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韓国ドラマ「明日」

韓国は財閥への復讐譚同様にファンタジーが好きだ。妖怪に死神に宇宙人にタイムトラベル・・・何でもありだが、だいたいパターンが決まっている。ドラマ「明日」(2022)もそうだ。主人公は死神。死神のくせに悲嘆にくれて自殺する人間を救おうとする少し変わった物語だ。死神と言えば視聴済みの「トッケビ」(2016)に「ブラック 恋する死神」(2017)などがあるが、まだまだ未見の死神ドラマがあるに違いない。

「明日」っていうタイトルはどうだろう? 意味はわかるが、あまりにも地味すぎるタイトルだ。原作は韓国の漫画文化「ウェブ・トゥーン」ネット漫画だ。

主人公は人の良い就職浪人の青年チェ・ジュヌン(キム・ロウン)で、漢江の橋の上から身投げしようとする中年男を救おうとして誤って一緒に漢江の藻屑になるところを走馬灯危機管理チーム(死神の自殺を防ぐ新部門)のチーム長、ク・リョン(キム・ヒソン)、イム代理(ユン・ジオン)のふたりに救われる。しかし、それでも肉体はダメージを受け、昏睡状態のまま半年を病院で過ごすことになってしまう。

意識を取り戻す半年の間に、ジヌンの魂は黄泉の国にある企業で死神の仕事を補助することになってしまう。面白いのは、人間に見えるジヌンの実体は、冴えない中年男(クァク・ジャヒョン とにかく明るい安村さんに似ている好きな韓国俳優)だということだ。

そういえば日本にも2013年から連載中の漫画「死役所」(あずみきし著)というのがある。それをドラマ化したのが同名の「死役所」(2019年放送)で、松岡昌宏、黒島結菜らが演じていた。同じような物語として釈由美子主演の「スカイハイ」(2003)、岩田さゆり主演の「地獄少女」(2006)などを挙げる。いずれも漫画が原作である。ああ、ムロタニツネゾウさんの名作漫画「地獄くん」も同じ系列に入る。。

「明日」は、毎回、自殺しようとする人間を、自殺から救う話が続く。死神のくせに・・・である。自殺防止担当は死神会社に新しくできた部門で、死神たちからは疎まれているというのが面白い。

韓国ドラマお得意の“人が死んで泣かせる”パターンではなく「自殺を留まった人間の心」に泣ける物語だ。しかし、そこに辿り着くまでに犠牲になる人間たちはいる。

人は運と時間の上で生きている。決して努力の賜物などではない。運がいい奴は永遠に幸運だし、運が悪い者は再生できるような幸運は訪れない。それが現実だ。この世にアメリカン・ドリームなんて都合のよい話は数えるほどしかないし、それも富裕層の気まぐれである偽善活動の一環である事が多いので欺されてはいけない。

さて、ドラマ「明日」は、“弱者を救う系列”の良いアイディアであるにも関わらず、そのなかの1話に疑問がある。突然として日本統治時代の慰安婦の悲劇が挿入されていることである。僕個人として、過去の韓国や中国に対する数多い日本の犯罪は理解しているし、慰安婦に関しても申し訳ないという気持ちがある。

それでも、面白く観ているドラマのなかに、突然として慰安婦の悲劇が挿入されるのは疑問がある。ただし、慰安婦として強制的に働かされた女性たちを差別する朝鮮人たちも多くいたというところで、悪行を働いた日本人同様に同民族の“人間としての悪い部分”も描かれているところに救いはある。

最終回に近づくにつれてそういう話が中心になっていく。女真族(のちに満州族)との民族間紛争の中で拉致された女性たちが「慰安婦同様の状況」に陥って生還しても、「汚らしい」と差別されてしまうのである。ちなみに横溝正史の「本陣殺人事件」も、松本清張の「ゼロの焦点」も、森村誠一の「人間の証明」も、そういうバカな思考が殺人動機に結びついている。

強姦されたんだから仕方がない。生きるために身体を売っても仕方がないことだと思う。少しも穢れていないし、汚いとは思わない。そんな人たちよりも気軽に結婚離婚を繰り返して一般市民に悪影響を与えている芸能人の方がよほど汚らわしいと僕は個人的に思う。

朝鮮半島は、古代の国内内乱のあとに中国やモンゴルや日本、アメリカ、ソ連に穢されてしまった悲劇の国だが、大韓民国だけでなく、北朝鮮の一部でさえITによる近代化は日本より先を行っている。今やワンパターンになってしまっているが、K-POPが先駆けとなり、ウェブトゥーンやWeb小説、ネット配信映画・ドラマなど、多様な文化も進化中である。日本はアメリカに占領されてから経済大国となったものの、それさえ日本はアメリカの一部である故だ。太平洋戦後は心底腐敗してしまっている。それに気づかず生きている日本は、昭和40年頃までの映画、ドラマ文化を復活させてほしい。

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