見出し画像

ストレスマネージメント

どうしてシマウマは胃潰瘍にならないの?

"Why Zebras Don't Get Ulcers" という本を読んだ。
「どうしてシマウマは胃潰瘍にならないの?」っていうような意味のタイトルで、Robert Sapolsky(神経内分泌学者)が1994年に書いた本です。
今から28年前の、結構昔の本なのですが、ストレスやストレス関連の病について、動物や人間の例をあげながら、興味深く説明してくれている。

心理的・肉体的負荷に対して、最初に「ストレス」という名前をつけた医師、ハンス・セリエは、「ストレスは "解消法(スポーツ、趣味など)"」を見つけることで緩和しましょう、と言っていた。

動物でも人間でも、その解消法として「暴力」に走ることがあったりする。「壁パンチ」ですっきりするのは、壁が壊れて自分の拳が痛いだけかもしれないけれど、ストレス解消のために自分より弱い立場のものをいじめることで、自分は胃潰瘍にならなくても、相手に胃潰瘍を与えてしまっているしれない(胃潰瘍はストレスで起こる場合が多い)。

ネズミは電気ショックでストレスを与え続けると、他のネズミを噛みつき続けるネズミになる。雄のヒヒは喧嘩に負けると、自分より弱いヒヒに八つ当たりする。

人として、暴力でストレス解消をしてしまうようなことにはなりたくないけど、人もストレス解消に暴力を選んでしまう可能性があるのであれば、クッションパンチくらいにしておきたいものだ!

そういったストレス解消法が効果がある一方、霊長類では、「サポートし合える仲間」がいる場合、状況が変わってくる。例えば、友達が沢山いて、子どものヒヒと沢山遊び、性行為抜きで雌のヒヒと毛づくろいをしたりするタイプの雄のヒヒは、ストレスホルモンのひとつである糖質コルチコイドの分泌量が、他のそういったことをしない雄のヒヒよりも、少ないそうだ。

Robert Sapolskyはこれを、「泣くための肩、手をつなぐ相手、話を聞いてくれ、大丈夫だよと言ってくれる人」がいることが、ストレス低減の助けになる、と表現していた。


予測できるかできないか

動物や人間は、どんな状態に置かれた時に、より多くの心理的ストレスを感じるのだろう。

ネズミに電気ショックを与えると、当然ネズミはストレスを受け、ストレスを受けたネズミは胃潰瘍になる。

でも、鈴を鳴らしてからネズミに電気ショックを与えると、ネズミはストレスを受けながらも、胃潰瘍の発症率が少なくなりる。

このネズミは、「鈴が鳴ったら電気ショックが来る」というように、ストレスが来るのを "予測できる状態" に置かれている。だから、鈴が鳴らない時は、安心していられる。

予測できるかできないかが、心理的ストレスの大きさに、影響を与えている。例えばネズミは、予測不能な不定期な間隔で餌を与えられることでも、ストレスホルモン(糖質コルチコイド)の分泌量が上がります。


コントロールできるかできないか

これに加え、もうひとつ、実験を行った。
電気ショックが来たら、それを止めるためのレバーを押すように、ネズミを訓練してみたのです。ネズミは、電気ショックがきた時、レバーを押せばショックを避けられることを学ぶ。

この、自分でどうにかできる(コントロールできる)、という感覚が、ストレスホルモンを下げてくれます。
(この実験は人間でも騒音を使って行っており、同じ結果が出ています)。


ストレス低減のための4つの要素

この2つの実験から、「予測できること」と「コントロールできること」で、ストレスは低減されることが分かった。

例えば歯医者さんで歯を削られているとき、あの削り音と居心地の悪さの中で、患者が歯科医に、
「あとどの位で終わりますか?」
と聞いたとして・・・。
その歯科医が、
「う~~ん、わかんないな、もうちょっとかな」
という回答をするのと、
「あと、5分、2回やったら終わりです」
という回答をするのとで、患者のストレス度合いが結構変わってくるという!


ストレス低減のために必要なのは以下の4つの要素:

  1. ストレス解消法を持つ
    (趣味・スポーツ・クッションパンチなど)

  2. サポートし合える仲間を持つ
    (毛づくろい仲間)

  3. 見通しをつける
    (予測可能)

  4. 主体的であれている
    (コントロール可能)


学習性無力感

ストレス低減のための4つの要素のすべてが欠けてしまったら、どうなるのか?生き物は、より大きなストレスを抱えてしまう。

それに加え「どんどん悪くなる」という思考をしがちな人は、さらにストレスを増やしてしまう(これは万人がまったく同じとうわけではなく、人によって違いもあるが、おおむねこういった傾向があるのだそう)。

  • ストレス解消法もない

  • 仲間もいない

  • 見通しもつかない

  • コントロールもできない

この状態がずっと続くと、生き物は鬱になる。そして鬱のネズミは、学ぶことができなくなってしまいました。ネズミは「何もできない」ということを、学んだのだ。これを英語では、Learned helplessness と言う。日本語では、「学習性無力感」と言うのだそうです。

長期間ストレスにさらされた状態にあると、「その状態から逃げようとすることさえも行わなくなる」。普通のネズミは、電気ショックがある部屋とない部屋に入れると、ない部屋の方へと逃げるけれど、学習性無力感を持ったネズミは、電気ショックがある部屋に、い続けてしまう。

自分が置かれた状態に対して、「どうすることもできない 」状態が長く続くと、モチベーションはどんどん下がり、シンプルなタスクでも「どうせ、無理・・・」となってしまう。


たまにちょっとチェックしてみる

自分の今の生活や、大切な誰かの生活が、どんな風なんだろうって、時々チェックしておきたい。

  1. ストレス解消法はあるかな

  2. サポートし合える仲間がいるかな

  3. 見通しをつけられているかな

  4. 主体的であれているかな

心理的ストレスには、「物の受け取り方(解釈の仕方)」も大きく影響してるだろうけど、それはまた、結構壮大なテーマになるから、別で取り組む課題としておいて。

最後に・・・、本のタイトルである「どうしてシマウマは胃潰瘍にならないのか?」の理由は、なんでだったのか、忘れてしまった(苦笑)。


続編

この記事の続編を書いたので、リンクを貼り付けておきます。


Reference

日本語でも本が出ているけど、とんでもない値段になっている。

英語版はこちらです。

この記事が参加している募集

リモートワークの日常

わたしの本棚

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?