【忍殺二次創作】ソウカイヤvsザイバツ【第十五話】
※※注意※※
これは『ニンジャスレイヤー』の二次創作小説です。
同じnote内に公式様の連載もあるので
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◇15◇
キョート。アッパーガイオン。
煌びやかな建物が立ち並び、雅な音楽が奏でられる観光都市。
しかし、そんなところにも吹き溜まりはある。
「オイオイオイ」
身長二メートルを超える偉丈夫。白髪にインディアンめいた彫りの深い顔立ち。
私立探偵、タカギ・ガンドーだ。
「まったく……今日の依頼も外れだったな……お陰でスッカラカンだ」
誰に話しかけるでもなく、そう独り言をガンドーはつぶやく……いや、独り言ではあるが、話しかける先はある。
ガンドーは、額の傷に触れながら、また話を続ける。
「シキベ=サン……いつかきっと、真犯人を見つけて真相を解き明かしてやるからよ……」
私立探偵は、そう誓いを新たにし、また路地裏の闇に消えていった。
キョートの闇を少しでも照らす、灯になればいいと願いながら。
◆◆◆
「……ドーモ、ラオモト=サン、イグゾーション……です!」
全身を黄金に輝かせ、目や口や耳から光を漏らしつつ、イグゾーションは改めてアイサツする。
「ムッハハハハ……ドーモ、イグゾーション=サン。ラオモト・カンです」
対するラオモトも、全身にカラテを滾らせていく。
セキバハラで起こった東西のニンジャ大組織同士の戦争は、ついに最終局面を迎えていた。
「「ィィィ……ヤァアアアーーー!!」」
両者は、同時に跳ぶ!
ラオモトはナンバンを袈裟に斬り上げ、間髪入れずカロウシを横一閃!光が走ったとしか思えないほどの剣速!
だがしかし、極限まで自らの身体を活性化させたイグゾーションが、それよりも更にハヤイ!
「?!」
ラオモトの目が驚愕に見開かれる!
ナンバンの一撃を身体をひねり紙一重で躱すと、カロウシの追撃をブレーサーで受け止める!
受け流すのではなく、正面から受け止めたのである!
ラオモトの身体は、その間に宿すビッグニンジャ・クランのソウルにてとてつもない筋力を得ている。それと拮抗するどころか、上回るとは!
「イヤーッ!」
イグゾーションのヤリめいたケリ・キック!
「グワーッ!」
たたらを踏むラオモトに、イグゾーションが追撃をかけんと接近!
「ムゥン!」
ラオモトの目が青白いヒトダマをたたえる!カナシバリ・ジツ!
だがイグゾーションは止まらない!
バリキ・ミサイルにされたものを自在に支配することを見ても、イグゾーションもその手の肉体支配に長けているのは明白!
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
「グワーッ!グワーッ!グワーッ!」
イグゾーションは右足で中段蹴り!踏み込んだ勢いのまま回転し左足でハイキック!さらにそのままさらに回転しジャンピングソバット!
ラオモトはその連撃をまともに受ける!
成す術がないのか?!……否!ラオモトは両腕を高く上げる奇妙な構え!
その身に宿す、七つのニンジャソウルがひとつ、イタミ・ニンジャクランの打撃吸収の構え!
バリキ・ミサイルによる爆発やアンタイ・ウェポン相手には出番がなかったが、実際強力なジツ!
ビッグニンジャ耐久力と合わせれば、ラオモトはワン・インチでは実際無敵と言っていい組み合わせだ!
だが……おお、見るがいい!
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
「グワーッ!グワーッ!グワーッ!」
イグゾーションは傷が治るよりもさらに早く殴る!殴る!殴る!
なんという速度!なんというカラテか!
「イヤーッ!」
ラオモトはナンバンとカロウシを苦し紛れに投擲!
しかし、イグゾーションは当然、それを難なく躱す!
「イヤーッ!」
だが、それで終わりではない!ラオモトは念力にて二本の名刀を空中で操作!イグゾーションの死角から飛来させる!
「イヤーッ!」
さらに左右のフックからサソリ・キックの連撃!合計五回の連続攻撃!
「イヤーッ!」
イグゾーションはラオモトのカラテを首の動きだけで躱し、サソリ・キックもバックステップ回避!
