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緑色の島風〜沖縄ライフありんくりん〜 vol.05|『古酒を育てること、守ること 〜未来を描く究極のスローフード文化〜 』(2022年6月号)

オキナワをもうちょっと知りたくなるマガジン「ハイサイ!ウチナータイム!」に寄稿している原稿を転載しています。
最新版はコチラからご覧ください。

「ハイサイ!ウチナータイム!」読者の方には泡盛好き、特に古酒が好きという方も多いのではないかと思います。
では泡盛の「仕次ぎ(しつぎ)」についてはどれくらいご存知でしょうか?
とっても簡単に言っちゃうと、年代の違う酒が入った甕を3〜5つ用意し、年代のいちばん古い方に次に古い酒を少しずつ継ぎ足す…という作業を順を追って行うこと。長年かけて古酒として育てていく手法で、一番古いお酒から汲み出した分を少しずつ味わう、究極のスローフード文化です。

買ってきたまま置いておいても瓶内熟成が進むと言われる泡盛ですが、仕次ぎを行う=「定期的に人の手が加わる」ことで香味に変化が出ることが2021年に沖縄国税事務所から発表されました。

https://www.nta.go.jp/about/organization/okinawa/sake/shitugi/pdf/12210704.pdf

古酒の味わいや飲み方については岡山進矢さんのコラム「世界は泡盛でうまくいく」をお読みくださいね。
私の方は「古酒を育てる」というライフスタイルについて。

戦前は100年以上の古酒があり、遡ると琉球王府では300年以上の古酒を貯蔵していたとも言われます。
しかし戦争を経て多くの酒甕も大破。現存している100年以上の古酒が僅かに残る程度です。
この一件からも戦争が人命のみならず受け継がれた文化そのものを奪うものであることがわかりますが、逆をいうと古酒を育て引き継いでいけるということは世の中が平和であることの象徴だということにも気づきます。
「美味しく飲む」ということのずっとずっと先にある未来をイメージしてロマンが広がることが、「仕次ぎ」の持つ意味の一つです。

このほど仕次ぎの作法や楽しみ方がまとめられた「古酒道」の動画が公開されました。
こちらの動画は仕次ぎをしたことがない方でも即実践できるわかりやすい入門編となっています。

登場人物は泡盛仕次ぎの専門家でいらっしゃる島袋正敏さんと安次富洋さん。お二人は沖縄県名護市在住で正敏さんは「泡盛仙人」とも呼ばれる方です。

先ずは【予告編】のYouTube動画をご覧ください。僭越ながら私も撮影に同行させていただきました。

入門編といっても充実の内容です。
本編は有料(500円)となりますが古酒道の作法はもちろん、正敏さんと洋さんの語りから様々な学びや気づきを得られるのではないかと思います。

私が仕次ぎを通してこの体験で得たことは、少しずつ育つ古酒を愛でながら毎日の生活を大事にすることが、心の安定につながり未来への希望にもなるということです。
年に一度の仕次ぎで汲み出した古酒を家族や友人と味わい、その年を振り返る。
1年後・3年後・5年後はこのお酒がどんな味になっているだろうか、皆がどんな生活をしているだろうかと想像し未来を語る。考えるだけでワクワクするプロジェクトです。

本土復帰50年で沸いた5月が終わり、6月といえば23日の「慰霊の日」が控えています。
100年古酒が育つ平和な世が続くことを願い、私も古酒甕を迎え入れることを計画しようと思う今日この頃です。


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