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玩具開発チームリーダーに聞いてみた(後編)~くるくるチャイム32周年。大切にしているスピリットとは?~

「子どもはなぜくるくるチャイムに夢中になるんだろう」。そんなふしぎにせまるため、くもん出版 企画開発部 玩具開発チームリーダー星野さんにインタビューをする企画。

前編では、くるくるチャイムの発想の源は砂時計だったという話や、4度リニューアルされている話を聞きました。

4度のリニューアルにも「くるくるチャイムが子どもを夢中にさせるひみつ」が隠されているのでしょうか。 

【リニューアルの軌跡】

小宮:前編で、くるくるチャイムは今5代目だというお話を聞きましたが…

星野:そうなんです。最初は結構スリムで、しっぽがついていたりしました。当時は青と赤があって、出産祝いとして購入していただこう、というねらいでつくられていました。

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▲ 歴代のくるくるチャイム 読み進めるとどれが何代目か分かります。

小宮:この鳥みたいなデザインは何か意味があるのですか?

星野:どうなんでしょう(笑)。なぜ鳥かは今わかりませんが、実は5代目をつくった時に、いったん鳥をやめようという議論もありました。シロクマとか、イヌとかつくってみたんですよ。そしたら見た目がかき氷器みたいになってしまって…どうもしっくりこなくて鳥に戻しました。

小宮:そんなウラ話があったんですね。

星野:当時の安全基準に合わせると、1代目はボールの直径は35㎜と割と小さく、素材も中がつまったムク材でした。ボールに重みがあるので、下に落ちるとチャイムのきれいな音がなり、あたまが取り外せて、ボールが中に5個並べられるような仕様でした。
5回転半くらいしますが、ボールが小さいのであまり高さもなくて、コンパクトでかわいいおもちゃでした。

安全基準が変わったので、2代目がつくられました。ボールが42.5㎜と大きくなりました。らせんの巻き数は維持したいので、全体的に大きくなったものになります。このときはヨーロピアンカラーということで、おしゃれな色を用いました。ボールが2色でツートーンになっていて、転がるとき色がまざって見えるような面白さが付加されました。

しかし、お客様の声を聴くと、ボールが見づらいという声があり、3代目は戻しました。
3代目は私が担当しましたが、ボールがさらに大きく45㎜となり、ものすごい大変だったんですよ…。らせんの巻き数をとることと…

小宮:そうか、らせんがあるので、ボールが大きくなると影響がありそうですね。

星野:試作品は背がすごく高くなってしまい、お座りして入れられなくなってしまうと困る、という懸念がありました。また、らせんの角度を変えて強引に巻き数を維持すると、ボールが干渉して、途中でつまってしまいました。なので芯を細くしてなんとか…結果、3.5巻きになりました。ごめんなさい、細かい話になってしまって…

小宮:いや、とても面白いですよ!

星野:また、ボールの色も原色にもどしたいという思いがありました。というのは大人が「あっ、黄色入れたね、すごーい!」とか、ボールを渡すときに「黄色と赤、入れてごらん」など、そういうやりとりが生まれるという意見がありました。公文式教室の先生からも、色の名前を知るきっかけになるというアドバイスがあったと記憶しています。
「何色からでてくるかな?」と声をかけると、「赤!」といったり、自分の好きな色を入れたり…ということで…
色というのはこの時期非常に大切なことなので、単色にもどしました。

小宮:そんなこだわりがあったのですね!

星野:こだわりといえば、顔も相当こだわったんですよ。これまでのくるくるチャイムの目がかなり特徴的だったので…

小宮:本当だ!かわいくなっている気がします。

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▲ 右から2つ目が星野さんが担当した3代目

星野:いろいろなパターンでヒアリングしてみたいと思って、おもちゃショーで好きな顔の投票をしてもらいました。何パターンかつくって、一般のお客様にどれがかわいいか選んでもらってこれにしたんです。くちばしや、あたまも丸みをだして、目を変えたというところです。その後担当者が変わり、また目がもどりましたが…フフフ。その辺は担当者が主体なので、あまり細かいことは言わず。あと他にも収納を改良しました。

小宮:まだ改良したんですか?

星野:初代はあたまに収納できましたが、2代目で収納はなしになりました。やはりボールがどこかにいってしまうという声があり、このときは、下のトレイにボールがならんだときに、上から透明なカバーをパチッとつけられるようにし、そのままおもちゃ箱にしまえるようにしました。

そして、この3代目のあとに、こんなお客様の声をいただきました。「ボールを決められたところではなした後、そのボールが気になった子どもが手をぐっと穴に入れてしまう」というものです。ボールの径がおおきくなったので、月齢が小さいほど手が入りやすくなってしまいました。

小宮:なるほど。子どもの手だったら入りそうですね。

星野:そうなんです。ボールが45㎜になり、誤飲に対しては良くなったのですが、ちがう問題が出てきてしまいました。

小宮:いやー、大変だ…

星野:この問題を解決するために、4代目ができました。あたまの穴の内側部分を別パーツでつくり、もし、お子さまが手をいれても、2アクションでそのパーツごと手を外せる安全装置をつけたのが4代目でした。それと布製の収納袋をつけました。プラスチックの部品が1つ増え、金型が増えたので、ボールをしまうためのプラスチックのカバーは廃止となりました。

小宮:なるほど。価格の問題もあるんですね。

星野:しばらく4代目が活躍しましたが、最近5代目が登場し、仕上がってきました。
ボールの大きさは変わりませんが、安全装置を1アクションでとれるようにしました。また、ボールの収納を本体内部にできるようにしました。

名称未設定のデザイン (4)

▲ 5代目のくるくるチャイム

小宮:袋がなくなったということですか?

