見出し画像

福島に行った3頭のぼんの話。その3

競りの開始は午前10時
開始と同時に次々と牛が競り落とされてゆきます
もんぼんとしずぼんも、自動で動くレールに繋がれ、競りの会場へとだんだん近づいてゆきます

キョロキョロと、落ち着かない2頭
その後ろを付いていく私たちも、やはり全く落ち着きません

あっという間に順番が来て、私たちは競り台へ
牛の名号や血統
生年月日
体重
病歴等が、電光掲示板に映し出され、紹介されます
それを見ていただいてから競りはスタート

購買希望者は、手に持っているスイッチを押します
押し続けると、電光掲示板に表示された購買金額が上がっていくので、自分の購買希望金額まで到達したら、スイッチから手を離します

売り主の私たちも、同じくスイッチを使い、販売希望金額に到達したら手を離します

売り主の販売希望金額を、購買希望金額が上回れば売買成立
あっという間です

最初にしずぼんが成立
そしてもんぼんも成立
なんと、同じ購買者様が競り落としてくださいました
北海道内で大規模な牧場を経営されている方です

「良かった、家からもここからも近いよ。でも気をつけて行くんだよ。」
お別れはちょっぴり辛かったけど、これからも2頭一緒にいられる
しかも、道内のすぐ近くにいるという安心感もありました

購買者様の家畜車に無事に乗せられるのを見届けて、2頭に向かって手を降りましたが、
近い距離ということがあり、いつもより少しだけ気楽にサヨナラをしました
でも、家畜車から私たちを見下ろす2頭は、なんだかとても寂しげに見えました



そうして夕方帰宅

2頭がいなくなった牛舎をそうっと覗いてみます
もういるはずもないのに毎回そうしてしまいます
やはりガランとしていました
2頭分なので余計にかなと思いつつ、胸の奥がつんっとしました

でも、感傷に浸ってばかりもいられません
次はゆきぼんの番です
市場に出場するのは3月2日
1ヶ月なんてあっという間でした
ゆきぼんは、優しいこゆきママに性格もソックリで、雄牛のくせに優しい、どちらかといえばおとなしい仔
新しい場所での集団生活に慣れるのだろうかと心配でした

いつもどおりのお出かけの日
いつもどおりの朝を迎え、ゆきぼんもおいしい餌をたっぷり食べて
家畜車にも拍子抜けするほどすんなりと乗り
出かけていきました

1頭での出場

市場の雰囲気にものまれることなく
堂々として落ち着いた雰囲気のゆきぼん

競り落としてくださったのは
福島県の牧場を経営されている方でした
「福島県か…陸続きじゃないけど近い近い!ゆきぼん 気をつけて行くんだよ。」

購買者様の番号を付けられたゆきぼんは
「もうボクはよそのうちの仔になったんだからほうっておいてよ。」みたいな素っ気ない態度
「私たちの姿が見えなくなってビービー鳴かれるよりはいいか…。」なんて、思ったよりしっかりした態度のゆきぼんに安心して見送りました
福島県へ…気を付けて行くんだよ!元気でね!



でも、まさかそのあと10日もしないうちに
あの大惨事が起こるなんて思ってもみませんでした