飛来したナンバンとカロウシを……正面からの拳で打ち砕く!
「バカナーッ!?」
「イィィィ……ヤァアアアーーーッ!!」
イグゾーションは、指先からもバリキの光を迸らせる!チョップの軌道が光の道として尾を引く!
右手でチョップ!「グワーッ!」
左手でチョップ!「グワーッ!」
指先の光が残す尾が消えぬうちにまた次のチョップ!
「ムッ!?」
ラオモトはイグゾーションのチョップを首で挟み、受け止める!
「イヤーッ!」
動きが一瞬止まったところへボディブロー、そのまま踏み込みながらのケリ・キック!
「グワーッ!」イグゾーションは腹を抑え後退!
「イヤーッ!」
ラオモトのハイキック!それをイグゾーションはブレーサーで受ける!
「イヤッ!イヤッ!イヤーッ!」
だが、ガードされてもその上から構わず連打!
「グワーッ!」たまらずイグゾーションはブリッジ回避!
「イヤーッ!」
ラオモトの蹴りが途中で軌道変化!カカト落としとなり、イグゾーションに迫る!
「イヤーッ!」
イグゾーションは腕をクロスして受け、そのままマカーコにて距離を離す!
「ムッハハハハ……そのジツ、自らにかけるのはそう何度も多用出来るものでもあるまい?ビホルダー=サンとのイクサと俺様のカラテ、実際限界のはず」
そう言いながらカラテを構えるラオモトも、イグゾーションの恐るべきカラテにより傷は浅くない。
「どうだ、ここはテウチにして俺様の部下にならんか?ケジメもなしで最高の待遇で迎え入れるぞ」
普通なら命乞いともとられる唐突な交渉……だが、ラオモトは本気なのだ。彼はそういう男だ。
「……我々は……」イグゾーションは瞳孔の開いた目でラオモトを見据える。
「む?」ラオモトは片眉を吊り上げる。
「我々はッ!我々はッ!……支配しなければならないッ!」
「貴様のような作法も伝統も知らぬ蛮人が、ニンジャソウルをいくつ備えたところでッ!高貴なる存在になるはずもなしッ!貴様のような下劣な蛮人ではなく、ショーグン・オーヴァーロードの血筋たるロード・オブ・ザイバツの築く千年王国!ニューワールド・オダー!」
セルフ・バリキの副作用か、普段のイグゾーションとは考えられないほど高揚し、叫ぶ。
「そのためにも私はッ!勝たねばならない!!」
「………伝統、作法、血筋」
ラオモトの目がスーッと細くなる。
「ムッハハハハ!くだらん!くだらん!いずれ俺様がこの世界の全てを取る!血筋など関係なくな!!」
「スゥーッ……ハァーッ!スゥーッ……ハァーッ!」
ラオモトは、まるでチャドーに近い呼吸を繰り返す。全身にカラテが滾り、傷がみるみるうちに塞がっていく!
「ムゥゥゥゥゥン!!」
ラオモトは七つのニンジャソウル、その全てを一度に解放する!
これは奥の手であり、解放し切ったあとはソウルが休眠状態となってしまう、諸刃の剣!
いわばラオモトのヒサツ・ワザ!!
タタミ四枚ほどの距離で相対する二人の間に、空気が歪むほどの極限のアトモスフィアが満ちる!
「イィィィ……ヤァアアアーーー!!」
ラオモトが跳ぶ!トビゲリにも似た、モズ・ダイブキック!
「イヤーッ!」
それをイグゾーションはブレーサーで受ける!
「イヤーッ!」
しかしラオモトは、そのまま空中で何度も蹴りを放つ!まるで空中に浮遊しているかの如きエリアル・カラテだ!
「イヤーッ!」
イグゾーションは何度も胸を蹴られるが、お構いなしに足を掴む!
「イヤーッ!」
ラオモトは空中で猫めいて体をひねると回転!これは、変則のサマーソルトキック!ワザマエ!
「グワーッ!」
顎にクリーンヒット!イグゾーションはふらつきながら後退!
「オノレーッ!イヤーッ!」
イグゾーションは右腕を大きく振りかぶり、反撃!
「ムッハハハハ!」
ラオモトはタナカニンジャクランの念動力を全開で解放!
