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女子高生×ミニチュアハウス

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後藤葵はミニチュア作りが大好きな女子高生。 つらいときも、悲しいときも、ミニチュアを作っていれば、すべてを忘れられる。 そんな葵のミニチュアが注目を集めて、人生が大きく動き出す。…
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2024年5月の記事一覧

愛なんか、知らない。 第5章 ⑧再生の家

 おじいさんは家の中を覗き込んでいる。 「いやあ、細かい、細かい。教科書を束ねてあるのま…

凪
1か月前
3

愛なんか、知らない。 第5章 ⑦ゴミ屋敷の真実

「うっわ~、これはすごいな」  私は目の前に広がる光景に、ただただ圧倒されていた。  私の…

凪
1か月前
8

愛なんか、知らない。 第5章 ⑥どういうこと?

 夏休みが終わり、海老原さんに注文されたミニチュアハウスを何とか仕上げた。  失礼なおっ…

凪
1か月前
5

愛なんか、知らない。 第5章 ⑤ざわつく心

 その日は、お父さんと久しぶりに会うことになっていた。  お父さんは結弦君が生まれてから…

凪
1か月前
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愛なんか、知らない。 第5章 ④ミニチュアハウスの注文

「葵さん、ちょっと時間ある?」  老人ホームでのワークショップを終えて片付けていると、ス…

凪
1か月前
5

愛なんか、知らない。 第5章 ③ガクチカって何ですか?

「後藤さんって、インターンシップにはもう行ったの?」  しばらく、私は話しかけられたこと…

凪
1か月前
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愛なんか、知らない。 第5章 ②ミニチュア作家の日々

 お母さんが突然いなくなって1年半ぐらいになる。私は20歳を超えてしまった。  その間、一度も連絡はなかった。家の電話にも、お母さんのスマホにも。いつお母さんから連絡が来てもいいように、スマホもちゃんと充電してある。  それなのに連絡がないのは、もう二度と、家に戻ってくる気はないってことなのかな。私と暮らす気はないのかな。  お父さんから、お母さんがネットで話題になってるって聞いた時は驚いた。 「あいつ、尼さんになってるみたいだよ」 「は? 尼さん?? どういうこと???」

愛なんか、知らない。 第5章 再生の家 ①21歳、春。

 目の前に桜の花びらがハラハラと舞い落ちて来た。  私は反射的に片手でつかむ。ゆっくりと…

凪
1か月前
5

愛なんか、知らない。 第4章 ⑫19歳、冬。

 心さんとの二人暮らしは、おずおずとはじまった。 「おずおず」って言うのは、お互いに距離…

凪
1か月前
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愛なんか、知らない。 第4章 ⑪寄り添う気持ち

 けど、心さんから出たのは、意外な言葉だった。 「えと、後藤さんのところに今日行ってみて…

凪
1か月前
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愛なんか、知らない。 第4章 ⑩暖かな食卓

 私はひたすら戸惑っていた。  仏壇に挨拶してくれたし、なんか、悪い子じゃなさそうな気が…

凪
1か月前
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愛なんか、知らない。 第4章 ⑨はじめまして、同居人さん

「え? 何? 一人きりって、一人暮らし始めたの?」  純子さんは手を止めた。  その日は、…

凪
1か月前
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愛なんか、知らない。 第4章 ⑧からっぽの家

「えっと、えっと、じゃあ、どうすればいいの?」 「どうすればいいんだろうねえ。警察に捜索…

凪
1か月前
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愛なんか、知らない。 第4章 ⑦探さないで

 今年の夏休みは忙しかった。  井島さんにお願いされた教室をスタートしたり、老人ホームでのワークショップを毎月開くことになったり、注文のあったミニチュアハウスを作ったり。  佐倉さんに圭さんのことを聞いても、「こっちも連絡が取れない」としか返ってこなくて。心のどこかで圭さんのことが気になっていても、何もできないまま、目の前の仕事に没頭するしかなかった。  夏休みの終わりに、幼稚園の先生に贈るミニチュアハウスを完成させた。  幼稚園の教室を再現したミニチュア。親御さんたちに送