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サスティナブルファッションのすすめ

こんにちは、KUONの藤原です。

冒頭からすみません。
先に言っておきます。ぼくはあまりおすすめしません。
やる気と覚悟のある人だけやってください。と。

サスティナブルファッションをやるにあたって重要なことは、まず「世界をより良くしよう」と強く想っていること。「トレンドだから、ひとまずやってみよう」は、この分野はアンタッチャブルです。前回のnote「ぼくらの存在意義」に書きましたが、KUONのサスティナビリティ事業の発注金額の推移です。スタートからざっと17倍になりました。

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仮に原価を25%(実際は生地などは別なのでもう少し低いですね)としたら2500万円程の商品がマーケットに出ていることになります。

少なくともKUONのサスティナビリティ事業は成長し続けています。

今回は、ぼくたちが思うサスティナブルファッションとそのビジネスについて書いてみたいと思います。いつもの様に長くなりますのでお時間のある時にお読みいただけましたら嬉しいです。

サスティナブルファッションをはじめたきっかけ

2010年頃だったと思います、東日本大震災の少し前です。
これまた前回のnoteにも書きましたが、ぼくはファッションをツールにしたソーシャルビジネスを志し起業をしました。

パタゴニアの創業者イヴァン・シェイナードの「社員をサーフィンに行かせよう」やムハマド・ユヌスの「ソーシャル・ビジネス革命―世界の課題を解決する新たな経済」に大きく感銘を受けました。
あとは、ハーバード・ビジネスレビュー2012年3月号
特集:「チェンジ・ザ・ワールド」の経営

これを読んだ時にぼくの明確な意志、覚悟が決まったと思います。

GUCCIなどを傘下に収めるKERING(当時はPPR)の環境貸借対照表や、信用スコアについて、マイケル・E・ポーター氏のCSV(共有価値の創造)やイヴァン・シェイナードのベネフィットカンパニーなど、皆さんもぜひ読んでいただければと思いますが、2020年の今をとても的確に予測していると思います。

これは間違いなく次のビジネスのスタンダードになるな。当時のぼくはそう思いました。ここで語られていることは、これからの企業の新しい指標となり、投資の対象になるのだろうと。リーマンショック以後の世界でものすごい勢いで加速する中国に対抗する欧米諸国の切り札なのかもしれないと。当時の中国の企業は環境などへの配慮が弱かったと思います。

そんなことを当時の大手セレクトショップやファッションモールの経営幹部を前に熱く語ったこともありました。もちろん皆さん「ぽかーん」に近い反応でした。当時のぼくは何の実績も結果も出せていなかったので当たり前なのですが。今年になってようやく当時ぽかーんと聞いていた市之瀬さんに、藤原さんがあの時話していたことが分かってきましたと言われました。

1sinもKUONもブランドのフィロソフィーには「デザインによる社会的課題の解決に向けて取り組む」を掲げています。ブランドのコンセプトやデザインはあくまでもカッコいいことが最重要ですが、活動する理念としてはこういった想いがあります。

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サスティナブルファッションの難しさ

SDGsとならびサスティナブルはいま1番のパワーワードです。
ではサスティナブルって一体なんなんでしょう?

日本語では「持続可能な」とか「持続可能性」と言いますね。
ぼくは、「この世界や社会をより良くするための取り組みを続けること」と個人的に定義しています。それは、地球環境や資源などもひっくるめて、皆が幸せになることを目指しています。定義をすることよりも動くことが大事と思っているタイプなので。

しかし、これをファッションブランド、ファッションビジネスに含める、置き換えるのは容易なことではありません。

ファッションの本質は時代を先取ったり、カウンターカルチャーであるとぼくは思うのです。だからトレンドがあり、綺麗なジャケットが流行った翌年にオーバーサイズのスウェットが流行るのだと思います。そこに「皆の幸せ」を大上段に構えるとなんか収まりが悪いというか、調子が狂うというか。「食」や「住まい」などはすんなり入ってくるのですけど、ファッションはちょっと違うとぼくは感じています。

さらに、ファッションビジネスの話になると、大量生産・大量消費や在庫廃棄など既存のファッションビジネスとの相性が当然ながら良くない。

一般的に洋服をつくるには、生地やボタンなどの副資材を初めとしてさまざまな物が必要で、それらを工場で仕上げて店頭で販売するまでにはたくさんの人が関わります。

例えばボタン。オーダーに合わせて1個ずつつくるのはあまりにもハイコストで現実不可能なので大量につくってストックします。

例えばシャツ。工場には最低ロットといって、オーダーはこの枚数以上でお願いします。という条件があります。また、工場で働く人たちはもちろんプロですが、1枚目から完璧な縫製ができるわけではありません。100枚くらい縫ってようやくクセが掴めて調子が出て安定します。スポーツ選手だって、小説家だって、皆がすぐにフルスロットルで動ける訳ではないですよね。ちなみに最低ロットは30枚程度が多いので製品が安定するには少し足りないと思います。
いくらパターンが素晴らしいといってもそれを縫製する人の技術がなければ完成品は驚くほど違うものになります。

