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【#一日一題 木曜更新】 餃子、そばかす、カブトムシ

山陽新聞の「一日一題」が大好きな岡山在住の人間が、勝手に自分の「一日一題」を新聞と同様800字程度で書き、週に1度木曜日に更新します。ほらいつか岡山在住ライターとして一日一題から依頼が来るかもしれないし……し…? 

aikoもジュディマリも通らずにここまで来てしまった。

恋をする女の子がカブトムシになるのはよくわからなかったし、そばかすがある私の恋ってちょっといいでしょかわいいでしょという貪欲さにも感情移入できなかった。

カブトムシ女は、バンドの練習場になっている倉庫でメンバーのためにせっせと食事を作り、ミルコに盛り上がる彼らにあたしは須藤元気くんがいいと口を挟み、カラオケではカブトムシやそばかすを甘ったるい声で歌う。彼女は間奏の合間に、aikoもYUKIちゃんもだいすき。声が高い歌手と合うんだよねあたしと私に向かって楽しそうに囁いた。カラオケのたびに聞かされるその言葉にわたしは鼻白んで、ラブサイケデリコやMISIAを歌った。歌詞の意味なんてどうでもよくて、aikoやジュディマリとは遠いところで楽しんでいる自分を見せつけた。

ある日彼女とメールをしていて餃子の話になった。あー、餃子食べたくなっちゃったよとわたしがメール送信してやりとりは終わった。その数時間後、彼女は餃子作ったから届けるよと屈託なくメールをくれた。

カブトムシ女は、かわいいほうにもサブカルにも転べないわたしにも優しかった。本心かどうかも怪しい「餃子食べたい」に、リアルに手を動かして応えようとしてくれた。カブトムシ女なんて揶揄してごめんと一瞬思ったけど、やっぱりその真っ直ぐさが面倒でこれから出掛けるよと言って餃子の受け取りを拒んだ。

彼女の餃子を受け取れる女の子だったら、カブトムシの切なさや、そばかすの空腹さを味わえたかもしれない。そんなことを思い出したのは、トーク番組のaikoをとてもかわいいと思ったから。

aiko1975年生まれ。同い年にして、この素直さ、このキュートさ。
アーティストと凡人の感受性を比べるなんて。でもaikoがカブトムシを作ったあのとき、間違いなくわたしも20代だった。わたしがカブトムシ女と軽んじたあの子は、一体どんな大人になったんだろう。



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