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鍛え抜かれた出張筋が役立つ時

第2戦の試合予定は、もともと8月15日の終戦記念日でした。ただ、台風の直撃があるとの予報が、慶應の対戦が決まる数日前から言われていましたので、それが心配でした。せっかく勝ったのに。飛行機も観戦も、せっかく手にできたチケットもあるのに、台風で見られないなんて絶対に嫌!


このとき、またしても私の出張経験値が役に立ちました。私は、全国のクライアントを訪ねて歩くので、国内の移動には慣れています。日程がビシビシと詰まっている中でも、遅れずに約束通り現地に到着するにはどの乗り物でいつ移動すべきかなど、この類の経験値はずば抜けています。飛行機や新幹線だけでなく、まるで脱北戦のようなフェリー、他に人が乗っていなくてほぼオカルトな夜行バス。何を使っても、約束の時間までには確実に目的地に到着している。台風なんかに負けるわけにはいかないのです。私の出張筋トレはこの時のために積み上げてきたのかもしれません。

雲の上はいつも晴れ!



台風が来ている時の移動は飛行機に限ります。
新幹線は、地面にくっついているので心理的には安心です。でも雨量によって強風による倒壊や土砂崩れなどの危険性を計る国土交通省の基準が厳しくなっていることを考えると、途中で止まる可能性が極めて高くなります。

だったら、どんな大雨でも「雲の上は晴れ」。どんなに厚い雲でも、飛行機が離発着を決定できる程度ならば、素人頭で怖がる必要はありません。
実際、離陸時に雲間を抜ける時は、多少揺れはしますが、そこを通り抜けさえしたら、その先は青空です。
雲の上はいつも晴れです。

で、陸路より空路に賭けて、私は当日の早朝便で、飛行機で大阪に移動して万全な体制で応援に挑みました。でも、新幹線で向かっていた方は、途中の静岡周辺でストップしてしまったとか後になって伺いました。応援団の皆さんも試合時刻に間に合わなかったということがあったと。どんなに残念だったことでしょう。試合時間を新幹線の中で迎えるなんて。私だったらアインシュタインじゃないけど新幹線の中を走ってでも間に合いたいと悶絶したことでしょう。お天気のせいとはいえ、応援したい気持ちを思うと間に合った私も胸を締め付けられます。

やったー!観戦できる!



さて、いよいよ2戦目。場内はもの凄い熱気です。対するチームは広島県代表の広陵高校。県大会を勝ち抜き、塾高同様に春の選抜も出場している歴史ある強豪校。格上校との対戦。
広島というとかつての選挙区であることもあり、親しみがないわけではないのですが、

ごめん、今回は勝たせていただきます。勝ったら107年ぶりの優勝に近づくの。
でも、もしかしたらこれが今年最後の試合になるかもしれない。
でも、もしかしたら、勝っちゃったりもするかもしれないし。

球場の応援席は、どちらの側もこんなムードです。なんたって、甲子園は1回負けたら即終わりの厳しい世界ですから。

ビールの売り子ちゃん達が、重そうなサーバーを背負い、大きな可愛い声で「ビールはいかがですかあ~!」と通路を練り歩きます。でも意外と飲んで観戦という方は少なく、どちらかというと選手への目線で忙しくて、

ビール飲んでる場合じゃないのよ

という空気感。
かくいう私も、持って行ったペットボトルの水を熱中症対策で飲むのが精いっぱい。
気持ちが一球一球に集中していて、他に考えることができません。
ハラハラドキドキ。


3点リードはしたものの、じわじわと同点に追いつかれ、延長タイブレーク戦という聞き慣れない展開に。

大丈夫大丈夫。
ここで勝つのが慶應よ。
大丈夫。

ほぼ呪文のような願いは、この時既に祈りになっていました。
そして次の瞬間

まさかの勝利かも?
勝つかも??
え?勝つかもよ?!
勝ったー!!
おめでとう!

延長10回タイブレーク


延長10回タイブレークでの3点を勝ち取り、塾高は勝利を引き寄せました。17歳18歳の若者が真っ直ぐ取り組んでいる姿には感動しかありません。良いものを見せて頂いて、涙があふれてきました。
どんな場面でも、諦めない。腐らない。相手を過大評価も過小評価もしない。目の前の仕事に真っ直ぐ向き合う。何があっても、これでいい。全てが上手く進んでいる、と受け取る姿勢が、両チームの応援席にも伝わっていました。

試合を通して選手たちの姿から受け取ったメッセージは、何かを浄化する清々しさがありました。気持ちが澄んでいくのです。
何かに向かった真っ直ぐな姿って、こういう感動を与えるものなのだと思うと、感動が波紋のように広がっていきました。球場からの帰り道は、時折している神社の奥の院登拝後の下山のときのような、凛とした温かい気持ちになりました。

まだ、感動の甲子園が続くことが確定しました!
いくぞー!

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