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90秒の物語。

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90秒で読んで、一日浸れる物語書いてます。 ただし『やさしい復讐』は超長編。 note創作大賞2022の中間審査に通りました。 https://note.com/kun1ak… もっと読む
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#物語の発想法を学ぶ

小説 | スマホをなくした

スマホがない! あれ、昨日ヒロキとご飯を食べて、、それからどうしたっけ? 記憶が曖昧だ。飲みすぎたかな。 ただまあ今日は休みだ、仕事もない。早起きなんてしなくてもいい。 二度寝だ二度寝♫ あとでスマホについてはヒロキに聞いてみよう。 夢を見た。 ヒロキと一緒に白い家に住んでる。カーテンは青だ。大きい犬もいる。 ヒロキと私にちょっとずつ似ている子供が庭を駆け回っている。 幸せな夢だ。 起きたら少し頬が濡れていた。 結婚したい、やっぱり私はそう思ってるんだろうなー。 私達

小説 | 外見ガチャ

見た目はガチャだ。 生まれた時に決まっていて、かんたんには変えられない。リセマラもできないし、『現実(リアル)』はなんていうクソ設定なのか。 外見がいい人が得をする。それはもう純然たる事実。みんな認めよ? 学校ヒエラルキーの上位にいるのはいつも可愛い子。社会に出ても、外見のいい子たちは私よりも多くのチャンスを掴むんだろう。無意識のうちに。 ちょっとした機会に呼ばれる その場でなんとなく情報を手に入れる それによってチャンスを掴む そんな事が日常的に起こっている。

小説 | 世界一借金がうまい男

俺には借金が60億円ある。 はじめは事業の失敗で借金が残り、それをなんとかするために色んな所からお金を借りて増えた額がこれだ。 正直、もう今から事業で返す当てはない。 会社を潰し、自己破産するしかないと思っていたその時、電話がかかってきた。 「もしもし」 「もしもし、エムさんですか?」 「そうですが、どちら様でしょう?」 「あ、わたしA銀行のa支店長エヌと申します」 俺が一番借金している会社だ。取り立てだろうか? 黙っているとエヌが続けた。 「少しご相談したいこ

小説 | 人を殺した。

人を殺した。 マッチングアプリで出会って意気投合。 とっても楽しい女の子。 何度目かのホテルデート。 ふと首を絞めてみた。 楽しそうに「やめてやめて」という彼女。 やめない。 こちらを涙目で見てくる。 やめない。 暴れまわる。 やめない。 動かなくなる。 やめない。 彼女の顔や体中からいろんな液体が出てきた。 汚いな。 「あ・・・・」 やばい。 あんまり現実感なかったけど、これ現実か。 どうしよう。 おそらく見つかったら逮捕されて、今の生活は一変するんだろ

小説 | 名コメンテーター佐々木

「名コメンテーターの佐々木が来たぞ!」 「わわーほんとうだ!彼が来た。ついに!!」 「今回は話題の『芸能人の不倫問題』」 「最近みんながツイッターやワイドショーなどで話題にしている」 「不倫の問題ってだれでも意見を言いやすい分野だもんね」 「そうそう、しかも明確に『悪い』って攻撃しやすいから、周知集めるのも簡単だし、視聴率も取れる」 「そこに来て、佐々木の出番ってわけか」 「お、記者会見開くらしい。佐々木、すっかり有名になったな―」 「だって見ちゃうもん。佐々

小説 | 不思議な男の子

出会ったときから不思議な男の子だった。 今まで会った男の人とは違う価値観で生きてるみたい。 自分のやりたいことに素直。 だからこそわがままだし、社会常識?みたいなものは全然ない。 今でも最初にされた失礼な行為忘れないんだから。 でも一緒に行動することが増えるうちに、ちょっとずつホントは優しいんだってのが見えてきた。 誰かが困ってたら助けてあげる。 それで自分が損するなんて考えもしない。 自分の中に芯があるからこそできるのかな。 今ではそんなふうに振り返って思えるけど

小説 | なんでも答える幼馴染

「宇宙人はいるの?」 「いるよ。オレら」 「そういうことじゃなくて」 笑ってしまう。私の幼馴染は何でも答えを持ってる。 「幸せって何?」 「学校帰りに、高野堂のチーズケーキを食べられること」 「人生って何?」 「あの世とあの世の間。人が創り出せる中で一番面白いもの」 「お金って何?」 「多様性を成り立たせるための道具」 「勉強って何のためにするの?」 「その答えを見つけるため」 本当におもしろい。 どんなことも彼の中で言語化されてて、彼の見ている世界を

