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本屋と能力〜 長い長い殺人 ざんねんないきもの事典

 幼い頃から本屋さんに憧れていた。「大きくなったら何になりたい?」と聞かれると「本屋さん」ときっぱり答える子供だった。本屋さんにはならなかった私だが、ここ十年間、密かに隠れた能力があることに気づいた。

本屋を見つけるのが上手いのだ。

 そんなもの大したことない、と言われてしまえばそれまでだが、はじめての町で、散策中にふと本屋さんを発見してしまうのである。AmazonだのTSUTAYAだのネットやメディア複合店に蹴落とされ、町の本屋の数は激変している昨今、なんだか導かれるように本屋さんに出会い、不思議な縁を感じるのである。

 大阪の北摂住宅地・池田市に友を訪ねた。
素敵な古民家で中華ごはんに誘われており、緊急事態もおさまりつつある秋のはじめ、おんなふたりでゆっくりおしゃべりの午後だった。
 ごはんあとに店主さんから、この辺りの地図や新しい個人店主さんの話を聞き、ちまちまと細い路地を抜けて行くと、そこにあった、古本屋が。

 えぇー! こんなとこに!

表の黒板には毎日欠かさず「今日の一句」が書かれている


 ノキサシの洗濯物のかげにかくれて見えない看板。長屋の一般民家と変わらない佇まい。近隣在住の友は驚愕し、知らなかった、来たことないわ、と恐るおそる入ってみる。
 広さは10畳ぐらいだろうか、書架に文庫本や単行本がきちんとおさまっている。手作り?の旅本やノート風の可愛い本なども有り、ちょうどその台湾本を自主出版した若い娘さんが委託本の打合せに来ていた。私達はそれぞれ2冊購入した。文庫本にかぶせてくれたオリジナルのカバーも愛らしい。店主さん素敵すぎる。
まがり書房

民家のお玄関から入るとそこは…
旅book:見ているだけで楽しい


さて、購入したのはこの二冊。

長い長い殺人(宮部みゆき) 

 宮部氏初期作品で、井上ひさし氏「十二人の手紙」に触発され、各人の財布に殺人ストーリーを語らせる画期的なもの。今年初めに「十二人の手紙」を読んでその視点に、目を見張った私は、筋を追いながらワクワクどきどき堪能した。

ざんねんないきもの事典(今泉忠明監修)

ざんねんないきものとは一生けんめいなのに、
どこかざんねんないきものたちのことである。

 子どもにも読みやすいように平易な言葉とイラストで書かれており、分類もわかりやすく学べるうえに、ページの隅っこにはぱらぱら漫画まで描かれており、中身ぎっしり盛りだくさん、まさに手元に置いておきたくなる事典だ。数多くのエピソードの中、もっとも残念、と私が感じたのはこれ。

はちみつはじつは
ミツバチのゲロ  
       第四章 残念な能力

 ううむ。せっかくの個性というか、際立つ才能なのに、残念とよばれてしまう、その不憫さ。
私に備わった”本屋発見能力”もじつは残念な才能のひとつなのだろうか。電子ブック派から、1ミリも役に立たないと見下されそう、可哀想な才能に間違いない。

#古本屋 #隠れた才能 #本屋めぐり #ざんねんないきもの  

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