小説 | スマホをなくした
スマホがない!
あれ、昨日ヒロキとご飯を食べて、、それからどうしたっけ?
記憶が曖昧だ。飲みすぎたかな。
ただまあ今日は休みだ、仕事もない。早起きなんてしなくてもいい。
二度寝だ二度寝♫
あとでスマホについてはヒロキに聞いてみよう。
夢を見た。
ヒロキと一緒に白い家に住んでる。カーテンは青だ。大きい犬もいる。
ヒロキと私にちょっとずつ似ている子供が庭を駆け回っている。
幸せな夢だ。
起きたら少し頬が濡れていた。
結婚したい、やっぱり私はそう思ってるんだろうなー。
私達はまだ20代半ば、ヒロキはまだそういう意識はなさそうだ。仕方ない。体を起こす。スマホがないと部屋が静かだ。「案外悪くないな」そんなことを思う。
とはいえ流石に、外界のことが気になる。PCを立ち上げtwitterを見る。
DMが来ていた。
「帰ってきてるの?」
モエカ。地元の友達だ。懐かしい。
早速返事をする。
「おひさ〜。いや、帰ってないよ?どうして?」
「いやなんかあんたのインスタで東小学校の写真投稿されてたから」
「え?」
最近、母校に行った記憶なんてない。
あわててインスタを見ようとする。自分のアカウント名ってなんだったっけ?ええいもどかしい。
ようやく自分のアカウントを見ることが出来た。
たしかに東小の写真が投稿されてる。記憶にない投稿だ。
怖くなった。
東小はここから新幹線で2時間程度。
もしかして誰かが私のスマホで....?
すぐ、ヒロキに確認しよう!
そう思ったがヒロキの電話番号がわからない。
twitterも見てしまうとついつい嫉妬してしまうからアカウントを知らない。
LINEはPCに入れてない。
…家に行ってみるしかないか。
そう思ったときに、私のインスタアカウントに新しい投稿がなされた。
古い校舎。
「あ!これは北陵中学校だ!」
懐かしい〜。
ってそうじゃない。え、なんで?なんで??
また新しい投稿が。
照れたおじさんの写真。
「齋藤先生!」
わー懐かしい懐かしい!変わってないなー。
いやまぁさすがに老けてるけど。
中学の時厳しくも優しく教えてくれた先生。恩師ってやつ。
またもや投稿が。
今度は新しい校舎。
「津山高校だ!」
地元の写真が続く。
学校帰りによく寄ったファミレス。
駅までの途中にあったアイスクリーム屋さん。
ヒロキから告白された公園。
高校の同級生たちからの「おめでとう」って写真。
大学のキャンパス。
よく一緒に行った食堂。
喧嘩した会社の前の公園。
「ふふっこんなところまで」
嬉しい。
会社の最寄り駅。
家の最寄り駅。
よく一緒の買い物をしたスーパー。
今住んでいるマンションの玄関。
「ヒロキ、防犯意識ないなー」
笑いながらそういう。
まぁ一緒に住むために引っ越すのかな?
ならいっか。今くらい。
それよりもヒロキの気持ちが嬉しかった。
まさか今日の夢が本当になるなんて。
エレベーターの写真。
6Fの写真。
ピンポーン
全世界に公開するつもりかな、この涙でくしゃくしゃになった私の顔を。
まぁそれでもいっか。
玄関に走る。
勢いよく開け放つと、そこには大きな花束を持って満面の笑みを浮かべる知らない男が立っていた。
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