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魅惑のスパイシーナッツ【レシピあり】

レシピまでの前置きが長めです。レシピは目次から飛んでくださいね。

台所まわりに思う

長いこと留まり過ぎました。

なんて。
そんなしょうもないことをつぶやきたくなるインターネット生活20数年。あれちょっとまって、やだもうインターネットにさわって30年近くなるんですね。そろそろパソコンやスマホにへばりつくのはやめて、植物や組織でも育てた方が残りの人生のためにはよいのではと思っても、初動で指が勝手に「シクラメン 球根 育て方」という文字をぱぱーんとスマホの検索窓に打ち込むのだから、この生活はいかに。

スマホの向こうに毎年毎年面白いことは出てくるし、仕事はパソコンとオンライン環境に頼り切りのところまで来てしまったし、その上こんな嘆きもここnoteに書き込むのだから、どうしたって私はここから離れられないのです。困ったものです。

そうして困ったものですとか言いながら、夕方にのぞくインターネットは仕事後の楽しみのひとつ。長年家族の台所を預かってきた私はよそのお宅の台所事情が大好きで、興味津々でSNSに流れる料理の下ごしらえ風景や食卓を眺めています。

でも、「献立に迷う」なんてかわいらしい時期はとうの昔に通り過ぎてしまった今、私のSNS徘徊はメニューやレシピを探すというよりは、同じ時間にインターネットにいる誰かの台所を少しだけのぞかせてもらいたいだけ。指一本であちこちへ飛びながら、おつかれさまですの意味を込めてぽちぽちとリアクションをしてまわります。

先日、「東京の台所」という本を買いました。台所の本には食事をこしらえる人の「生きる」が詰まっていますね。料理以前以後の話って、どうしてこう興味深いんだろう。小説家は人生や人格が相当にグラグラした人でも作品にファンがつくのに、家庭料理家はそうはいかない。家庭料理家は今も昔も、レシピだけではなく人生やライフスタイルをひっくるめて憧れの的になります。もちろん、生きる上での苦労はあるとは思いますが、不倫、ギャンブル、薬物、いわゆる飲む打つ買うのような乱れ方は表に出ません(出せない…?)。プロモーション的には、シェフや板前とは別のカテゴリーになっていて、それはもしかしたら「食事の支度」イコール「生きる」だからなのかもしれません。ちょっと感慨深くなってしまいます。

あれ、話が逸れました。

私は自分で用意した食事が好きで、おそらく料理は好きなほうです。三食を全て自宅で用意するような連休後は「自分で作ったものなんか食べたくなーい」と癇癪を起こしがちですが、基本的にはさほど苦はなく台所に立っています。最近は、「家で食べたいもの」と「お店で食べたいもの」の境界線がはっきりしてきて、毎日の食事はそう変わったものでなくてもじゅうぶん。作り手のわたしがそんな考えなので、家族もおおよそ満足している……たぶん。

でも、こうやって良い意味で適当に料理をして生きていくのかなと思った矢先、私は知ってしまいました。

基本的に醬油とみりん、酢や塩コショウで生きてきた私ですが、noteで知り合った友人からスパイスカレーを教わり、スパイスがこんなにも手軽に使えるものなのだと知ってしまったのです。

スパイスを知った2022年

スパイスカレーこそ、私にとって「外で食べるもの」でした。平松洋子さんがずいぶん昔の著書の中でターメリック、コリアンダー、あとひとつなんだったか、確かなにやらスパイスが三つあれば基本のカレーはつくれると書いていて、若い私は「へえ」と思ったものの試すには至らず。その頃、私が持っていたスパイスといえば、ブラックペッパー、ホワイトペッパー、ナツメグ、シナモンくらい。あとは乾燥ハーブがいくつかだったため、ターメリックをカレーのために買っても、その後に持て余すのが目に見えていたからです。

数年前、「カレーをスパイスから作るような男とは付き合うな」という揶揄が出回りましたね。大人だし、そして台所をメインで預かっている女として、まあ言わんとしていることはわかります。でも逆だったらどうでしょう。「カレーをスパイスから作るような女とは付き合うな」なんて、うるさいなあのひとことです。スパイシーな女、いいではないですか。そんなことを言ってくる男も女も願い下げてしまいましょう。

