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【忍殺二次創作】ソウカイヤvsザイバツ【第一話】

※※注意※※
これは『ニンジャスレイヤー』の二次創作小説です。
同じnote内に公式様の連載もあるので
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◇1◇



 ……これは、あり得たかもしれない未来。真実とは違う世界の可能性。
 アラクニッドは誕生せず、彼は飛行機事故でモータルのまま死んだ。

 彼の予言により引き起こされるはずであった、マルノウチ・スゴイタカイビルでの凄惨な事件は発生せず。
 ニンジャスレイヤーは生まれなかった。
 フジキド・ケンジは今もネオサイタマでサラリマンとして暮らしている。

「ムフォー……ムフォー……ム……フォー……」
「おお……おお……おいたわしや……ロード……マイロード……」
 ロード・オブ・ザイバツはドラゴン・ニンジャの手がかりを失い、ついにはその肉体にも限界が来ていた───もはや、車椅子での移動すら困難なほどに。

 ロードに代わり、ザイバツグランドマスター・パラゴンは最後の手段に打って出る。
 ネオサイタマに君臨するラオモト・カンを直接打ち滅ぼし、ドラゴン・ドージョーへの足掛かりを作る。
 ドラゴン・ニンジャの遺した遺産を得て、ロードを若返らせる。

 イクサである


◆◆◆


「………壮観なものだな」
 キョートとネオサイタマの中間に位置するセキバハラの荒野。ここに集まりしは数多のニンジャ。その数は、両軍合わせ百はゆうに超えるだろう。

 ザイバツの不穏な動きをキャッチしたラオモト・カンは、カネにものを言わせシンカンセンや空路を完全に停止。一部のカチグミサラリマンが抗議したが、皆セプクさせた。

 移動手段を失ったザイバツは、自らの足にてネオサイタマに侵攻するしかなくなった。となれば、分断して進むのは愚策。一丸となり、ネオサイタマ侵攻を目指す。
 当然、それを指をくわえ見ているソウカイヤではない。ラオモト・カンの護衛ニンジャを残し、ソウカイヤも全力で迎え撃つ。
 イクサである。

 中央、ソウカイヤ側の主力軍を率いるのは、『シックスゲイツの六人』、哲学する巨人、恐るべきビッグカラテとUNIXめいた頭脳の両方を持つ、アースクェイクだ。
「……見たところ、数はこっちの方が少ないか」
 アースクェイクの傍に付き従うのは、彼の最も信頼する腹心にして、主力軍副将を務めるアンダーカード、ヒュージシュリケン。

 ソウカイヤはまだ出来たばかりの新興組織。ネオサイタマの全てを手中にしている訳ではない。
 しかし、対するザイバツは、どういった手段か、キョートで生まれるニンジャのほぼ全てを掌握している。

「数で負けているなら質で……と言いたいところだが、数が多いなら全体の質もあちらの方が高いのが道理」
 アースクェイクは冷静に分析すると、しばし沈黙。彼の頭の中では、幾千もの戦略がシュミレートされ、また消えていく。

「あちらはヤジリの陣か。キョートの田舎ニンジャどもは頭の中まで旧態依然としてると見える」

 シュウシュウ笑いながらそうアースに語りかけたのは……『シックスゲイツの六人』、コッカトリス。
 『正しき歴史』では、マルノウチ抗争にて両腕を失い、大蛇に置換したその両腕は健在であり、カラテを漲らせている。

「フフフ、『シックスゲイツの六人』のうち、4人までが集合とは」

 さらに現れるのはサイバーサングラスに白髪の男……ビホルダー。彼もまた、『正しき歴史』で失った両足は、健在。車椅子に乗ることなく、自らの脚で悠々と歩く。

「ガハハ……ダイダロス=サンは後方支援こそが最大の仕事。つまり、全員がこのイクサに駆り出されてるということだ」

 最後に現れたのは……シックスゲイツ最強と謳われる、タタミ・ケンのタツジン。インターラプターだ。
 彼もまた、『正しき歴史』ではマルノウチ抗争でソウカイヤから逃げ、浮浪者に身をやつしていたが、この歴史ではそんなことはない。十分なカラテトレーニングを積み、全身にカラテを滾らせている。