小説 | 僕はロボットになりたい

僕はロボットになりたい。 だってかっこいいじゃん。強いし。 腕とか飛ばせるし。空も飛べるし。硬いし。 僕がロボットになりたいって言うとママは「いいわね」って言ってくれる。 パパも「お、それは強いなぁ」って言ってくれる。 これはほんとになるしかない。 どうやったらなれるんだろう? ちょっと待てよ、他にもロボットを目指している人がいるかもしれない。 パパはどんなことをも観察と研究が大切だって教えてくれた。 まずは観察。 ロボットを目指している人はどんな人なんだろう? う

小説 | 世界一生産性の高いロボット

「ロボットなんて役に立たないよね」 世間はそんな空気だった。 たしかに便利になったところもある。 だけど、まぁすべてのことを人間ができなくはない。ちょっとだけ生産性が上がったに過ぎない。そんなもんか、頑張った頑張った。 それを聞いた科学者たちは本気を出した。 僕たちの目指した未来はこんなもんじゃない。 数々の発明、実践、世界中の叡智が集まり、日夜不断の努力を続けた。 ある時完成した。 もうこれ以上「生産性」を上げることができない最高のロボット。 科学者たちは顔を見合

小説 | 「ふつう」の男とホームレス

ツイてない。 本当にツイてない。 一生懸命頑張って入った会社は、部署ごとなくなりリストラに。 高校時代から付き合ってた彼女は、最近もっとステキな相手に出会ったと振られた。 ああ、もう元彼女か...。 東京の家賃高い。 もうお金払えないぞ。半年くらい払えてない。 家にいると管理会社から電話がかかってきて嫌な気持ちになる。 だから最近はもっぱらこの公園で過ごす。 100円コーヒーを買うこともできないけど、きれいな水は飲める。ちょっと暑いけど木陰ならなんとかなる。 家に帰る

小説 | あるとき世界の仕組みがわかった

あるとき世界の仕組みがわかった。 「ここで手を動かせば、南米で地震が起きるのか...」 バタフライエフェクト? わかんない。 世界は全部つながってる。当たり前といえば当たり前。 それがあるときに腑に落ちた。それだけの話。 好きな人ができた。 ショートカットの似合う女の子。 この子の笑顔がみえるなら、このわかりきった世界も悪くない。 そんなふうに思える。 その子が死ぬのが見えた。 2年後。 死なせない方法もあるみたいだけど、それをすると僕が死ぬらしい。 なんという因果

小説 | 僕はアリ。キリギリスの友だちがいる。

夏。暑い。でも働かないと。 僕たちは寒さにめっきり弱い。冬になると新しい食料を手に入れることもできない。未来のために今頑張る。 「ラララ〜♪♪」 どこからともなく素敵な音色と歌声が。ヴァイオリンか? 目を凝らすと、遠くにキリギリスが音を奏でていた。いいな、特技があって。好きなことに興じるってどんな気持ちなんだろう? 冬が来た。 よし、食料は十分だ。これでこの冬を超えられる。 巣穴でじっと耐えて、春を待とう。 コンコンッ 誰だろう?熱が逃げるから開けたくない。 コンコ

小説 | 僕の名前は「桃太郎」

僕の名前は桃太郎。 冗談だと思うかもしれないけど、桃から生まれたから桃太郎。 じいちゃんとばあちゃんがそう言ってた。 じいちゃんが芝刈りに行って、ばあちゃんが川で洗濯してるときに、ドンブラコドンブラコって流れてきたらしい。驚きだよね。 ありえる?そんなこと。 ただ、じいちゃんばあちゃん好きだし、二人がそういうならそうなんだろう。それでいい気がしてる。だから、桃太郎って名前も気に入ってる。 ある時、鬼の噂を聞いた。 悪いことをしているらしい。どう悪いことをしているかはいま

小説 | 何でも作れる3Dプリンター

便利な世の中になった。 3Dプリンターだけあればなんでも作ることができる。 一時期拳銃が作れるって盛り上がったけど、3Dプリンターの真髄はそんなもんじゃなかった。 たとえば、データをきちんと入れることで「牛肉(と同じもの)」を創ることができる。もっというと、口に入れたときに食感、味、匂い、そういうものが「ステーキ」と全く同じものが作れる。 大きいものであれば、家も作ることが可能だ。データを入れてフル稼働したら2日ほどで、完成品の家がそこに生まれる。 まさになんでも作れる