ヘアロス母のお話 その1
【ある日、実家に帰ったら高齢の母が"落武者"に…】
ショック!実母の髪があんなことになっていたなんて。母の髪は頭頂部を中心に肌がスケスケで、黒い海苔が丸い岩に所々へばりついている感じ?白髪がほとんどないので白い地肌とのコントラストで薄毛が目立っている。
それを隠すために、比較的多めにある後頭部の毛髪を前に持ってきてピンで留め、薄毛を隠しているつもりだろうけど、それが不自然なのでいつも外出には帽子が欠かせない。
ある日の夕方、実家でのんびりしていたら、風呂から上がった母は、ピンを外して髪を垂らしていた。それはまるで戦国の「落武者」のよう。私は本当にショックを受け、自分もこうなるのではないかと暗澹たる思いがした。
髪質に若干の違いはあるが、体質などは似ているし、髪の毛も細いのでいずれは…。
不安を振り払うように首をブンブン!いや、母のようにはならないぞ。いずれなったとしても、その時を少しでも遅らせるように準備しなければ…!
母は現在、頭髪の発毛力に期待することはすっかり諦め、部屋でもニット帽をかぶっている。私が以前プレゼントした、ガン患者が利用するようなおしゃれな屋内用帽子だ。
彼女は後頭部の髪を切らない。薄毛になったら、むしろ髪を短くしてふんわりと髪を立たせた方がカモフラージュになってよいと思うのだが。以前、それを提案したものの、頑なに否定された。
そんな彼女も「落武者」なる前は発毛ヘアサロン、自家製育毛剤など薄毛の進行に抗ってきた。むろん、ウィッグも持っているが「ピンが痛い」とかで今はほとんど使用していない。
「ピンで留めないウィッグ」はどうかと思ったが、彼女の毛量だとしっかり留まらないと思われる。ウィッグは難しいし、金額も相当だ。娘としても何かしてあげたいとは思うが、定期的に渡しているおこづかい(今まで育ててくれたお返しとして)も家電等に使っているらしく、美容には回っていない。結局、私は医療用帽子をプレゼントするしかなかった。
いつだったか、彼女をAGAクリニックに連れていこうとしたが、これまた頑固に断られてしまった。
母は今年86歳。今度は何をプレゼントしようかな…。
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