正月に実家の庭が凄惨な事件現場に?!という話
ウチの父には毎日会いに来てくれる友達(メジロ)がいる。誰に対しても優しい父は、つがいでやってくる彼らのために食事台を自作し、みかんを箱買いし、彼らがつつきやすい高さにみかんを毎日切っては台の上に届けている。
昨年暮れには窓にお正月飾りを施した(マメよのう)写真が送られてきた。そんな平和な父の庭に正月のある日、事件が起こった。
一月二日、父娘で白川郷へ日帰りで撮影旅行に出かけて帰ってきたその夕方のことだった。娘がふと庭に目をやると、この台の上と地面に大量の鳥の羽根が落ちていることに気づいたのだ。
完全に殺人事件現場。
父娘はメジロが大きな鳥に襲われ、惨殺されたと推理した。
果たして両方とも殺られたのだろうか。仮に一羽逃げ延びていたとしても、パートナーが殺られた現場でごはんを食べる気にはもうそもそもならないだろう。二人はそう思った。
翌朝、父はホースでその鳥の羽根を流しながら、マジでしょんぼりとしていた。
そりゃ無理もない、彼らが美味しそうにごはんを食べるのを見るのは、父の毎日の楽しみだったのだ。娘は、友達を無くした(亡くした)父が、意気消沈してしまうのではないかと心配した。
🦜←心配←👨🦳←心配←🙍🏻♀️
という連鎖だ。
「また新しいつがいが来てくれないかなあ」と父娘は話した。しかし、そもそもこの住宅地の一角に毎日美味しいごはんをくれるおじさんがいるなどと、どうしたら鳥たちに知ってもらえるのだろう。
「色んなとこに看板を立てるか!」と娘は言った。「鳥専用レストランあり〼とかさぁ」
父も呼応して言った「それいいね、無料お食事処。ワナだと思うかなあ(笑)」。
父娘は笑ったが、期待は薄いと知っていた。
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するとその日の午後、父娘の推理をひっくり返すように、メジロたちがいつものようにやってきた!
「わぁぁぁぁ!生きてた!!!!」
父娘は死んだ家族が生き返ったかの如く喜んだ。とりわけ父の方は本当に嬉しそうだった。
改めてメジロを目の前にしてみると、前日落ちてた羽根はもっと大きく、灰色がかっていた。よくよく考えたらこんな綺麗なグリーンではなく、メジロのものであるはずもなかった。大きな灰色の鳥が暴れただけだったのかもしれない。
なぜ二人とも「メジロが殺られた」と信じたのか、後から考えればおかしな話だが、とにかくさっきまで凄惨な殺人現場だったと思っていた父の庭に、再び平和が訪れた。
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父は昨日一通のメッセを写真と共に送ってきた。
今日もメジロは父の庭で美味しそうにリンゴをついばんでいる。
平和だ。
人は面倒を見る相手がいると日々に張り合いが出るというものだ。父に毎日会いにきてくれるメジロさんたちに、娘はただただ感謝している。
明日もまた来てね。リンゴかみかんでお待ちしております。
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