付近にあった巨岩はバラバラに砕け、礫となりイグゾーションへ降り注ぐ!
「イヤーッ!」
それを全てキックにて撃ち落とすイグゾーション!
「イヤーッ!」
イグゾーションはローキックから連撃の構え!
「イヤーッ!」
だが、ラオモトはそれを読んでいた!ローキックを足の裏で受けると押し返し、そのまま脚を頭の上まで持ち上げ、サソリ・キック!
「イヤーッ!」
イグゾーションはそれをステップ回避!そう何度も同じカラテは通じず!
「イヤーッ!」ラオモトは左右のフック!
それをイグゾーションはブレーサーで受ける!
「イヤーッ!」そこへラオモトは頭突きじみたビッグカラテ突進!オスモウ!
「グワーッ!」
受け流すイグゾーションだか、ラオモトのパワーを処理しきれずその場で回転!吹き飛ばされる!
「スゥーッ……ハァーッ!スゥーッ……ハァーッ!」
ラオモトはチャドーに似た呼吸を繰り返す!
イタミ・ニンジャクランの打撃吸収と、コブラ・ニンジャクランのカナシバリはこの相手には無駄。
これが、最後のソウル、最後のジツ。
ラオモトが宿す七つのニンジャソウルのうち、唯一のアーチ級、ブケ・ニンジャソウルの、極大のカラテミサイル群!
「イヤーッ!」
それを見たイグゾーションは、上空へ跳躍!
死肉を啄もうと集まってきていたバイオイーグルやバイオハゲタカの群れを目指す!
「オオオォォォ!」
もはやイグゾーションは限界!身体のあちこちは裂けそこから黄金の光が漏れ、髪は完全に白髪となっている!
だがイグゾーションは止まらない!限界を超えて、空を飛ぶすべてのバイオハゲタカたちにバリキ・ジツをチャージしていく!
「「イイイイイイィィィヤアアアァァァァァァーーーーーー!!!」」
ZAP!ZAP!ZAP!ZAP!ZAP!
KABOOOOOOOOM!KABOOOOOOOOM!KABOOOOOOOOM!KABOOOOOOOOOOOOOM!!!
カラテミサイルとバリキ・ミサイルが相打つ!爆発!爆発!爆発!!
………どれほどの時間がたっただろう。数時間か、数分か。周囲に立ちこめていた爆炎と土埃はようやく収まり、爆心地は巨大なクレーターとなっていた。
そこに、半ば埋まりながら倒れ伏すのは、イグゾーションとラオモト・カン。
「ウググ……」「グ……オォ……」
ラオモトはソウル休眠状態で、モータル以下の身体能力となり、立ち上がることも難しい。
イグゾーションは、セルフ・バリキの副作用で、全身の筋肉が破損。ニューロンにも大ダメージを受けている。
勝負としては、ほとんど引き分けといってよい状態。
そこにエントリーするのは……ダークニンジャ。
「………ハイクを詠むがいい、イグゾーション=サン」
「フ、フフフ……君の足止めに向かっていた、バンシー=サンとミラーシェード=サンは、負けたのか」
イグゾーションは、倒れ指先一つ動かせない状態のまま、笑う。
「……殺した」
対するダークニンジャも、満身創痍。爆発四散寸前だ。
「そうか……我々の……負けか」
「いや……」ダークニンジャにとっては珍しく、言葉に感情がにじみ出る。
「痛み分けだ」
ダークニンジャは、カイシャクの一刀を振り下ろす。
「ロード……マイロード……ニューワールド・オダー……サヨナラ!!」
イグゾーションは爆発四散した。
◆◆◆
それから。
総司令官を失ったザイバツは総崩れとなり、撤退。
首魁たるラオモトが重傷のソウカイヤも追撃することなくネオサイタマへ引き返した。
痛み分け。東西を分ける二大ニンジャ組織のイクサは、そう決着がついた。
キョート城、フジサン頂上にかかる黄金の雲と飛翔するフェニックスの白銀茶室。
「ムフォー……ムフォー……」
ロード・オブ・ザイバツはフートンから、出ることすらままならない。
「オオ……ロード……おいたわしや……マイロード……」
身体が衰え切ったロード・オブ・ザイバツのため、パラゴンは何度でもネオサイタマ侵攻の計画を立てるだろう。
だが、ほとんどの主力を失い、それが成功したかは……奥ゆかしく語られるべきではないだろう。
同じくキョート城、電算室。
「………室長、なんとか防ぎきりましたね」
ストーカーは目や鼻から出血しながらも、生体LAN端子を抜く。
「途中からダイダロスに動きがなくなりましたが……なにかトラブルでしょうか」
ヴィジランスは、疲弊した身体を推してまだキョート市場の操作に余念なく取り組んでいる。
「さぁな……分からん」
ヴィジランスは、IRCに報告される『イグゾーション、ダークドメイン、両名爆発四散』の文字を無感動に見つめていた。
◆◆◆
「どけっ、俺様一人で立てるわ!」
日は沈み、もうネオサイタマは月が出ている。
ラオモト・カンはリー先生のラボへ治療に向かうため、ヤクザリムジンから降り立った。
ラオモトの苛立ちは頂点に達していた。自ら出向いたというのに、キョートまで進攻するどころか撤退に追い込まれた。
その間に、どれほどのビジネスができただろう。なんと忌々しいことか。
「ラオモト・カンだな?」
おお、見るがいい。そんなラオモトの背後に立つ影あり!
