Barbie(映画感想文)
映画Barbieを観ました。パンフレット、批評、記事を読まずに感じたそのままを書き残します。ネタバレを含みますのでご注意ください。
最初に簡単な自己紹介をしておくと、50代、性自認は女性、現時点では異性愛者、既婚、たまに事務仕事をする主婦です。映画は好きだけれどマニアでもなんでもありません。地味カラーからピンクを着るようになり林家パー子さんが気になるこの頃です。
まず、人形としてのBarbieにこれといった思い入れはなく、幼少時はリカちゃん人形とともに過ごしました。Barbieは、ボディラインや顔立ちも大人っぽく(リカちゃんと比較しているからかも)ファッショナブルで、小物もティーンエイジャーから大人が好むようなポップなアイテムが数多くあります。
要するにそれくらいの知識で、映画を観に行きました。とはいえSNSで目にした感想や評判はさまざまで、なんとなくのストーリーは頭に入ってる状態です。実はそんなにハマらないかもと少しばかり憂鬱でした。要因は絶賛されると冷めるという身勝手な現象がおきてしまったからで、まったく困ったものです。
絶賛とまではいかないけれど、終盤の展開は開放(解放)される気持ちよさがありました。ここからは内容にも触れますのでひとつご容赦を。
Barbieランドで自由を謳歌しているバービーと仲間たち。見た目の異なるバービーたち誰もがバービーです。互いに「Hi Barbie!」と呼び合います。彼女たちはアクティブでキュートですこぶるお洒落。憂いのない笑顔でハッピー。それに比べ、ケンをはじめとする彼らは笑顔ではあるものの主体性がなく、バービーたちより目立たないand friends な存在。といった感じで始まります。
人形(ドール)なので、具体的な生活の細かい描写は排除され、パステルカラーのキラキラしたBarbieランドの様子をオーバーアクションで魅せてくれます。マーゴット・ロビー演じる完璧なバービーは「典型」です。この「典型」という単語は劇中に繰り返し出てきます。ちなみに吹替で鑑賞しました。
ポジティブで否定的な言葉を使わず、ちょっとお茶目で楽しく、気まずさは皆無といったBarbieランド。実際にはあり得ないけどここはドールの世界。プリンセス、ファンタジー方面への苦手意識が発動しのめり込めずにいたところ、突然バービーの足に変化が起こります。こちらの表現も秀逸でした。その後ふと漏らしたひと言に、他のバービーたちは驚くのです。バービー自身も理解できないまま、なんとかその場を取り繕います。違和感を抱え、壊れたバービーだけがいるへんてこハウスを訪れ、ヒントをもらい人間界にその理由を探しに出発するのです。ここでやっとネガティブが可視化されます。
バービーとケンは、Barbieランドと正反対の人間の世界へ飛び込みます。
ドールから人間界に移り変わる場面や、お金を持っていない2人の巻き起こすあれこれ。知らないとそうなりますよねの世界。この辺りの匙加減は好きでした。バービーは自分の異変の原因となった親子にたどり着きます。子どもは知らない親の悩み。大人だってもっと愚痴りたい。ただただ聞いてほしい時がある。そうだそうだ!!!
他者との違いや負の感情を知っていく過程は、子どもの成長と似ているし、”知る”経験で自分ごとと捉える領域も広がっていく2人。ケンはムキムキマッチョとステレオタイプの男らしさに惹かれ解放されていき、バービーは性的対象として見られる気持ち悪さ、弱い立場の閉塞感、ランドとは違う人間の奥行きと面白さも同時に感じていくのです。
他者の気持ちと背景を想像する力は、同じ経験や痛みを持ってしても完全一致とはいきません。諦めるのは簡単ですが、知ることは可能であり、ここで気をつけたいのは自他境界線だと考えます。自分に引き寄せすぎて、相手に対して良かれとおもい失礼なことをした私は、いくつもの関係性を壊してきました。それも暴力のひとつかなと今では反省しきりです。
ジェンダーによる暴力性や支配。その恐怖にうんざりしながらも耐えて生きる人たち。立ち向かうにはいくつもの壁を壊す必要があり、傷を負いながら人に理解してもらえず、倒れ込んでしまうこともあります。ひとりでは到底難しい。しかし同様の苦しみを抱えた者同士の結びつきは固く、声をあげ、遠くのひとへ届き、やっと小さな動きへとつながり始めるのです。
互いの了解のもと男女の”らしさ”も共有できているなら、他人がとやかく言わなくても良い世界なのも本当で。でも尊重するあまり、おかしいことに何も言えないのはまた別問題で。そのあたりの加減は相当に難しいです。どんな関係性もアップデートをしながら、新しい均衡を探っていくのかもしれません。
いやいや、こんな重苦しいストーリーじゃないんですよ。だけど、終盤はグッとくるセリフの連続です。バービーの生みの親である女性の言葉には、だよねーと笑いました!この作品はケンの物語であることも付け加えておきます。男性だって弱音はもっと吐いていいし、ヘルプサインを出していい。だって同じ人間だもの。女性代表としての意見というより、それって人間としてどうなの?はこれからも自分自身に問いかけるでしょう。相変わらずうまくまとめることもなく終わる感想文ですが、急に浮かんだことがあるので残しておきます。
私は好きな車に乗る
お気に入りの音楽を鳴らす
行きたい場所へと向かう
それを手に入れるために力を注ぐ
あなたの車、素敵ね
その音楽知らないけどかっこいい!
じゃあ気をつけて
いろいろあるけどお互い楽しもう
自分は自分でいいよねと讃えあいたい
上映の始まる直前に、制服姿の女子高生3人がドリンクとポップコーンを抱え慌てて着席していたのが印象に残りました。彼女たちはどう感じたかしら。明るい未来を想像したかしら。
ラスト、とても好きでした。
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