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光ったのは竹か、かぐや姫か

「今は昔、竹取の翁というものありけり」
このフレーズで始まる竹取物語は、高校の古典の授業で触れたことがある人も多いのではないでしょうか。
「もう忘れちゃったよ」という方のために、竹取物語のあらすじをざっくり紹介します。

おじいさんが竹薮で光る竹を切ると、かぐや姫が出てきます。美人に育ったかぐや姫は求婚者をことごとく断ります。帝に求婚されるも嫌がり続けました。ある日かぐや姫は月からお迎えが来るといい、地球のことをすべて忘れて帰っていきました。

本当はもっといろんな要素があるのですが、今回注目したのは「光る竹」です。なぜ竹が光ったのかです。多くの人は光った竹の種類を特定しようとしていますが、私が言いたいのは「光ったのはかぐや姫ではないか」ということです。先行論文の発見がなかったので、ほとんどが私の推論になっていることはご了承ください。

姫が光った証拠①名前

竹取物語の姫の名前は「かぐや姫」です。この名前は御室戸斎部の秋田(みむろどいんべのあきた)氏によって名付けられました。原文では「なよ竹のかぐや姫」と記されています。この名前からして光っているのは姫ではないかと推測できます。
美しさの例えで「輝くばかりの美しさ」とありますが、現代の感覚を除いて原文に沿って考えていきます。かぐや姫の命名シーンの前にこう書かれています。

この児の容貌のけうらなること世になく屋の内は暗きところなく光満ちたり

現代語にしますと「この子の容貌の美しいことはこの世に他になく、部屋の中の暗いところはないほど、光が満ちあふれている」となります。
古民家に行ってみるとわかるのですが、日本の昔の家はとても暗いです。明かりは太陽とろうそくのみのため、「屋の内は暗きところなく」というのは、昼間でも難しい状態です。そのためかぐや姫自身が輝いていたと考えられます。

姫が光った証拠②竹

竹から出てきたものは、かぐや姫だけではありません。翁はかぐや姫発見後も竹藪に通って、黄金を竹の中から発見しています。その描写ではこうあります。

この子を見つけて後に、竹を取るに節を隔てて、よごとに黄金ある竹をみつくること重なりぬ。

ここでは竹が光ったとは書かれていません。
原文に沿って考えると、竹が光ったのはかぐや姫がいた時のみです。なので竹の中に何かが入った時に竹が光るとは考えにくいのではないでしょうか。

姫が光った証拠③きと影になりぬ

私は、かぐや姫は作中で光っている描写がもう一つあると考えています。それは帝がかぐや姫の部屋に無理に入り、拒絶されるシーンです。原文ではこうあります。

御輿を寄せ給ふに、このかぐや姫きと影になりぬ。はかなく口惜しと思して、げにただ人にあらざりけりと思して、「さらば御供には率て行かじ、もとの御かたちとなり給ひね。それを見てだに帰りなむ」と仰せらるれば、かぐや姫、もとのかたちになりぬ。

現代語にするとこうなります。
「御輿をお寄せになると、このかぐや姫は急に影になった。むなしく残念にお思いになって、本当に普通の人ではないとお思いになって、ならばともに連れてはいかない。元の姿におなりください。それだけ見て帰りましょう。とおっしゃったら、かぐや姫は元の姿になりました」
ここで問題なのが、「きと影になりぬ」です。教科書通りに訳すとそのまま「急に影になった」となります。意味が分かるように、「影のように実態が消えてしまった」と言われておりますが、これは違うのではないかと思います。というのも、古語の「影」には「光」の意味もあるからです。

姫が光った証拠④月のお迎え

かかるほどに、宵うち過ぎて、子の時ばかりに、家のあかり、昼の明かさにも過ぎて光たり。望月の明かさを十合はせたるばかりにて、ある人の毛の穴さへ見ゆるほどなり。

これはかぐや姫のお迎えが月から来た時の描写です。簡単に訳すと「夜中の12時なのに昼よりも明るく人の毛穴が見えるくらい明るくなった」とあります。なぜこんなにも眩しくなったのでしょうか。これは月の人がもともと発光する体を持っているからと考えられる。

かぐや姫が光った場合

帝を拒絶した時にかぐや姫が光ったと想定すると、帝は光ったかぐや姫を見たら普通の人ではないとがっかりするのではないだろうか。電球のような明かりではなく、さらに光っていると考えたらどうでしょうか。まぶしくて見れなくなって、もとに戻ってくれというのではないでしょうか。影のように消えたわけではなく、反対に光ったとしても同じような反応になると考えられます。ここでかぐや姫が光ることで、最初の竹の中で光っていた時の伏線回収ができていると考えられます。

かぐや姫が光った理由

かぐや姫は拒絶をすると発光するからだなのではないでしょうか。かぐや姫が光ったシーンは、冒頭の竹の中と帝を拒否した二つだけです。そこで共通していることを考えてみましょう。

かぐや姫は、月で罪を犯した罰として地球に来ました。一種の島流しです。かぐや姫は地球に来たくて来たわけではありません。そのため竹の中で「嫌だ。地球にいたくない」と強く拒絶をしていたと考えられます。
その思いを持っていたため、幼少期の体はずっと光っていたのではないでしょうか。しかし地球で過ごしているうちに情がわいて、徐々に光は抑えられていたのかもしれません。

そして二回目のシーンでは、帝が覗いたとき、すでにかぐや姫は光っていました。翁から帝が来ると聞かされていたのではないでしょうか。いやいやその部屋にいたのに、帝の行動でかぐや姫は強い拒絶をしました。そしてさらに強く発光したと考えられます。この二つのシーンから、かぐや姫は強い拒絶を行うと体が発光すると考えられます。
そう考えると月からのお迎えも嫌々来ていたのかもしれません。

これはあくまで私の推論でしかないので、「こんな可能性もあるな」と楽しんでもらえると嬉しいです。ただ、かぐや姫が光る月の民だった方が、竹を光らせるより面白そうですよね。





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