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マリエンバートのイカロス

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チェコ出身のオーストリア=ハンガリー帝国航空隊エースにしてマルセイユ大尉、ノヴォトニー少佐の教官アリギ氏をご紹介します。
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記事一覧

1. ボヘミア生まれのエース

1. ボヘミア生まれのエース

 どうやら私の名前は珍しいらしい。1895年10月3日、オーストリア=ハンガリー帝国ボヘミアのテッチェン生まれ。ズデーテンドイツ人という類に入る。今でいうチェコ北部のジェチーンってところさ。エルベ川とプローチェニツェ川の合流地点、ドイツのドレスデンから意外と近いんだよ。18世紀には温泉が出たんでスパの町なんて言われていたが、今ではすっかり枯れてしまった。もし、ジェチーンへ来ることがあったら城に行っ

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2. 栄光なる「皇帝の飛行中隊」

2. 栄光なる「皇帝の飛行中隊」

 1916年の終わり頃、私は北イタリアのイゾンツォ前線に展開する第1飛行中隊に配置された。ここでは単座式複葉機ハンザ=ブランデンブルクDIで護衛任務の大部分を引き受けた。1917年5月から4月の間には、同機で8勝から10勝、11勝、12勝を得た。そもそも私は固定された安定板以外のホーン・バランスのよい舵を持っていなかったこの戦闘機の構造としての安定性に不満があった。そこで、低アスペクト安定板と航空

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3. マリエンバートのイカロス

3. マリエンバートのイカロス

 1918年夏の間、私はダルマティアで第1駆逐戦闘飛行隊(Flik1J)の一員としてイガロ(Igalo)に復帰し、一組の単座機アヴィアティックDIをもらい受けた。WKF工場でテストパイロットとして働くため、ウィーン郊外のヘンナースドルフへに呼び戻される前にこの特別な戦闘機2機で最後の32勝目を達成した。

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