わたなべますみさんは、私にスパイスの楽しさを教えてくれたスパイシーな女です。

彼女のスパイスカレー教室のおかげでスパイスがとても身近なものになり、普段の料理にも気軽に使えるようになりました。「スパイスカレー教室」とは言っても、Googlemeetで繋いだ画面の中でよーいドンをして、わいわいと数人で一緒にカレーを作るだけ。事前にますみさんからレシピが紹介され、参加者は当日までに材料を揃えておきます。同時にスパイスを炒め、疑問があれば都度質問。とろみがつかなーい!ちょっとすっぱーい!とSOSを入れると、すかさずますみさんから「○○してみて!」とアドバイスが入ります。

スパイス初心者の私にとって、ますみさんから紹介された中でいちばん強烈だったレシピはバターチキンカレー。スパイスカレーの中ではレトルトにもよくあるポピュラーな類です。ますみさんのスパイス料理の師匠バラッツ氏のレシピでは、なんと使用バター100グラム。1箱の半分!なにそれ!菓子作りをする人ならなじみの量ですが、それをしない私にとっては無塩バター100グラムの重さは、ずっしりと人生よりも重い。
バラッツ氏によると200グラムを使うレシピもあるらしく、日本人向けにアレンジした結果、これ以上バターを減らしてはバターチキンカレーは美味しく作れないという結論の境界線が100グラムとのこと。そしてこれが簡単な上にすごく美味しいのです。バターの脂肪分はしつこさではなくすべて旨味に変わり、ナンやごはんに絡みつきます。昇天。
以来、レシピサイトに山ほど転がっている「コクうま★簡単バターチキンカレー」のようなレシピを見ると、「バター30グラム……? ふ……まだまた昇天を知らないお子さまね…」と無駄に上から目線になってしまいます。バラッツ氏レシピを紹介してくれたますみさんは罪深きスパイシーな女です。

さらにますみさんのスパイスカレー教室にはおまけの楽しみがあり、それはスパイスを使った副菜づくり。レンコンのスパイス炒めや白菜のアチャールなど、いつもの味付けをスパイスに変えて、こんな味になるんだねといつも感激しています。きんぴらや浅漬け、ピクルスなどいつも作っている総菜にも、醤油やみりんを使うようにほんの少しのスパイスをぱらり。とくにコリアンダーやホールクミンは相性の良い素材が多く、普段から揚げ物や炒め物をつくるときに手が伸びるようになりました。私の最近の目標は粉末クローブの消費。クローブはホールだとほんの少しの苦い香りがつくだけですが、乾燥の粉末のにおいは強烈。丁子(チョウジ)のにおいは薬のそれなので、単独づかいは初心者にはちょっと難しそうです。どうしましょうか。と、そんなことを考えるのもこれまでにはない楽しい時間です。

そんな友人とSNSで知り合えたのだから、やはりインターネット生活もそう悪いものではありません。

チャットマサラとの出合い

こうして、ますみさんのおかげでスパイス使いのハードルが下がりました。しかしそのせいで、ある日どうしても自作してみたいものに出合ってしまいます。

食べかけで失礼。美味しくてあっという間に空になりました。

友人から分けてもらった東京のスーパーマーケット信濃屋のオリジナルおつまみです。「ナッツのおつまみ」と言われて受け取ったので、黒胡椒がきいたスナックのような味を想像して口にしたところ、これが…甘くて、スパイシーで、たまにしょっぱくて、初体験の味。

中身はナッツ三種類とレーズン、モルトクラッカー

裏返して原材料名を熟読。ふむふむふむ。む……チャットマサラってなんでしょうか。

このおつまみのスパイスの香りは、どうやらチャットマサラがすべて

チャットマサラ?と、検索の日々。Google様ありがとうです(やはり私はスマホから離れられない)。どうやらそれはブレンドスパイスで、調べた結果配合によって香りも味も違ってくるようです。チャットではなく、チャートマサラとも言うらしく、探し出した古いブログには、業務スーパーやカルディに置いてあるとの情報もありました。

