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無知の知


「無知は罪」

無知であることは、時に、
罪になる…


「ご存知だとは思いますが、
哲学者のソクラテスは
そう言ってます。」

いつものように、お話ししながら
Kさんと一緒に歩く練習中でした。
何気ない会話の途中で
ふっと…出された言葉でした。

「この頃は、
哲学の本を
読み返しているんです。」


71歳の男の方。
経済学のお仕事をしていたKさんでした。
数年前にあった事故で
頭を強く打ち、
そのせいで
記憶が抜け落ちてしまいます。


哲学者のお話しです。
経済学と哲学…
2つの分野の関係性?…?
お話しの奥の深さには
戸惑いながらも私自身
興味深くて思わず引き込まれました。


Kさんとお話しをした当時の私には、
読書をする習慣がありませんでした。
小さい頃はよく読んでいた本…
なぜ読まなくなってしまったんだろう?
そんな事を思いながら、
仕事関連の分野以外には
興味を持てていないことに気づいた私。
恥ずかしさを感じながら、
「耳が痛いです…」
そんな風にはぐらかし
会話を続けたことを
思い出します。

Kさんはご自身で
認知症の予防のためにと
日々、工夫しておられます。
食事、運動、睡眠のこと
自ら情報を収集し広く深く学ぶ姿勢です。
そして実際に行動します。
お話しを聞いてみると
様々なことを試していらっしゃいました。

「学ぶことが好きですか?」
Kさんの姿が楽しそうに見えました。
偉そうに…尋ねてみました。
「好きですね」


Kさんは、
学んだ事を
生活に生かすために
自分に合うものを選び
習慣に取り入れます。
英語を学ぶことも
Kさんの一つの習慣です。

英語の教師経験もおありです。
シャドーイングは
認知症予防にと
日本語からはじめられました。
「カナダにいる息子に勧められてね、
池上彰さんの解説を
シャドーイングしてるんですよ」
笑顔でお話しして下さいました。

「英語の単語は3000ぐらいあれば
ほぼ日常会話はできるようですけどね…
いつ日本を離れることになっても
実用的な英語が身についているように
20000〜30000語は
覚えようと、今、努力してるんです…」


英語で毎日ニュースを聴き、
聴き取れなかった単語を
一語一語、丁寧に調べます。

「僕が目指すのは、実用的な英語です。
だから、まだ不十分。listeningだけでは実用性に乏しいんです。」

「読めて、聞き取れて、話せて、書けて。
この4つができて、はじめて実用的になる、
そんなふうに僕は思っているんですよ。
書くのがなかなか…すぐ忘れてしまいます…」

そんな風にお話しされる表情は、
とても楽しそうです。


そんなお話しを
3年前に聞いてから、
どんどんと英語力をUPしてこられました。


はじめは聞き取れなかった英語ニュース
ここ3年で、
「英語のニュースは、専門用語以外はね、
今は、ほぼ聞き取れるようになりました」


そして
目標の20000語に近づいている感覚はあると
ご本人。

「どうやって覚えているんですか?」


「覚えるコツ?…語源を遡っています。
ギリシア語まで遡ってね…
意味を調べるとね、面白いんですよ。」
生き生きされています。

Kさんの謙虚な姿勢に、
いつも驚き、ある日私は

「謙虚さのコツってなにかあるんですか?」
思わず聞いたことがありました。


『無知の知』

「自分が無知である…

そう思ってるから、でしょうか…??」
考え込みながら、
答えて下さいました。


私にも分かる言葉で
丁寧に教えて下さいます。


ご存知とは思いますが、
「無知の知」は、ソクラテスの
「知らないことを自覚する」という
哲学の出発点に向かう姿勢を
簡略して表現した言葉です。

謙虚な姿勢を尊敬し、
生活の仕方を参考にしたい
いつも刺激を受ける方です。


生き生きと楽しそうに
お話しされる姿を見て、
思います。

‘知らないことを知る喜び’
よく言われることではあるけれど
知らなかったことが分かると嬉しい
学ぶことは楽しいことだった…

そんな大事なことを
思い出させてくれた
大切な方です。





■高次脳機能障害
高次脳機能障害の原因となる傷病…

8割は脳卒中、
1割は脳腫瘍や感染症などの様々な病気
1割は頭部外傷
と言われています。


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