「それで、指揮官殿はこのイクサ、どう見る。単純な戦力差だけをみれば、我らの負けイクサであろうが」
「………ザイバツのやつらめは、何故かサイバネやテックを使用することを躊躇うものが多い」
 そう言うと、アースは目を細めながら空を仰ぐ。
「そこが、やつらに付け入る最大のチャンスかもしれんな」

 ドドン……ドドン……ドン、ドン……。勇ましきタイコの音がセキバハラに鳴り響くと、ザイバツの軍勢から雄々しく進み出るニンジャあり。
 ザイバツシャドーギルド、グランドマスター。ニーズヘグ。

「ヤァヤァ!遠からんものは音に聞け!近くば寄って目にも見よ!我こそは、罪罰影組合グランドマスター!遍く三千世界に並ぶものなき無双のイクサオニ、ニーズヘグであるぞ!腕に覚えのあるものあれば、見事ワシを打ち滅ぼしてみせよ!……これより、開戦じゃあ!」

 おお……ゴウランガ!なんという見事な名乗り!ニーズヘグの深い教養を思い知らせる、平安時代から伝わる伝統に則った、完璧な口上である!
 その効果によりザイバツ側の士気はウナギ・ノボリ。一方でソウカイヤ側ではそのあまりのアトモスフィアにより失禁するものすら出る始末である。

「「「ウオオオー!」」」

 ニーズヘグの名乗りを受け、ザイバツのニンジャたちは、ソウカイヤの陣へと一気に特攻をかける!
「来るか……鶴翼の陣を形成しろ!」
 アースクェイクが雄叫びを上げると、ソウカイヤ陣も迎撃体勢を取る!

「ウオオオーッ!」「ドーモ」「イヤーッ!」「グワーッ!」「ンアーッ!」「イヤーッ!」「ヤメローッ!ヤメローッ!」「サヨナラ!」「アバーッ!?」

 あちらこちらでアイサツが起き、カラテの火花が散り、ジツがぶつかり合い、爆発四散が起きる!

「その装束。グランドマスター、サラマンダー=サンとお見受けする。ドーモ、『シックスゲイツの六人』が一人、コッカトリスです」
 鶴翼の陣、左翼。その最前線。守護を任されたコッカトリスは、先頭を突っ走ってきたニンジャに、アイサツをする。
「ドーモ、コッカトリス=サン。いかにも、俺はザイバツ・グランドマスター、サラマンダーだ」
 アイサツは大事。古事記にもそう書いてある。

「俺は今日は、以前引き分けたインターラプター=サンとの決着を付けにきた。邪魔はしないでもらおうか」
 サラマンダーは高潔なカラテセンシであり、なによりも体面を重んじる男だ。以前水入りで引き分けとなったインターラプターとの一騎打ちを望んでいる。だが、ここはイクサ場である。

「それはできぬ相談だな。俺は以前より常々、インターラプター=サンこそシックスゲイツ最強と呼ばれることを苦々しく思っていたのだ。俺こそが真の最強。お前を殺して、それを証明しよう」
 そう言うと、コッカトリスはコブラ・カラテの構えを取る。空気がゆがむほどの禍々しきアトモスフィアが満ちる。
「ぬかせ、精々、俺のカラテの礎となれ」
 対するサラマンダーは、ジュー・ジツの構え。
 ……こうして、まず、左翼では「毒蛇」と「火竜」の激突が始まった……!

◆◆◆

「ワッハハハハ!ワッハハハハ!」
「グワーッ!グワーッ!サヨナラ!」

 刃とモノフィラメントワイヤ束を繋ぎ合わせた奇妙な武器、ヘビ・ケンの前に、アンブッシュを行ったアルバトロスは無惨にも爆発四散!
「む、無理だ……この二人、強い!」
「当たり前よ!」「アバーッ?!」
 傍に立つニンジャが、奇妙に歪曲したニンジャソード、フランベルジュを振るうと、コーシャスは爆発四散!