しかし、こんなふうに近所中を探し回っていましたが、なかなか見つからず。でも久々に「作りたい料理」のための探索、とても楽しい時間でした。スパイス様様。どうしても近隣では買えなさそうとわかり、これは自家配合…いやそれは無理、通販するしかないかと思ったところに2022年12月、私にスパイスの楽しさを教えてくれたますみさんにお会いする機会が訪れました。そうしたらなんとなんと!くだんのバラッツ氏による配合のチャットマサラをいただいたのです。

バラッツ氏配合、チャットマサラ

チャットマサラさえ手に入れば、上記のおつまみはナッツの飴がらめにスパイスをまぶすだけです。信濃屋ナッツの原材料にはオリーブオイルの記載がありましたが、おそらくそれはナッツのローストに使われたもの…ではないかと勝手に解釈して、オイル無しで作ってみました。
初回は、とても適当。ナッツと砂糖と塩とスパイス、どうしたって難しい手順ではありません。複雑な味になるわけもなく成功したので、年末の飲み会に持参したところ、好評でした。

オカン発動。おすそわけジップバッグ

そうしたら一緒に飲んでいた友人猫野サラより後日メッセージ。キミ、白ワイン1本空ける勢いでがぶがぶ飲んでだけど、おつまみを覚えていたとは驚きです。そういや「コレおいし~」と手が伸びていたっけ。でも酔っていませんでした、酒豪サラ。

適当過ぎてレシピなぞありませんでしたので、参考になりそうな砂糖がけナッツのレシピを紹介し、「最後にチャットマサラ絡めるの。チャットマサラは自力で探せ!」と雑な対応の私。でも酒の肴のための飽くなき探求心は、いつもは料理をしないという猫野サラを台所に向かわせました。驚き。チャットマサラは通販で購入したとのこと。

ブラボー。作ってくれましたよ猫野サラさん。
自分の作ったものを美味しいと言ってくれて、作ってみたいと言われるのって嬉しいものですね。いつも何でもこんなもんかなと適当に作っていましたが、レシピというものをnoteに残しておいても楽しいかもしれないと、ここで初めて思いました。

で、美味しすぎて手が止まらなくなるため、身の危険(体重増量)を感じ年始に作って以来封印していたスパイシーナッツをもう一度、分量を明確にして調理したのが下記のもの。いやしかし、レシピにするって大変です。今回は料理と言って良いのか迷うくらいのシンプルな材料と調理なので2回の試作で済みましたが、これが食事のメインになるようなものだと、試作の大変さは計り知れません。世の料理研究家さんを尊敬します。そしてますみさん、どうもありがとう。これからもよろしく。

■ スパイシーナッツ レシピ ■


甘みにスパイスがからんで止まらない美味しさです

材料
●素炒りミックスナッツ230g(購入した大袋が230gでした)
●レーズン 軽くひとつかみ(なくてもOK。入れるとアクセントになって楽しい)

●砂糖(お好みのもの) 大さじ4
●水 大さじ2
※メイプルシロップ(分量外)を少し足すと風味が強くなって美味しい

●チャットマサラ 大さじ1(バラッツ氏配合のもの。下記にURLあり)
●岩塩 ひとつまみ

平たいフライパンが便利

①弱火でフライパンでナッツを乾煎り
カシューナッツは焦げやすいので注意
②こうばしい香りが上がったらナッツをよけたフライパンに水と砂糖を入れて煮立てる
③砂糖水が泡状になり、へらからゆるい糸が垂れるくらいになったら、乾煎りしたナッツをフライパンに戻して手早く飴と絡める。
④ナッツ全体に飴が絡んだら飴が乾く前に(乾くとナッツ同士がくっついてしまう)チャットマサラ、岩塩、レーズンを入れて混ぜる。
⑤フライパンから外して皿や紙に広げて冷ます

※②の状態でカラメルにしてからナッツに絡めるとより香ばしくなります。その場合はメイプルシロップ等はなし。
※砂糖衣を薄くしたい場合は、砂糖大さじ2くらいでもOK

冷めるとくっつくので、広げて冷ましましょう

おすすめ本

バラッツ氏のバターチキンカレーレシピとスパイス販売サイト


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