。小さな頃から言われてきたはずの言葉が、社会全体で守られているでしょうか。今回のくらがくのテーマは「フードロス」について。実際にフードバンク活動を行っている方をゲストにお招きしました。

ゲストの紹介

今回のくらがくのゲストは、特定非営利活動法バンク岡山理事長の糸山 智恵(いとやま ちえ)さん。岡山県生まれ。糸山さんは現在、フードバンク活動だけでなく、訪問介護事業や、学童保育、特定非営利活動法人オレンジハート理事長等として市民活動を展開しています。

食品ロスの現状について

「食品ロス」とは、まだ食べられるのに、捨てられてしまう食べ物のことです。日本の1年間あたりの食品ロスは、約612万トン。東京ドーム(124m³)約5杯分だそうです。国民1人あたりに換算すると、お茶碗1杯分を毎日捨てていることになります。世界に目を向けてみると、1年間に13億トンもの食品を捨てているのです。捨てられた13億トンの食品は、世界の食料生産量の約3分の1に当たります。しかし、世界の9人に1人は栄養不足。さらに、食品ロスを放置すると、大量の食品が無駄になるだけでなく、環境悪化や将来的な人口増加による食料危機にも対応できないと言われています。つまり、日本だけでなく世界中の問題です。糸山さんは、「コロナ禍による流通が滞り、食品がスーパーにない状況もあった。当たり前であると思っていた食品が無くなることもある。だから、食品ロスは大きな課題だ。」と私たちに伝えてくれました。

第15回くらがく講師の資料

フードバンクの歴史

1967年、アメリカで始まったフードバンク活動。ジョン・ヴァンヘンゲルさんが始めました。きっかけは、彼が出会った女性が、廃棄された食品を食べていたことです。廃棄された食品はまだ食べることができるものばかり。スーパーマーケットに協力してもらい、貧困者に対して、食料支援を始めました。日本では、2000年にセカンドハーベストジャパンがフードバンク活動を始め、日本において151団体までフードバンク活動が広がりました。

フードバンク岡山の歩み

2012年に始まったフードバンク岡山。始めは学習会を開始し、その後、団体を設立。1年ほど活動を行い、法人化へ。現在は、多数の企業・団体と連携し、社会福祉施設や、ホームレス支援団体、児童養護施設などへ食料を提供しているそうです。

ない・ない・ない活動

フードバンク岡山の活動は、「ない・ない・ない」の身軽な活動。では、何が一体「ない」のか。
フードバンクの活動には、以下のものが必要です。

  • 倉庫:寄付された食料品を保存する場所

  • 事務所:食料品受け渡しの事務所

  • 個人宅への配送:ドライバーが提供先へ届ける

上記のものを用意する中で、費用(コスト)が発生します。しかし、長期的な活動を行う上で、安価なコストでなければなりません。しかし、岡山県は面積も広く、支援者へ食料を提供するのにも多くの労力がかかります。そこで、コスト等を考慮した上記に挙げたものが「ない」という形で活動しているそうです。つまり、

  • 倉庫:なし(関係団体の一室を借りている)

  • 事務所:なし(Web上でのやりとりを実施)

  • 個人宅への配送:(受け取り側が取りに行く)

このような活動を行っています。

糸山さんが活動を続ける理由

桃を例に糸山さんは私たちに活動を続ける理由を伝えてくれました。「食品ロス削減や困窮者支援を続ける中で、終わりが見えてこない活動がフードバンク活動である。私たちは桃(食品)を拾って送る(届ける)から、是非その桃が上流から流れる背景や桃の流れる先(下流。提供先)を知ってほしい。桃が流れてこない社会を作ってほしいと切に願っている。」このように、私たちへ投げかけていました。また、「食べ物は人と人とが繋がる良いきっかけになる。ゆるく人と繋がりながら、誰もが住みやすい社会を作っていきたい。」と私たちに伝えてくれました。

第15回くらがく(講師の資料)


最後に

コロナ禍になって、生活困窮者に対する食品提供の支援が度々メディアに取り上げられています。コロナ禍に限った話ではなく、経済が上向いた状態でも、食料を満足して食べる事ができない人が日本だけでなく、世界中にいます。多くの食品ロスによって、人以外にも与えるダメージは計り知れません。そんな中、2012年から誰かのために始めたフードバンク活動を行っている糸山さんのお話しを聞いて、私たちにもできることはあるのだろうと思います。食品を廃棄しない工夫を少しでもすることが、直接の活動に携わらなくても食品ロスを発生させないことの一つです。また、フードバンク活動が提供している先を考えてみる。このことも大事だと思います。
誰もが安心して食事ができる社会へ。

菊竹 有希

第15回くらがくの様子



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