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【地方住みの社会人大学院生】1年目ふりかえり

昨年4月から市ヶ谷の社会人大学院の修士課程に通い始め、いまちょうど1年目を終えたところなので、ふりかえりをしてみたいと思う。まずは金銭的なところを整理してみる。

お金について

大学院の2年間の学費は、以下の通り。
・入学金 27万円
・授業料 年間75万円
・教育充実費 年間13万5千円
    1年目総計 115万5千円
    2年目総計 85万5千円
    2年間総計 204万円

ちなみに私のいる法政大学院政策創造学科は教育訓練給付金の対象なので、2年間で最大112万円が支給されるという、社会人にはありがたい制度のある大学院だ。なので人によっては年間50万かからずに学ぶことができる。これが選んだ理由のひとつだった。

ところが、これは雇用保険に入っていることが条件で、私のようなフリーランス(経営者)は対象外。(そんなことも知らず、もらえるつもりで手続きの段になって知った私は相当なおばかさん)

さらに私の場合、住まいが福島市なので、学費のほかに二拠点に伴う出費があった。福島からの通学も考えたが、それで挫折する人もいたようで、腹を決めた。にしても仕事の関係で週に1回は福島に戻らなければならず、交通費も相当なものだ。しかしこれはシニア特権で、「大人の休日倶楽部」の3割引を使ったので通常より安く収まった。

・住居費(シェアハウス)4月〜1月 98万円(98000円×10ヶ月)
・交通費 新幹線往復@12000円×月4回)×10ヶ月 48万円
  総計 146万円

ということで、学費と二拠点費を会わせると1年目にかけたお金が約260万円。いやーキツい。でも2年目はだいぶ楽になる。
というのは、この1年、がんばって週3回授業を取って、卒業に必要な単位をほぼ取ってしまい、2年目は週1回のゼミを受講するのみとなった。授業は18時半から22時まで。これを週3回はほんと大変だったがなんとかこなした。なので春休み前にシェアハウスは解約。ご指導いただいている増渕敏之教授に相談し、2年目はズーム参加OKにしてもらった。コンテンツツーリズムの第一人者である増渕教授は自らも「学びなおし」で音楽業界からアカデミックの世界に転身した、いわば元祖リスキリングの大先輩である。学部生とは違う社会人の事情をよくご理解いただき、いつも応援してくださる。

なので2年目は住居費と交通費はかからず、基本、出費は2年目の授業料85万5000円のみとなる。なんのかんのと東京に行くので2年目も交通費はかかるが、とりあえずなしで考えると2年間にかかったお金の総額は350万円也。

350万。BMWのコンパクトタイプなら新車で買える金額。これだけのお金をかけて、自己満足だけでは済まされない。少なくとも私はそんな優雅な身分ではない。だったらBMW買った方がまだましだ。自らを教育「しなおし」したわけだから、かけた以上のリターン、つまり有形無形の教育効果を得てしかるべきだろう。ということで、次は「成果」を見ていきたい。

学び直しの成果 So Far(今のところ)

大学院修士課程は、自分の研究を修士論文という形にするのが最終目的である。これが一般的な学習講座とアカデミックの違うところだ。学習カリキュラムも中間発表など修士論文を書くためのマイルストーンが随所に組み込まれている。なので1年目は修論のための準備期間と位置づければ、そこだけを切り出すのは早計だろう。なにしろこれからが本番なのだ。

・・・という前提に立ちながらも、1年目の成果をみてみる。

結論から言うと、それはすごいものだった。明らかに、人生が変わった。もちろん好転である。思い切って大学院に来て良かったと心から思っている。2022年のお正月、突然のように思い立ち、即行動に移した。その自分を褒めてあげたい。「突然のように決めた」と思っていたが、実ははじめからそう運命づけられていたのかもしれない。

一番よかったことは、アカデミックなアプローチに触れたことだ。ものごとをマクロ、ミクロの両面で見る、クリティカルに見る、文献に当たり網羅的に見る、ロジカルに考えを組み立てる、考察する・・・そういったことは今までやったことがなかった。その観点で見れば、いかにこれまで感情的で、思いつきで、独断的だったかに気がつく。PCでいうとOSがアップグレードしたようなもので、階段をひとつ上った感がある。明らかにいろんな機会が増えてきたことでそれがわかる。

昨年暮れ、私が働いていた福島市のDMOの事務局長で実務研究家の吉田秀政氏(4月より四国の大学)にお声をかけていただき、同じ大学院の研究生大川朝子氏と3人の共同執筆で実務論文を書く機会をいただいた。あまりのハードさに自律神経をやられ目眩が止まらず、ほかの2人に迷惑をかけながらもなんとか仕上げた。大変だったが、修論に先駆けて1本論文を書いたことで、1年目にしてアカデミックなアプローチがなんなのか、体感することができたことは大きかった。

論文のテーマは、「持続可能な地域づくりのためのサーキュラーエコノミー実践研究」。昨年夏に吉田氏主導で実施した地域内循環エコシステム「ふくしまピーチホリデイ」がテーマである。私は情報発信分野を担当した。ここで初めて「サーキュラーエコノミー」について勉強することになり、その奥深さに魅了された。

それが、このnoteでも書いた、今年1月の「欧州サーキュラーエコノミー視察」につながっていく。もっと学びたいと思い、オランダのサーキュラーエコノミーをまとめた『サーキュラーエコノミー実践』の著者、安居昭博氏が主催する「オランダ視察」をFBで知り、参加しようと決めたのだ。

リサイクル会社の3代目の私の長男は、かなり前から実務的にサーキュラーエコノミーに関心があり、それをテーマにした「環境と人」というメディアを立ち上げていたが、そこに記事を書くから参加費負担してほしい、と交渉したところ、自分も行きたい、そして行くならフィンランドも、ということで、「フィンランドーオランダ視察旅行」になったのだ。

フィンランドは、それまでノーマークだったのだが、実際に行って、完全にノックアウトされてしまった。滞在はわずか3泊4日だったが、ピンとくるものがたくさんあり、日本に似ているところに着目した。フィンランドのサーキュラーエコノミーの研究は、日本で活かせると感じた。現地でのアポイントについては、大学院の先輩が紹介してくださり、本当にありがたかった。大学院に行っていなければ、まずこんな展開になることはなかった。

そして4月から、再びフィンランドを訪問することになった。今度は長期滞在だ。一つ前のポストにあるように、そのために、今の仕事を卒業した。

まずはサーキュラーエコノミーの「フィンランドモデル」について、現地で様々な取材を行い、実務に活かせるようにまとめたいと思う。帰国は7月初旬の予定だ。大学院のゼミはズームにて参加。このnoteで、今回の北欧長期滞在について発信していこうと思っている。

ちなみに、12月に書いた初論文は「地域活性学会」に投稿し、査読が通り、間もなく学会誌に発表になる。サーキュラーエコノミーの論文はすでにたくさん出ていて引用もさせていただいたが、吉田氏によれば、実務論文はこれが最初ということだ。増渕教授、法政のそのほかの先生方、そして吉田氏のご指導により、自分が本当に打ち込める研究テーマが見つかった。これから研究者として生きていくかどうかはまだわからないにしても、そのスタートラインに立たせてもらったことは感謝しかない。

学び直し、1年目の成果をまとめると「次の人生の出発点を見つけた」ということだろうか。BMW一台分が消費になるか、投資になるかは、これからの自分にかかっている。

というか、BMWなんてどうでもいい。費用対効果なんかナンセンスだ。もっともっと大きな、意味のあるものを見つけてしまったのだ。

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