 そう、彼らこそ、イクサ場において無敵と謳われる『フタツアタマヘビ』、ニーズヘグとバジリスクである!
 彼ら二人は、もっとも危険な戦場の最前線を堂々と進む。

「そこまでにしてもらおうか。このままでは真ん中から総崩れになってしまう」

 イクサオニの前進を阻むべく、その前に立つのは……アースクェイク。その傍には、無論ヒュージシュリケンが油断なくダイシュリケンを構える。
 指揮官自らイクサ場に出ざるを得ない。この相手は、それほどの脅威だということなのだ。

「おうおう、ようやく骨のありそうな奴が出てきたのう。楽しみじゃわい。ドーモ、ニーズヘグです」
 ニーズヘグは目を細め、呵呵大笑する。
「ドーモ、ニーズヘグ=サン。アースクェイクです。先ほど見事な口上をしたかと思えば、今度は狂人かと思うような暴れぶり、読めない男だ」

「二対二とは、ちょうどいい。まぁ俺は二対一でも一向に構わんがな……ハッハハハ!ドーモ、バジリスクです」
 ニーズヘグの傍らでフランベルジュを構えるこの男も、戦闘狂のたぐいだろう。しかし、恐るべき使い手だ。厄介極まりない。

「ドーモ、バジリスク=サン。ヒュージシュリケンです。……アースよ、IRCで指揮をしながらこいつらと戦闘をするのはかなり難しそうだ」
 ヒュージシュリケンが警告する。その通りだ。事前に下知はしてあるとはいえ、この先のイクサ場はしばらく混沌を極めることになるだろう。


◆◆◆


 他のニンジャを伴ってサイバー馬を駆り、ソウカイヤの右翼陣地に突撃するのは、古式ゆかしい甲冑に身を包み、肩にバイオイーグルを止まらせる男。
 マスター階位最強とも噂される、デスナイトである!
「アヤミ……この戦場こそ私の死場所なのかもしれない……共に行こう」

 しかし、デスナイトの駆るサイバー馬にスリケンが突き刺さる!「ヒヒーン!」サイバー馬無惨!
 デスナイトは崩れ落ちるサイバー馬から素早く跳躍すると、回転着地!
「……何奴」

「ドーモ、ビホルダーです。こちらの指揮官は貴方ですか。私の相手はグランドマスターですらない。少々残念ですねぇ」
 サイバーサングラスのニンジャは、慇懃無礼な口調でアイサツをした。
「フン……田舎ヤクザめが……ドーモ、ビホルダー=サン。デスナイトです」
 デスナイトが構えると、肩に止まっていたバイオイーグルが飛び立ち、彼を守るように旋回しはじめる。

「イヤーッ!」「イヤーッ!」
 アイサツを終えたビホルダーに、三日月斧によるアンブッシュ!ビホルダーはそれをブリッジ回避!
「貴様程度にグランドマスターの面倒は無用、ここで問答無用。我らで絶対に断罪。ドーモ、ビホルダー=サン。ナイトメアです」
 なんたる韻を踏んだポエトリーなアイサツ!馬上で三日月斧を携える、同じく全身甲冑のニンジャ……マスター階位、ナイトメア!

「ドーモ、グラディエイターです」「ドーモ、ビーフイーターです」
 次々と馬上のニンジャがアイサツをする。
「……見たところ、貴様も相当なワザマエのようだが……多勢に無勢。ビホルダー=サン、ここが貴様のハカバと知るがいい!」


◆◆◆


 ザイバツ陣の後方、総司令部。そこには、赤橙色のニンジャ装束、白銀の瞳を持つニンジャ、ザイバツ軍の総司令官を務める男、グランドマスター、イグゾーション。
「前線では戦闘が始まったようだね」
 その傍らに座すのは、同じくグランドマスター、ザイバツ貴族派閥の一人、スローハンド。
「パラゴン───あの毒蛙めに宰相のような振る舞いをされることは虫唾が走る。なぜネオサイタマのニンジャを排することでロードの御体調を回復させる手段になるのかも秘密にしておるし……ええい忌々しい」

 ちょうどスローハンドの対面。同じく座し、菓子を頬張るのは、グランドマスター、パーガトリー。
「然り、然り。ロードの寵愛を受けていたからといって、調子に乗りおって。そのような理由で命をかけることなど出来るものか」
 パーガトリーは優雅に扇子で自らを扇ぎながら言う。

「前線でイクサ好きどもがあちらの戦力を十分に減らした頃、君たちに後詰で出てもらう予定だよ。我ら高貴な血を持つニンジャがいたずらに危険を冒すことは無い」
 スローハンドの言うことは最もだ。しかし、これは他ならぬロード・オブ・ザイバツの最後の命令。何としてでも成功させねばならない。

「ニューワールド・オダー」

つづく

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