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女子高生×ミニチュアハウス

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後藤葵はミニチュア作りが大好きな女子高生。 つらいときも、悲しいときも、ミニチュアを作っていれば、すべてを忘れられる。 そんな葵のミニチュアが注目を集めて、人生が大きく動き出す。…
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記事一覧

愛なんか、知らない。 最終章⑤ステップ・バイ・ステップ

 2回目のワークショップは一気に7人増えた。  1回目のワークショップを受けた子供たちが、あ…

凪
26分前
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愛なんか、知らない。 最終章④動きはじめた時計

 親御さんが迎えに来たり、そうではない子も「さよならー」と元気よく帰って行く。  お母さ…

凪
23時間前
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愛なんか、知らない。 最終章③こども食堂のワークショップ

 心にこども食堂のことを話すと、「いいんじゃない? 葵には向いてそう」と言ってくれた。 …

凪
1日前
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愛なんか、知らない。 最終章②愛の足跡

「ごめんなさい、お待たせしちゃって」  総白髪でぽっちゃりしたおばさんが、エプロンで手を…

凪
2日前
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愛なんか、知らない。 最終章 愛を知る家 ①哀しみの乗り越え方

 人生で、つらい思いをする回数って決められてないのかな。  もし決められてるなら、私はも…

凪
4日前
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愛なんか、知らない。 第8章⑨いつか、笑顔でさよならを。

 純子さんのお見舞いに行った翌日。  朝、庭で植木の水やりをしながら、純子さんの「新しい…

凪
4日前
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愛なんか、知らない。 第8章⑧やさしい時間

「それじゃ、葵ちゃん、一人で家にいるわけじゃないのね」  純子さんは心底ホッとしたような表情になる。  純子さんは精密検査をしても、結局どこにも問題は見つからなかったようで、一週間ぐらいで退院した。今は自宅で安静にしている。 「ハイ、一応は。でも、お母さん、帰って来ても何もしないで、家でゴロゴロしてますけど」 「それは困るわねえ。仕事は探してるのかしら」  純子さんはベッドから起き上がって、私と心と会話している。といっても、心はベッドから離れた位置に座って、ずっと爪をいじっ

愛なんか、知らない。 第8章⑦「ただいま」も言わずに。

 病院から帰って来た時は、既に9時を回っていた。  真っ暗な家の中。出かける時は一か所だけ…

凪
7日前
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愛なんか、知らない。 第8章⑥予期せぬ知らせ

 優がアメリカに帰ってしばらく経ったころ、お父さんから「今月、ボーナスが出たから、お金を…

凪
7日前
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愛なんか、知らない。 第8章⑤さよなら、また会う日まで

 優は立ち止まって、私の顔を見た。 「葵のミニチュアはすごいんだから。人を感動させる力を…

凪
8日前
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愛なんか、知らない。 第8章④思いがけない訪問者

 やっぱ、ミニチュアの仕事、やめようかな。教室もやめよっか。人数も減っちゃうし。  そん…

凪
9日前
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愛なんか、知らない。 第8章③さよならの連続

 心が去って一週間後、井島さんが家を訪ねて来た。  今後のことで、会って相談したいって言…

凪
11日前
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愛なんか、知らない。 第8章②失った色、失った光

 リビングのソファに腰を下ろす。  ああ。また一人になっちゃった。しばらく涙が流れるに任…

凪
11日前
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愛なんか、知らない。 第8章 旅立ちの家 ①春、旅立ちの家

 今って、何月だっけ。  私は縁側に座って庭をぼんやり眺めていた。  庭の木は青々と茂っていて、花壇では心が育てている野菜がすくすく育っている。頬をなでる風はやわらかだ。  リビングの壁にかけてあるカレンダーを見たら、5月になっている。  そっか。  もう、1年半ぐらいになるんだ……。 「葵」  背後から心が声をかける。 「迎えが来たから、行かなきゃ」 「そっか」  心は箱を抱えている。その中にあるのは、きっと。 「ごめん、半分しかできなくて」 「ううん、僕も仕事で忙しくな