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ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。2月の読書

 平穏死ってなに? という立ち位置だったのはわずか1年前。去年の12月は税務署までよっこらしょ、と言う母を連れて、確定申告に行ったものだ。その母が一年間に五度の骨折し重篤な容態となり、先月は介護施設から断わられ病院は退院迫ってくる、という絶体絶命ポイントだった。転院先決まらんかったらどうするの?自宅に引き取り看るの?それとも私が実家に戻るの?高額病院で座敷牢みたいに閉じ込められるの?あぁどうすりゃいいの?! 状態だった。
 悩みの沼にはまっているとき、友人が貸してくれた町医者・長尾先生の一冊「平穏死」10の条件。患者家族の心がまえ、医者との付き合い方の面で参考になり、自分の心が落ち着きを取り戻すことができた、感謝の本である。

 辻村深月のミステリー「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」は予想を覆す展開にドキドキしながら読んだ。第一部では主人公は子供を亡くしたばかりのライターが殺人容疑者・元級友のことを案じて探すのだが、合コン、社内不倫、妊娠、結婚式招待…ちょっと田舎の女の子たちを取り囲む、仲良さそうで実はライバル的逸話がところどころ痛かった。産む、産まない、産みたかった、産んでほしい、と子にまつわる女性特有の上がったり下がったりの気持ちが描写され、次第にその核心は母と娘の親子関係に迫っていく。母を憎んでいるのか?母から逃げたかったのか?それとも母に許してほしかったのか?
 一方、第二部で明かされるのは失踪中の容疑者の隠し事だ。読者がなんだか状況がおかしいと気づくころ、主人公はこうつぶやく…

「わたし、何にも持っていない」 

わびしさ、切なさがカサブタをはがすように、痛かった。

 レイ・ブラッドベリの翻訳本「緑の影、白い鯨」は4分の一読んだところで、挫折してしまった。アイルランドの情景はいいのだが、登場するのはほぼ男性ばかり、怒ったり、酔っぱらったり、だましたり、とくだらない事でいつも衝突するのだ。ほんと男ってお馬鹿ちゃん、と突き放そうとすると、そこから先に進めなくなった。今はきっと”その時”ではないんだろう。大丈夫、世の中とは計算通りにいかないことだらけなんだから。

 「愛しのパクチー」はいま読み始めたばかり。香りが強く、個性が強く、しかも一度ハマったら虜にならずににいられない、パクチー・コリアンダーこと香菜。大好きな野菜だから、読み進めるのが楽しくって仕方ない。


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