小ロットは工賃が高くなる、それは当然商品に反映され(もしされなければ売り手がサスティナブルにならない)、しかもクオリティは高くない。これで納得するお客様はなかなかいないですよね。

これらの課題や問題をITの力を使って解決しようとする動きはありますが、現状ではメールもなくFAXでやりとりする工場も多くあります。

強い想いを持って、サスティナブルファッションを目指すほどに、モノづくりの現場の仕組みとのギャップに戸惑い、苦戦すると思います。

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KUONがすすめるサスティナブルファッション

まず、自分たちが取り組む課題や問題を自分たちのビジネスの根幹に組み込む。

KUONで言えば「ボロ」や「裂織り」が代表的です。

ボロ=襤褸=BORO
ボロについての詳細はこちらをご覧ください。

簡単に言うと、使い古して役に立たなくなった布やぼろぎれ、着古して破れたりつぎだらけの衣服のことです。欧米では抽象画のようなアートの文脈として評価されていて、BOROで通じます。このボロをKUONでは生地として使用するに際して下記のような取り組みをしています。
※取り組み自体は前回のnoteで紹介していますのでご覧ください。

・東日本大震災の被災地の女性たちの雇用創出、生きがいの創造
・廃棄される生地の再利用
・刺し子などの日本の伝統文化の継承

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ボロは名前の通り、すぐには使えないことが多いので、補修などが必要です。その工程を震災の被災地である岩手県大槌町の女性たちに仕事としてお願いしています。

裂織り
使い古した布を細く裂き、織りこみ、衣服や生活用品へと再生する日本古来の伝統技術です。

・障がい者の自立支援
・廃棄される生地の再利用
・裂織りという伝統技術の継承

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KUONの裂織りは盛岡市の障がい者支援事業を行う幸呼来Japanと協業して生産しています。彼らの集中力はとても素晴らしく、とてもクオリティの高い裂織りを生産してくれます。

こうした取り組みが、冒頭の仕事発注額につながります。

これらをブランドの顔にする。ビジネスの軸とすることで利益が生まれ、結果として継続性につながります。

ボロのビジネスモデルでいえば、

1. シグネチャーボロシリーズ

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これは古くは150年前の古布(ボロといいます)を1着ずつテーラーが仕立てるハイエンドラインのジャケットです。価格は100万円ほどします。とても高価なジャケットですが、特に海外のVIPのお客様に好まれます。アートして投資対象として購入されるお客様もいます。シーズンレスで展開することで、ブランド最高峰として認知されています。

2. アップサイクルボロシリーズ

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シグネチャーのボロジャケットの生産工程で生じるボロの端切れを刺し子でパッチワークにしてつくるジャケットです。価格は20~30万円ほどで、シグネチャージャケットはちょっと手が出ないけど、ボロの商品が欲しいというお客様が購入します。リサイクルのボロをさらにアップサイクルするということで、取り組み自体への評価も高く、海外の美術館や博物館で展示されることもあり、いまはフィレンツェのフェラガモ美術館が開催している「SUSTAINABLE THINKING」展に日本代表として展示されています。この工程も大槌町で行っています。

シグネチャーシリーズと違って、シーズン毎にデザインを変えることもお客様の購買意欲を高めていると思います。

3. アップサイクルボロタイプ2シリーズ

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古布ではなく、工場の生産過程で生じる端切れをパッチワークにしたシリーズです。ブランドがスタートして5年目に実用化ができるようになりました。価格は5万〜20万ほど。また汎用性が高い素材なので小物などにも使えるので、先日発売した財布は2万円代でたくさんの反響がありました。

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プロモーションにはメンズファッションアイコンのNick Wooster氏が参加をしてくれてこれも大きな反響を呼びました。NickさんはKUONをずっとサポートをしてくれています。

松竹梅とつくることはブランドビジネスの王道ですが、これにより、
・ボロの中にストーリーがつくれる
・コストの高い商品の説得力が増す
・お客さまに憧れをもっていただける
・尖ったゾーンをつくれる
ブランドにとって値段を下げるより上げる方が難しいです。

これが課題解決とブランディングを共存するためにできることのひとつだと思います。

ただし、これをするには時間がかかります。KUONのような小さなブランドでもここまでくるのに5年かかっています。

ぼくらはカッコいい洋服をつくる工程に課題可決を含めるようにしましたが、日本の伝統技術を守る!職人を守る!地球環境を守る!などをブランドのコンセプトにするのはすごく難しいです。コンセプト=商品となるので、フィロソフィーなどに組み込む方がいいと思います。パタゴニアのようになるのはけっこう奇跡のようなこと。ちなみにパタゴニアの創業は1973年です。

