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「顧客の要求を満たす」を徹底すれば事業は成長するのか?創業期のソニーの事例から考える

久能@経営コーチです。社長の思いどおりに動く会社をつくるお手伝いをしています。「お客さまは神様」という神話はだいぶ神通力を失ってきたように思います。が、それでも顧客の要求には無理をしてでも応えるべき、という考え方は根強い気がしますね。

ホンダ、ソニーの創業者は顧客の要求に応えていたか?

ちょっと前にこんなツイートをしたんですが

藤沢武夫氏の本につづき、ソニー創業期の本を読んでるんですが、両社とも顧客の要求に応えるなんてさらっさら思ってないじゃん!というのが正直な感想です笑。

たとえばホンダのNo.2藤沢武夫さんなんて「お客」たるバイクの販売店の言うことなんて端っから聞こうと思ってません。

(販売店には)売る努力をさせなければいけない。そのためには、ルートをたくさんつくって、競争原理を導入しなければならない。

※( )内引用者。引用元は最後に書きます

顧客の言うことを聞こう、顧客の役に立とうという考えであれば「販売店が売りやすいように代理店制度を考えよう」となるはずだと思うわけです。

ソニー森田昭夫氏は10万台のOEM供給をバッサリ断る

そしてソニーも。こちらはもっとスゴイ。トランジスタラジオを完成させてアメリカに売り込みにいった森田昭夫氏。グローバーという時計会社の「10万台買おう。ただしグローバーのブランドをつけて売る」というオファーに対して

盛田はホテルで悩みに悩んだあげく、断る決意を固めたのです。

東京の経営陣からは「チャーーーンス!受けようぜ!」と言われていたにも関わらずです。断ることができたのは「ソニーを世界に名だたるブランドに育てあげる」とい明確なビジョンがあったから。にしても、とりあえず10万台売って稼いどこう、となってもおかしくはないと思いますけどね・・・🤔

とまぁ、世界ブランドとなる企業は顧客の要求よりも、自社がどうなりたいか、このビジネスから何を得たいのか、のほうに重点を置いていることが分かるエピソードです。

経営のコントロールを手放さなかったから革新的商品が生まれた

もちろん、安易に顧客の言うことを聞くのでなく、自社が経営のコントロールを握るという明確な方針にもとづいて会社を成長させ革新的な商品や販売手法を生み出し、結果的に消費者に、そして中間の代理店にも大きな利益をもたらすことになったのは言うまでもありませんね。

現代の普通の優良企業はどう考えている?

上記は歴史的超有名企業の事例ですが、身近でも同じような話を聞きました。友人がある業界で転職をしたのですが、転職先は業界トップ企業。ローテク産業ながらIT系の有名企業(◯天とか◯MOとかD◯Mとか)とも取引があり、コロナでもいちはやくリモートワーク導入するなど先端的な考えの会社だそうです(A社とします)。

対して元の会社は気合と根性、人情で戦ってきた社風。双方に固有の強さはあると思いますが、この1~2年でもだいぶ業績に差が開いてきたそうです(B社と呼びます)。

A社は何がそんなに強いの?と聞いたら、

A社はお客に対しても主導権が完全にこっちにあるんだよね。単価は高いし、無理な値引きは絶対にしない。B社では無料で提供してたような細かなサービスも値段つけて請求するし。その価格が払えないお客とは取引しない。B社は値引きしてでも受注しろ!お客が困ってたらサービスもしろ!という方針でそれが正しいと教えられてきたんだけど、それだと財務的な体力も削られるし、何より現場が疲弊するんだよね・・・。
A社の価格が払えるお客は経営がいい証拠だし、こちらの追加費用がかかるような提案もいいですねーって感謝してくれるし笑。そりゃ強くなるよな、って気がする。

この短い記事では分かりやすくするために単純化しすぎたきらいもありますが、大筋ではこういうことだと思います。顧客の要求にはもちろん応えるスタンスではいるべきだと思いますが、それが自社が実現したい世界を実現するのにプラスになるのか?と問うてみるのは悪いことではないと思います。実現したい世界があるのなら、主導権は自社に握っておきたいですよね。

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