愛なんか、知らない。 第8章⑧やさしい時間
「それじゃ、葵ちゃん、一人で家にいるわけじゃないのね」
純子さんは心底ホッとしたような表情になる。
純子さんは精密検査をしても、結局どこにも問題は見つからなかったようで、一週間ぐらいで退院した。今は自宅で安静にしている。
「ハイ、一応は。でも、お母さん、帰って来ても何もしないで、家でゴロゴロしてますけど」
「それは困るわねえ。仕事は探してるのかしら」
純子さんはベッドから起き上がって、私と心と会話している。といっても、心はベッドから離れた位置に座って、ずっと爪をいじっ