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レビュー「米津玄師/M八七」




今回は、「M八七」の感想&妄想を書いていこうと思う。

(※このレビューはあくまでも個人の感想(および妄想含む)です。)


ラジオはこちら

ラジオ内容 まとめ
【背景】
・成田亨さんのウルトラマン作品を踏襲した映画
・歌をオマージュし作成する方法もあったが、今回の映画を基軸に作成した。
・ウルトラマンの怪獣が好きだった。←背が高く曲がっている自分のことを不気味だと思っていたからと分析。
・ウルトラマンは”好きだったらしい”。あまりよく覚えていないが、周りの人間から聞いた。
・覚えていなくても、体験として豊かな人間性を育む礎になっている。
・祝福の連鎖=自分は与えられ、また今は(おこがましいが)ウルトラマンのように与える存在になっている。何らかの必然性を感じている。

【歌内容】
・断定口調が多い曲。
・自分の人生を逆算して出てきた強い言葉。それを歌詞に乗せるのは、自分の人生にとっても必要なこと。

【ジャケットの絵】
・成田亨さんの絵を踏襲して描いた。
・成田さんは芸術家という自負があったからこそ、ウルトラマンは美しいと思う。それに敬意を示したい。
・超現実的な何かをもちつつ、凛としているウルトラマン。



ここからは、私の感想など。

シン・ウルトラマンは観ていないのだけれど、初めて聞いたときの第一印象は「強さ」。真っすぐで筋が通っている。ウルトラマンのイメージにピッタリ。

音楽よりも歌い出しの方が早い。
ウルトラマンだから、急を要するのかもしれない…
音楽はメタリックというか、鋼のような金属、重厚感がある。
シンセサイザー?の音は反響していて、異世界感が出ている。
繰り返される音が直線で描かれる図形を想起させる。

遥か 空の星がひどく輝いて見えたから
僕は震えながら その光を 追いかけた
割れた鏡の中 いつかの自分 を見つめていた
強くなりたかった 何もかもに憧れていた

星、輝く、光、鏡、追いかけた、憧れ = 希望
困難と不安の中、希望を頼りに何かに向かってく。

君は風に吹かれて 翻る帽子見上げ
長く短い旅をゆく 遠い日の面影

冒頭の「急」から「緩」に切り替わる。

君が望むなら それは強く応えてくれるのだ
今は全てに恐れるな 痛みを知る ただ一人であれ

孤高のヒーローという感じ。
ラジオでも語っているとおり、「痛みを知るただ一人」…ここは米津さん自身のことでもあるのだろう。
「のだ」「おそれるな」「であれ」…強い口調。
自分に言い聞かせているようにも聞こえる。

いまに枯れる花が 最後に僕へと語りかけた
「姿見えなくとも 遥か先で 見守っている」と
そうだ 君は 打ちひしがれて 削れていく心根
物語の始まりは 微かな寂しさ

仲間なのかわからないが、誰かとの別れの場面。

君の手が触れた それは引き合う孤独の力なら
誰がどうして奪えるものか 求めあえる 命果てるまで

「地球儀」のときもそうだったが、米津さんの歌詞で出てくる「手」というのは現実味と立体感を帯びる。
ウルトラマンという空想上の物語なのに、子供時代に夢を見たあの「ウルトラマンと自分」みたいな感覚になるのではないだろうか。

そういえば、このアルバムジャケットのウルトラマンは左向きの表情、対してこのMVに出てくる冒頭の米津さんは右向きの表情である。
これらを同じ画面に並べた図を想像してみると、ウルトラマンと米津さんが向き合う構図になる。
何だか、これも意味深く感じる。

輝く星は言う 木の葉の向こうから
君はただ見つめる 未来を想いながら
僕らは進む 何も知らずに彼方のほうへ

輝く星はM87だとして、君はウルトラマンだろうか。
「私達」と「輝く星」の間に木の葉を介在させている。木の葉は生命の象徴だと捉えると、ウルトラマンにより地球(人)の生命が守られたということだろうか。

使命を全うした後も、ウルトラマンは常に未来を見続けている。

「彼方のほうへ」の歌い方は、本当に未知の彼方へ向かっていく感じ、開放されてどこまでも際限のない広野に放たれている感じが表現されている。



あとがき

兄がいた影響で、私自身、それなりに戦隊ものやヒーローものの番組には触れてきたと思う。
ウルトラマンに関してもおぼろげながらテーマ曲を覚えているし、カネゴンやバルタン星人なども懐かしい。
がしかし、テレビを見ながら「ウルトラマンの足元の家やビルは踏み潰されてそこにいる人は死んじゃってる?」などと野暮なことを考える捻くれた子供だったので純粋に楽しめなかった感がある。

鬼太郎や妖怪は肌に合っていたのか、とっつきやすかった。
何より幼稚園時代にハマっていたのは「タイムボカンシリーズ」にでてくるドロンボー一味(ドロンジョ様、トンズラー、ボヤッキー)というアナーキーな悪役たちだ。
彼らのすごいところは、毎回こてんぱんにやられて敗北してしまうのに、それでもめげずに新兵器を作り主役たちに挑むこと。
その創作意欲と不屈の精神に幼い私は心を打たれていた。
悪役(脇役)たちの中に美学を感じていたのかもしれない。
その頃から片鱗は見えていたのだろうが、自分が亜種だと自覚するのはもっとずっと後だった。


他のレビューはこちら。


https://note.com/kuno_q/n/n3ff47b9fee59


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