2023年の映画ベスト10
映画は劇場に行かずとも、気ままな格好でのおうち時間や移動の合間にでも観られる娯楽となりました。新作でさえ配信のみという場合もあります。
住んでいる長崎という土地柄、劇場公開が短期間だったり上映のない作品も多くありました。今回は当方が劇場で鑑賞した26作品の中で振り返ります。なにより順位をつけるという苦手な分野に取り組みました。悩んだなりのベスト10です。
① TAR
圧倒的なケイト・ブランシェットに魅せられました。女性性を排除したキリッとしたルックと君臨していた場所から堕ちていく様がなんともね、胃がきりきりする感じで好きでした。マゾかもしれません。自分の目指す道を邁進するあまり、周囲が目に入らず誰の話も耳に残らず、孤立の一途。才能って周りが認めてやっと意味を持つのでしょうね。
② after sun
若い父親と11歳の娘。ひと夏のバカンスから見えてくる心象風景の描かれ方に心を揺さぶられる作品。親の年齢になると過去の出来事が見えてくる時があります。果たして、それすら真実かはわかりません。でも脳裏に焼きついて離れない一瞬を引きずりながら生きていくのでしょう、私たちは。
③ 窓ぎわのトットちゃん
黒柳徹子さんの自叙伝的ベストセラーの映画化。期待せずに観たのもありますが、アニメーションの雰囲気から見て取れる可愛さを一気に超えてくる内容でした。今年、一番泣いた作品です。自分の思いやりと想像力のなさを知っているので、誰かを傷つけないことに注力しがちだけれど、いま見ている世界を好きな人に知ってほしいと行動するトットちゃんにハッとしました。希望や力はそこから生まれてくるのかもしれません。明治生まれの祖父は、国を信じ馬鹿を見たから一切信用していないんだよと聞いた昔話を思い出す「戦時国債」の看板や、戦時中へと突入していくシーンは必見です。
④ AIR
大好きなんです、お仕事もの。世界的有名企業や人物、商品の成り立ちはどこを切り取るかで全く異なるドラマとなります。クセのある主人公と起死回生を目指す仲間たち。やるかやらないか。Just Do It. 音楽もセリフもいい。笑えるところもたくさんあって元気になれます!
⑤ 怪物
脚本も監督も言わずもがなでありますが、役者陣もすごいのひとこと。正義や愛という名のもとに怪物はひっそりと紛れ込んでいたり、気付かぬうちに正当化し肥大していく恐怖。抱えているどうにもならない根っこの部分と生きづらさ。もう一度見るかと訊かれたら、2年後くらいでいいかなと少し距離を置いて考えたい作品です。
6位から10位はほぼ同位と言えるのですが、無理やり順位をつけてみました。しのばれる苦労をどうか加味しながら読んでやってください。
⑥ コンパートメントNO.6
「若い時に見たかった」そんな作品でした。
もちろんいま見ても十分に素敵なストーリーなのだけど、何事も巡り合わせはあると信じている人間にとっては、20代で見るのと50代で見るのとでは意味合いが違うのです。胸の中心がきゅっと懐かしくなる感情や、うんと年の離れた人との触れ合いに救われる場面。素直になれず自分を持て余す時間のなんと切なく甘美なことか!しみじみと好きです。
⑦ Barbie
タイムラインで見た感想は、概ね絶賛されていました。しかしその良さが私には今ひとつ理解できず、しばらく考えた作品です。舞台当時のジェンダー論や切り口としての斬新さ、見事なまでの映像と話題性抜群でした。自分が社会に出てみて、女として見られる(意識される)気持ち悪さはありましたから、結界は常に張っていたように思います。仕事や出世への道、そもそも土俵に上がれない差別も感じました。それよりも女性同士の妬みや諍いのほうがきつかったのは自分が未熟だったから。入り込めなかった原因はそこからきているのかもしれません。またいつか見たいと思っています。
1/7 追記 : ヲノサトルさんのバービー評。素敵でした。
⑧ 君たちはどう生きるか
宮﨑駿という人物が好きです。引退を撤回し何を考えて作ったのか観られるだけで嬉しいのです。人物が好きなのと作品が好きなのはイコールではありませんが結果的にこの作品は好きで2回観ました。待たせた挙句のパンフレットには参りましたね。宣伝なしで好きに作るというのはこういうことなのでしょう。あれから他の映画のパンフレットを買うたびに素晴らしいと思えるくらいには打たれ強い私です。NHKプロフェッショナル仕事の流儀で見せた宮﨑さんもほんの一部分であって、しれっとまた驚かせてくれるものを作っていると信じています。とにかく生きて作っていてほしい人。
⑨ イニシェリン島の精霊
衝撃。なにこれ?の連続で見終わったあとぼーっとしたのを覚えています。狭い島のなかでずっと仲良くしていた相手に絶交を告げる映画ってある?オンラインの映画部でもかなり盛り上がりました。くだらないと思いつつも付き合ってきたけど残りの人生は有意義に過ごしたいと本音を告げるけど、くだらない相手にはなんのことかさっぱり理解できない。これっていろんなことに置き換えられるんですよね。長い付き合いで相手のことを熟知しているからこそ、許せたり、許せなかったりするし。白黒つけない間柄や距離感を楽しめるのも、名前のある関係性に安心を求める時代も、これからはどんどん変わるのかもしれません。
⑩ フェイブルマンズ
個人的にパーフェクトな作品でした。すごいなスピルバーグ監督。なるべくして映画監督になった人。家族の秘密については墓場まで持っていくのが筋なのだけど、葛藤しますよね。私も映画のワンシーンのような忘れられない場面がいくつかあります。ひとつは母で、ひとつは前の夫。そのうち忘れてしまえばいいのにと思ったりしています。
⑩ スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース
すみません。どうしても外せないのです。ライフワークみたいにスパイダーマンだけは見続けているのです。すげぇすげぇと情報量の多さに混乱もしましたけど必ず新しいものを見せてくれるシリーズ。次も期待しています!
ざっとこのような結果となりました。
ランクインはしませんでしたが、好きだった作品を紹介します。
・エンパイア・オブ・ライト
・パリ・タクシー
・ミステリと言う勿れ
・シーナ&ロケッツ 鮎川誠 ロックと家族の絆
・PERFECT DAYS
上記にランクインした映画の感想noteもあります。
お時間ありましたらぜひ。
今年も思いつくまま気楽な映画感想noteを書くつもりです。みなさんの好きだった作品、おすすめ映画、今年楽しみにしている映画など気軽にコメントくださるとうれしいです。今年もどうぞよろしくお願いいたします!
読んでくださりありがとうございます。