「アバーッ!?」
ラオモトは背後から心臓を一突きにされ、噴水のように出血!
「ラ、ラオモト=サン!?」「クセモノダー!」「そんな、ラオモト=サン!」
「キ、キサマ……!何者だ……!」
ラオモトは口からも出血しながら、この刺客の名を尋ねる。
「ドーモ、ラオモト=サン。スパルタカスです。アンタとはお互い万全の状態でカラテしてみたかったが……まぁあれだけの大金を積まれちゃあ仕方ないよなぁ」
ゴウランガ!いくら満身創痍とはいえ、ラオモトへ……ネオサイタマの帝王へ一撃で致命傷を与えるのは、恐るべき古代ローマカラテのマスタリー、スパルタカスである!
「まぁ、死ねよ」
スパルタカスはチョップ突きを勢いよく抜き放つ!
「アバーッ!?サヨ!ナラ!!」
七つのニンジャソウルによる、猛烈な爆発四散!
一方、トコロザワ・ピラー。電算室。
「ああ、こちらはラオモト・チバは確保した」
そこで携帯端末で連絡を取るのは、白いスーツに身を包んだ、褐色の肌の眉目秀麗な男。
アガメムノンである。
「そうか、ラオモト・カンは死んだか」
アガメムノンの足元には、黒く焼け焦げたダイダロスの死体が転がっている。
直結にて意識をコトダマ空間に向けていたため、反撃すらままならぬ内に、不意打ちを受けやられたのだ。
「もうすぐ、鷲の翼が開く。これからは我々も行動を開始する」
◆◆◆
「おーい、トチノキ。危ないぞ」
ネオサイタマ。ここは、ネオ・カブキチョに程近いメインストリート。
そこに、スーツ姿のサラリマンと、彼の妻だろう中年の女性が連れ立って歩いている。
(トチノキもずいぶん大きくなった)
彼らの前を歩くのは、息子だろうか。年のころは十五、十六といったところの少年だ。
「このまま、家族に何も無いまま過ごせればいいのだが……」
「イヤだわ、あなた。まるで不吉なことが起こるような言い方」
サラリマンの言葉に、妻は不安そうに眉根を寄せる。
「いや、ハッハッハ。なぜか急に不安になってね。大丈夫さ、何かがあっても私が二人を守るよ」
サラリマンの男性は、そう言って女性の肩を叩いた。
「カイったら、早く早く!」
その横を駆けて来るのは、トチノキと同じぐらいの年齢だろうか。日焼けした少女と、後をついてくる少年。
「………」「………」
一瞬、その少年と目が合ったような気がした。
「あなた?」「カイ?」
だが、お互いにすぐに目を逸らし、通り過ぎる。
「いや……なんでもない」
少年は歩きながら、オリガミを手の中で弄り回している。
「変なカイ!ほら、早く行こう!」
サラリマンの男性も、その少年も、お互いに何かを感じたが、その正体は分からないままだった。
「………これは、明日は大雨だな」
サラリマン……フジキド・ケンジは、曇った空を見てそうつぶやいた。
【おわり】
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