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小説 | 名コメンテーター佐々木

「名コメンテーターの佐々木が来たぞ!」

「わわーほんとうだ!彼が来た。ついに!!」

「今回は話題の『芸能人の不倫問題』」

「最近みんながツイッターやワイドショーなどで話題にしている」

「不倫の問題ってだれでも意見を言いやすい分野だもんね」

「そうそう、しかも明確に『悪い』って攻撃しやすいから、周知集めるのも簡単だし、視聴率も取れる」

「そこに来て、佐々木の出番ってわけか」

「お、記者会見開くらしい。佐々木、すっかり有名になったな―」

「だって見ちゃうもん。佐々木」

「だよね、なんか好き」

「わかるわかる」

「あ、はじまるよ!」



フラッシュが飛び交う。
後ろには『緊急記者会見』の文字。
佐々木はいつもの格好でカメラを、僕たちをにらみつける。
鋭い眼光。

静まり返る会場。
意を決した報道のインタビュアーが口を開く。


「佐々木さん、今回の『芸能人の不倫』についてご意見があるそうですが、聞かせていただけないでしょうか?」


みんなが固唾を飲んで見守る。
佐々木が立ち上がる。





「・・・。」





「で、でたー!やっぱり今回も沈黙か!」

「そうだよねー。佐々木は、『意見を言わない』を選ぶよね、うんうん」

「それでこそ佐々木。やっぱ好きだわ―」

「これだけ誰でも意見を言えることに、あえての『沈黙』。格好いい。。」

「僕らは普段から意見を言い過ぎなのかもしれないね」








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