星野:はい、本体にストッパーをつくり、ボールを外にでなくすることで、本体内部にボールが収納できる形に変更しました。

また、もう1つの大きな変更としては、ボールが顔の反対側からでるという仕様を変えたことです。
鳥の顔をみてボールをいれると、ボールが後ろからでて取りにくいという意見がありました。この意見をもとに、顔側にボールの出口とトレイを置きました。

小宮:すごい!こんな変更が!?

星野:鳥デザインはどうした?といった感じではありますが…

小宮:おなかからでてくるイメージですね。


【発売から32年。大切に思っていること】

星野:発売から32年たちますが、その間にハガキ・メールなどでお寄せいただいたお客様の声で変えていきました。
先ほどの話にありましたが、
「ボールがなくなっちゃう」
「ボールがカラフルで目がちかちかしてしまう」
「ボールもかおも見たーい!」

などの声を聴いてつくっていきました。

「商品ができた!満足!」ではなくて、やはり使ってもらった人からの声はすごく大事です。
特にくるくるチャイムは大変気に入って使ってくださる方が多いので、使えば使うほど「あっ、これこうだったらいいのに~!」と感じていただくこともあります。
そのような声を聴いて初めて完成していくんだな…というところは商品づくりを通じて感じます。
ですので、「つくったら終わり」ではなく、つくったあと、お客様からのハガキをすごく見ますね。「ねらい通り使ってくれているかな?商品を通じて伝えたいことは伝わっている?」ということだけでなく、「もっとこうだったら」という意見もしっかり聴くようにしています。

公文公会長の考え方で、「もっといいものはいつもある」というものがあります。ベストだとおもって出していますが、それはベターであっても、決してベストではなくて、もっといいものはいつもあると考えています。
また、つくり手だけの考え方だけではだめだと感じています。こうして、お客様と一緒につくってきたという感覚があって、5代目が使いやすいといっていただける商品になっています。もしかしたら、5代目もいろいろあるかもしれませんが…。

小宮:すごいですね、32年間のつくり手と使い手の想いがつまった商品なんですね。

くるチャイ歴史 

星野:そうですよね!32年というと、今まさに使っている現役世代のママ・パパが使っていたかもしれないし、もしかしたら、おばあさん・おじいさんも記憶があるかもしれません。おばあさんは母親として、お子様と使ってくださったかもしれません。今回の記事を読んでくださった方の中から、もしかしたら、アッ、私は2代目使った!という方がいるかもしれませんね。

小宮:商品を生み出してからが勝負というか、生み出したあとも、どんどん改善していくというスピリットみたいなものが感じられ、お話をききながらすごいなと思いました。

星野:「ベストセラーよりロングセラー」という考え方で、くるくるチャイムだけでなく、他の商品も一回作って終わりではなく、やっぱりお客様と一緒につくりあげていきます。そのためには、リニューアルしていくことが大事なことだなと思っています。
ただ、ぶっちゃけていうと開発者としては、リニューアルって難しくて…
つくった当時は「ベストだ!」と思うわけなんです。だけど、もっといいものがあるっていうと、開発する側としてはかなりの難問なんですが、そういう時にお客様の声がヒントになりますね。それをカギにして、「ここを改善しよう」ということで、良い商品に育っていくという流れになっています。

小宮:なるほど!もう、星野さんをはじめ、開発者の方にとっては、お客様の厳しい意見も肥しとなっているということですね。辛辣な意見は落ち込むとも思うのですが…

星野:ヘビーユーザーな方ほど、大事な意見をくださるという感じがするので、「そこまで使ってくださっての意見か~!」と考えてしまいますね。

くるくるチャイムは代表的な商品ですが、他の商品もリニューアルは結構しています。例えば、現在のNEWスタディ将棋は、最初はこま台もなければ、こまの形もただの四角でした。

小宮:えーーっ。今と全然違いますね!

星野:そうなんです。こま台をつけたほうが、収納もできるし、雰囲気も楽しめるということでつけました。
こまの形も、本来の形に近づけると原価が上がるのですが、お客様の声にこたえ、変更していきました。

小宮:どの商品にも、お客様から頂いたご意見をヒントに、もっといいものを追求するという熱意が込められているんですね。


インタビューを通じて、なぜくるくるチャイムが子どもの心をつかむ商品なのか、垣間見えた気がします。柔らかいものごしで受け答えしてくださった星野さん奥から発せられる、おもちゃに対する熱い思いがビシビシと伝わるインタビューでした。
            (インタビューアー マーケティング部 小宮)

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