9月に直営店をオープンして、店頭で接客していると、若いお客様から「KUONのサスティナビリティがカッコ良くて好きです」と言ってもらえることが、思っていた以上に多いことに驚いています。最初はインスタなどでブランドのことを知ってくれて、デザインに惹かれて買ったけど、調べてみるとサスティナビリティに気を使っていて一層好きになった。と言ってもらえます。これはすごく嬉しいですし、意図してやってきたことが少しずつ認知されているのを感じます。

ファッションの領域から攻めるとサスティナビリティが邪魔になり→売れない。
サスティナビリティの領域から攻めるとファッションにたどり着けない→売れない。
現状ほとんどのブランドがこの問題を抱えてしまっているのではないでしょうか。KUONも利益構造の視点からみたらまだまだ改良しなくてはいけません。

おそらく、サスティナブルファッションはクリエイションを高めながら(かっこいいデザインを目指して)、ビジネスとの両軸で進めないと難しいのではないかと思います。

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ぼくたちがこれからやりたいこと

THE DAYのクリエイティブディレクター佐藤夏生さんの「課題解決ではなく、可能性創造」という考えに影響を受けています。

ぼくたちがこの5年で取り組んできたことは課題の解決。
課題をデザインで解決しています。

これからは可能性を見つけたい。未来ということではなく、可能性。それが新しいビジネスを創造して、結果として課題を解決することにもつながると。

そう考えたときに、「いいことをする」というぼくの原点に戻ります。

「いいこと」をしたら、「いいこと」がかえってきた。これをひろげてみたいと思っています。

実はKUONを立ち上げる前の2015年頃にローンチしようとした企画があります。
簡単にいうと、ボランティアや公共のイベントに参加をするとアパレル在庫を安く買えるという仕組みです。

当時からファッション業界の大量生産や過剰在庫はこの先大きな問題になることはわかっていました。でも業界のシステム上仕方がない。であれば、そのシステムを壊さず、ゆるやかに移行するフェーズを考えました。ぼくは、個人としてはドラスティックに変革をするのがあまり好きではないし、得意ではないです。

アパレル企業としては在庫処分を綺麗な消化にしたい。在庫処分ではなく社会貢献のサポートという大義名分。

一方で、東日本大震災後にボランティア活動などが社会に認知、普及してきました。そして2013年の年末に東京オリンピックが決まりました。ぼくはボランティアがもっと世の中に広まると思いました。ぼくはここに可能性を感じました。

ぼくは震災後に現地でいくつかの活動をしてきました。
クラウドファンディングにも挑戦しました。

でも、自分ではボランティアはしません。ブランドでもチャリティーもしませんでした。ぼくはどうすればこの活動が持続するかを考えていました。
KUONのサスティナビリティの原点はここにあると思います。

だけれども、現地でボランティア活動をする方々とは毎週のように会うので仲良しになります。彼らは金曜日の仕事終わりに夜行バスで現地に入り、土日とめちゃくちゃ働いて、日曜の夜行バスで帰って、月曜から仕事をしていました。1番すごいと思ったのは、女性の方で、車の免許がなくて移動は基本ヒッチハイクなのですが、めちゃくちゃ働くので現地のお父さん、お母さんたちはみんな知ってて、彼女が道に立っていると、みなさん停まって車に乗せてくれるのです。

正直に言うと、ぼくには彼らのことを理解できないところがたくさんあったのですが、理解できないことを理解できたのはぼくにとってとても重要でした。

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日本には古くから「清く正しく慎ましく」といった思想があって、ぼくも素敵だとは思うけど、いいことをしているのだから、いいことがかえってきたらいいじゃないか。とも思っていました。

新しい服や素敵な服を着るとぼくは気持ちがいいです。気分があがります。
そういう両者をジョイントしたかった。

これをきっかけにアパレルはセールや在庫処分について真剣に向かい合い、一方でいいことをした人にはいいことがかえってくることがはじまればいいと思います。

もちろん、ボランティアや社会貢献は見返りを求めていない。
確かにそうかもしれません。ぼくが見て来た人たちもそうでした。
単なるアパレルの在庫処分の助けをしているだけ。良くないシステムの延命
そうなのかもしれません。
でも、これからはどうでしょうか。とぼくは思うのです。

日本はたくさんの課題、問題をかかえています。
人的リソースは間違いなく必要です。

その時のオプションとして、こういった先行事例があってもいいのではないかと。
それが可能性の創造だとぼくは思うのです。

アルバイトをするように、ボランティアに参加をし、ベネフィットとして洋服を安く買う。最初は在庫処分がスタートかもしれませんが、プロパー商品も含まれてもいい。少なくともKUONではそういった取り組みをしたいと思います。

あとは、これはぼくにも経験があったのですが、高齢者の介護やデイサービスで働くスタッフの大変さ。ぼくは短期間でしたが心身ともに疲労しました。

そんな時に、新しい服や素敵な服を着ると明るい気持ちになりました。こういう人たちのサポートにもつながっていけたらと思います。
それがファッションのもつポジティブな力だとぼくは信じています。

少しずつですが来年から形にするべく動きますので、賛同してくれる方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。一緒に考えてください。

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