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提灯に釣鐘

ライフスタイルと言う言葉があるが、消費記号の組み合わせが奇抜で唖然とさせられることがある。先日、駅前の格安スーパーの前でAMGがハザードを出して妙な位置で停車していた。路線バスも通行人も迷惑そうに近くを通り過ぎている。

顰蹙を買いつつ停めるスーパーカー格安スーパーのタイムセール

AMGを駆って堂々乗りつけてファミレスで喰うおすすめランチ

グッチ・ヴィトン・シャネル・ブルガリ・ティファニーに囲まれ暮らす六畳一間

ここだけの話ですよと煽てられ人に言われぬM資金詐欺

他人のライフスタイルなど別にどうでもよいのだが、風景として面白いと思うだけのことだ。「提灯に釣鐘」というのは、少なくとも自分の身の周りでは、あまり耳にすることのない諺だが、忠臣蔵の台詞に「提灯に釣鐘、つり合わぬは不縁のもと」というのがあるらしく、落語『除夜の雪』のサゲに使われている。この噺は生で聴いたことはないのだが、ネットの動画で米朝が口演しているのを好きでよく聴いている。切ない噺だが、人情の機微が巧みに表現されていると思う。この噺を題材に詠んだ歌を12月14日のページに記している。

除夜の雪鐘楼の屋根膨らまし鐘の音呑み込む堪忍袋
(添削後:除夜の雪鐘楼の屋根膨らまし鐘の音呑み込むいとも穏し)

物事は取りよう、とはわかってはいるのだが、凡夫の暮らしにはどうしたって捌け口のない大小様々な不平不満が溜まるものである。年の暮れ、煩悩の数を打ち出すとされる除夜の鐘の鐘楼の屋根に雪が厚く積もっているのを目の当たりにすれば、やはり私にはそれが堪忍袋に見えると思う。「穏し」なんていうのは綺麗事にすぎると思うし、綺麗事を並べるのが短歌なら、そんなもん詠んでどうする、とも思う。


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