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人間とはよくできた生き物だ|第5話 思い出すじゃないか『ロビー』

前回のお話はこちらから

髪だけはしっかり巻いて出勤したものの、後輩は立寄だった。


(何てつまらないのだろう)


とりあえず私はデスクに座る前に部長のところへ行き、陳謝した。


「いやいや、こっちは大丈夫。ただ、本当にもう大丈夫なの?無理しないでね」


「はい、ただの貧血だったのでもう大丈夫です。本当にご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありませんでした」


再度頭を下げて、自分のデスクに戻った。


(ふぅ、とりあえず今日の憂鬱1クリア)


部長の笑顔は今日も完璧に張り付いていた。


それにしてもやはり気持ちが悪い。


デスクに座り、PCを立ち上げ、メールの確認作業に入った。


この作業だけで軽く1時間は超えそうな勢いだった。


(何でもかんでもCCに入れるのやめて欲しいんだよね)


そう独りごちながら案件の状況を確認し、返信をしていった。


(やばい。これが終わったら、後輩が帰ってくるまでに売上の資料作らなきゃ)


ホワイトボードを確認すると、後輩は午後戻りになっていた。


(どこかでランチしてから戻るんだろうな)


少し淋しい気持ちになりつつも、時間に猶予ができて安心した。


メールは全部で126件。


そのうち半分は自分には関係ない。


関係ないが、状況は分かっておかなければいけない。


それは関係あるということなのかもしれない。


しかし、別に私がいなくても大丈夫だと思う。


(あぁ、気持ち悪い)


一段落したので、タバコでも吸いにいこうとしてふと気付いた。


(私の中にはロビーがいるのだ)


仕事をしているとまるっと忘れてしまうが、私の中にはいるのだ。


(私の中にいると思うと吸えないじゃないか)


とりあえずトイレに行ったが、トイレなんて5分もかからない。


(何て厄介なんだ、ロビーは)


仕方がないので、コーヒーを買ってデスクに戻った。


ピリリリリ。


携帯が鳴った。


営業からだった。

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つづき










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