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この美しい景色はそこに暮らす人たちによってつくられた | 神奈川県南足柄市



◇大雄山線に乗り南足柄市へ


五月中旬、箱根外輪山の一つ明神ヶ岳の麓を歩いた。

明神ヶ岳山頂から足柄平野へと伸びるゆるやかな尾根を眺めるたび、「いい尾根だな~」「あそこを歩いている人になりたいな」と思っているのだけれど、なかなか実行できないでいる。一度、山麓だけでも歩いてみよう ! と思いでかけた。

小田急線に乗って小田原へと向かう。丹沢山地の南の端を通りぬけ、新松田駅を過ぎ酒匂川の鉄橋を渡ると、前方に箱根の山がドーンと壁のように現れる ( まさに天下の険 ! ) 。そして線路が直角に近いくらい左にカーブして、酒匂川沿いを南下していく。いよいよ箱根に近づいてきたぞみたいな感じがして、そのカーブを曲がるとき少し気持ちが高鳴る。

小田原駅に着き、伊豆箱根鉄道大雄山線に乗り換える。大雄山線に乗るのは初めて。実は小田原駅で少し離れたホームに停車している大雄山線の電車がずっと気になっていたので、嬉しい。

箱根外輪山の山麓を走る車窓からは、左手に新緑の箱根の山々が迫っているのが、右手には酒匂川沿いに広がる足柄平野が見える。「いや~いい所だな~」なんて思いながら電車に揺られ、終点の大雄山駅に着いた。

◇狩川を遡ると美しい景色が広がっていた

大雄山駅は南足柄市の中心部にある。市役所などの行政施設や商業施設などが集まっている所で、私が思っていた山麓のイメージとはちょっと違っていた。

駅の周りを少し散策してから、酒匂川の支流狩川にかかる大雄橋を渡り、上流方向に向かって歩いていく。住宅地を抜けると山がだんだんと近くなってきた。

狩川沿いの道から離れ、御殿場方面へとつながる県道78号線へ。交通量は少なく歩道も広めにしっかりと整備されているので安心して歩ける。苅野という地区辺りを歩いていた時、目の前に美しい景色が広がってきた。

なんだろう、この景色は!!

南足柄市苅野地区
左奥には箱根外輪山が

背後に箱根の外輪山がそびえ、いくつも山が重なり、雑木林や竹林、ミカン畑、茶畑、水田が広がっている。田植えの準備が進められた水田は土が均され、あぜ道は草が刈られきれいに整えられている。

山の麓に点在する民家や作業小屋、農機具や小さな工作物、そしてそこで働くひと、それぞれすべてが調和している。

美しい景色に心を打たれた。

◇『おもひでぽろぽろ』と美しい景色の理由

この景色にこんなにも心を打たれるのはなぜだろう。私自身が農村地帯の出身で、農村の原風景といえる景色を懐かしく感じるというのもあると思う。

映画『おもひでぽろぽろ』のワンシーンを思い出した。

タエ子とトシオが蔵王に行った帰り、田舎の景色についてトシオがこんなことを言っている。

田舎の景色ってやつは
みんな人間がつくったもんなんですよ
(あの森もあの林もこの小川も)
田んぼや畑だけじゃないんです
みーんなちゃんと歴史があってね
どこそこのひいじいさんが植えたとか拓いたとか
大昔からタキギや落ち葉やキノコをとっていたとか
人間が自然と闘ったり
自然からいろんなものをもらったりして
暮らしているうちに
うまいことできあがってきた景色なんですよ
これは
ー略ー
自然と人間の共同作業っていうかな

映画『おもひでぽろぽろ』より


そうか、やはりこの景色の美しさにはちゃんと理由があるんだ。

里山だったり、地形に合わせて作られた畑だったり水田だったり、水路だったり、橋だったり、石積みだったり……。この景色のなかにあるものは、そこに暮らす人たちが自然と共同し、自然に配慮しながらつくりあげてきたものなのだ。

長い歴史のなかで、この美しい景色にいったいどれだけ多くの人と多くの手がかけられてきたことだろうかと思いを馳せずにはいられなかった。


大雄山線の終点 大雄山駅
大雄山最乗寺や金時山への観光の拠点でもある
狩川上流に向かって歩いていく
奥にはポコンとした矢倉岳が
アオサギさんです
栴檀(せんだん)の花です
酒匂川近くの水田
緑に赤いトラクターが映える
酒匂川近くの水田
地形に合わせて作られていて美しい
左奥の平らな山は松田山
山頂部にはゴルフ場がある


途中立ち寄った石窯パン工房たかはしさん
石窯パン工房たかはしさんのパン (りんごシナモン)
材料を厳選されて丁寧に作られています
石窯パン工房たかはしさんの
足柄茶を使った焼き菓子


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