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人間とはよくできた生き物だ|第9話 ありがとう『ロビー』

前回のお話はこちら


以来、ロビーは私のピンチに警鐘を鳴らしてくれるようになった。


朝起きて、ギリギリの精神状態で電車に一歩入るとき。


見積に対して営業からつめられているとき。


疲れ切って夜中ベッドに入り目を瞑った瞬間。


(私、今ピンチだよね。でも、大丈夫だよ。ありがとう)


その角笛の音はだんだん励ましの音色にも聞こえてきた。


(ロビーだけだよ、本当)


いつだってロビーは私に寄り添ってくれている。


(早くロビーに会いたいな)


それは意外と早くやってきた


**********


(今朝は何だか身体がダルい・・・)


これはいよいよだ。


いや、いよいよなのだろうか。


分からなかったけれど、念のため仕事の前に病院へ行ってみることにした。


上司には病院へ行くため遅れる旨をLINEしておいた。


(何か気持ちも悪いな・・・)


さすがに体調が悪く髪の毛は巻けなかった。


(しんどいよ、ロビー)


・・・


そういえば今日は朝おきてからロビーが啼いていない。


(大丈夫かな。何かあったかな)


いよいよ不安になり、病院までタクシーで行くことにした。


**********


受付をすまし、診察室に通された。


「はい、こんにち・・・」


**********


『オエェ』


聞こえた瞬間口から真っ赤なものが飛び出して来た。


「あらあら、しんどいかな。ここに出して」


誰かがそう言いながらバケツを差し出してくれた。


背中もさすってくれているようだ。


とにかく私はムカムカとして、胃の中のものをすべ吐き出してしまいたかった。


『オエェ。。。ボッ、ボエェ』


涙が溢れ、喉が焼けるように痛かった。


『ボエ。。。』


ひとしきり吐き出し、少しだけ楽になった。


「はい、これで口をゆすいで。水もこのバケツに出しちゃって」


(あの看護師さんだろうか)


水の入ったコップを差し出してくれた。


「ずびばぜん。この間も。何から何ばでありがとうございばす」


涙と鼻水と吐瀉物でべちゃべちゃになりながらお礼を言い、口をゆすいだ。


「ん?はい、これも使ってね」


真っ白く清潔そうな腕にタオルがかけられていた。


(やっぱり美しい腕だな)


顔を見上げた。


「あっ、ありがとうございます。」


そこにいたのは別の女性だった。


しかも、安いキャバクラのイベントのような、ナースのコスプレをしていなかった。


「じゃぁ、先生を呼んでくるわね。待ってて」


(えっ、本物のナース?)


改めて周囲を見回すとここは別の病院らしかった。


(ん?どういうことだろう)


訳が分からない。


急に目眩がし目の前が真っ白になった。


(ヤバい、貧血だ)


ほとんど白くなった視界の隅でカーテンが開き、本物の医者のような医者がゆっくりと歩いて来る。


(あぁ、あぁ、ダメだ・・・)


そして座りながらこう言った。


(ダメだ!)


「はい、こんにちは。きみはね・・・」


***** fin *****

最後までお読みいただきありがとうございます。


あとがきはこちらからご覧いただけます。


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