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ぼくらの知らない写真家・星野真

こんにちは。
KUONの藤原です。

どんな物語にも始まりがある。
今回はぼくとカメラマン星野くんのお話です。
ぼくらの出会いは西早稲田の小さな写真スタジオでした。

ファッション業界とは縁遠い仕事をしながら、30歳を越えてからファッション業界に飛び込んだぼくがまず最初に知ったのが、自分がほとんど何も知らない。ということでした。

星野くんはぼくがはじめて知り合ったカメラマンです。
彼がいなければ、はじめて作った1sinの帽子を西早稲田のスタジオの床に直置きで置いて、デジカメで撮影するところでした。

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これがその時の写真。もう10年くらい前ですね。
星野くんは自分のことを写真家/フォトグラファーと呼ぶので、今回はカメラマンではなくフォトグラファーに統一して書いていきます。

当時の星野くんは24,5歳だったと思います。
彼はいわゆる写真の専門学校などは出ていなくて、独学で勉強をして、そのまま都内の写真スタジオで働きはじめたそうです。
背は180cm以上あって、キリッとすると伊勢谷友介、気を抜くとエスパー伊東。残念ながらほとんどの時間がエスパー伊東です。

ぼくと反対で寡黙で実直な性格。
それが良かったのか、これをきっかけに撮影の仕事をお願いするようになりました。

当時、ぼくは東日本大震災の復興支援活動に注力していて、福島県の南相馬市、宮城県の南三陸町、岩手県の大槌町に頻繁に通っていたのですが、星野くんは運転手兼カメラマンとして本当に何度も同行してくれました。

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彼はオールラウンドで何でも撮れますが、生粋のファッションフォトグラファーではないので、その真価は風景やブツ撮りで発揮されます。
皆さんがイメージする、ファッションフォトグラファーは、モデルさんや被写体のテンションが上がるように「いいよ〜」とか声かけをして、パッション強めの方だと思うのですが、星野くんは気を抜くとすぐに存在が消えます。

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そうなんです、彼のすごいところは存在を消すのです。
被写体にとって、特に素人の人にとってカメラを向けられるというのは、この上なく緊張します。大変な経験をされた被災地の方々はなおさらです。
星野くんだからこそ撮れた写真がたくさんあります。

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それと非常に忍耐強いので、いい写真が撮れるまで何時間でも待ちます。

微動だにせず。

ある時、僕が南三陸町で「朝陽を撮りたいね」と言ったときは、2月のとても寒い明け方の2時間くらいを動かずに朝陽を待っていました。
ぼくはと言うと、あまりの寒さに10分で自分の言ったことに後悔をして、早々に車に戻っておりました…
自然に対しても存在を消す。
だからお日様も恥ずかしがることなく最高の朝陽を魅せてくれたのでしょう。

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皆さんは「ブツ撮り」ってご存知ですが。
こういう写真です。
オンラインストアなどでお馴染みだと思います。

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ブツ撮りって、めちゃくちゃたくさん撮るので本来は時間との勝負なんですが、星野くんの場合、ライティングひとつに、服についたホコリひとつにも徹底的にこだわって撮影するので、とにかく時間がかかります。
初めて眼鏡の撮影をした際には、1時間かけてセットした照明が気に入らないといってバラしたときは腰から砕け落ちました。

なので、ぼくが星野くんと朝イチで交わす挨拶は
「星野くん、今日は巻きでいこう」

こんな感じで、星野くんとはもう10年近くの付き合いなります。
ぼくにも彼にも家族ができて、星野家は男の子が3人です!

昨年9月にKUONの直営店がオープンしました。
ぼくらはお客様が気軽に来れて、長居できるお店になって欲しいと思っています。入り口近くにちょっとしたスペースがあって、これまでに何度か行ったイベントもそこを使うことが多いです。ぼくらは、このスペースを気軽に楽しめるアートギャラリーにしたいと思っています。

その第一段として、写真家/フォトグラファー・星野真の展覧会を企画しました。

彼が今回の写真展に寄せて書いた文章の中に、彼の写真への想いが詰まっています。

10年の付き合いですが、ここまで深く知ったのは初めてです。

今回の企画に際して、KUONディレクター畠山が出したお題がSS21のKUONのシーズンテーマである「花鳥風月」。

これを星野くんなりに表現して欲しいとのことでした。

ぜひリンク先を読んでいただきたいです。

ここには“ぼくらの星野くん”ではなく”写真家・星野真”がいます。
ぼく、ちょっと感動しちゃいました。

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僕は写真のことは全然わからないのですが、群馬県の奥の方の山の中で、シャッタースピードを遅くして、川に夕日が沈んでいくところを撮ったそうです。

この写真を前に、星野くんは言いました。

「水って金属じゃないですか」

よく考えると全然違うんですけど、この写真を見ながらだとKUONチームみんなが「たしかに〜」ってなったんです。繰り返しますが、全然金属じゃないんですけどね。

衝撃を受けるとともに、ぼくの知っている星野くんはほんとに一部だけだったんだと再発見してすごく嬉しくなりました。

あと、今回の作品撮りに毎週関東近郊の山や川などに行っていたそうなのですが、家族全員で車で行って、日中は子供と自然の中で遊んで、車中泊して早朝と夜にひとり撮影しているという話も、家族を大切にする星野くんらしくてすごく良かったです。

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そして、彼にとっては、ブツ撮りもひとつの作品なのだと気づきました。
彼にとってはブツ撮りも、被災地で撮る写真も、自然を相手にする写真もすべて作品なのです。だからこんなに丁寧に撮影するのです。
めちゃくちゃプロフェッショナルでした。

すごいぞ!星野くん。

追伸
年賀状の家族写真、フォトグラファーらしくもっとちゃんとしたの撮れよ笑

“MAKOTO HOSHINO-花鳥風月-“
会期:6月4日(金)〜6日(日)
※全日程で写真家在廊
場所:KUON Flagship Store
住所:東京都渋谷区神宮前2-15-10
時間:12:00~19:00

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