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いちごパンツで走りぬけたあの日々

小学生の時、私は友達のちえちゃん(仮名)のお家に毎日入り浸っていた。

ちえちゃんの家は、ちえちゃんのゲーム部屋が家の裏手にある。部屋の大きい窓から玄関を介さなくとも直接彼女の部屋に入れる気軽さが、小学生の友達の間では知れ渡っており、みんなのたまり場になっていた。

ちえちゃんはかなりのゲーマーだった。
ちえちゃんのお母さんはちえちゃんに輪をかけたゲーマーで、ドラクエなどは必ず発売日に購入して、いつも神がかり的な早さでクリアしていた。

私はちえちゃんにもちえちゃんのお母さんにもすごく憧れていた。
ちえちゃん家族の遊ぶゲームは多岐に渡っていた。

ドラクエやFF、クロノトリガーなどのRPG系。
グラディウス、パロディウスなどのシューティング系。
くにお君やストⅡなどのバトル系。
カービーやマリオ、ゼルダの伝説、ポケモンなどの任天堂系。
ぷよぷよやテトリスなどのパズル系。
桃太郎電鉄、ボンバーマンなどのファミリー系。

私はそこでゲームの魅力にどっぷりとはまってしまった。

その数ある出会ったゲームの1つに「超魔界村」というゲームがあった。
魔界村はシリーズ化しているが、私が遊んだのはスーパーファミコンのやつである。

このゲームは簡単に説明すると、カプコン制作の横スクロールアクションゲームで、ある平和な王国の騎士・アーサーが、魔王にさらわれた恋人であるプリンセスを救うべく魔界へ乗り込むというストーリーで構成されている。

鎧の戦士アーサーが、お墓や幽霊船にいるゾンビやモンスターたちを武器を使って倒せば無事クリアという訳である。


ここまで何だかつらつらと書いてきたが、そんなことはどうでもいい。

私がこのゲームで1番気になったことは

防御の要である鎧が貧弱すぎることである。

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普段はこんなゴツゴツとした鎧を身にまとっているが(真ん中にいるおにいさんだかおじさんだかが主人公アーサーである)

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敵にちょっと触れただけで「パリーン!」という音とともに、あられもないぱんつ姿になってしまう。

はあ、ナニコレ!?鎧弱すぎじゃね?

私は横でのんびりと「あさりちゃん」を読んでいるちえちゃんに、ややぷんぷんと腹をたてながら同意を求めた。

ちえちゃんは笑いながら

「このぱんつはよく見るといちごのぱんつらしいよ」

とさらにどうでもいい情報をかぶせてきた。

「鎧」をうたっているのに、この貧弱さはどうしたんだろう?しかも鎧をどんなにパワーアップさせて金色のテカテカした重厚な感じのやつを身にまとっていても1回触れただけで「パリーン」である。
どうした鎧!!おまえはそれでも鎧か!そんなキューティーハニーばりなリアクションはアーサーに求めていないんだ、私は。

私はむきになって何回もいちごぱんつ姿になりながら、墓場や、幽霊船や、氷の城や(寒いやろ)、灼熱の溶岩がある場所(熱いがな)を駆け巡ったが、とうとうゲームをクリアすることは叶わなかった。お察しの通り、このゲームは難易度が高めである。


・・・あれから数十年。


ある日、私は夫と居間でごろごろしながらさまぁ〜ずの番組を見ていた。(夫はさまぁ〜ずの番組だけはいつも楽しみにしている)

その時のさまぁ〜ずは、まさに私が過去に苦戦していたあの「超魔界村」をクリアするという企画に挑んでいた。夫はくすくすと笑いながら「全然できないもんだね」と三村さんのゲームプレイを笑っていた。

私は「これは案外難しいものなんだ」と説明しながら訴えかけた。夫はいきなり私が熱量MAXでゲームの事を語り始めたので、驚いたかもしれない。

さっそく夫と2人でプレイする。(うちはまだスーパーファミコンが現役で稼働している家庭である。)

夫は1面のボスにまでもたどり着けなかった。やってみて難しさを実感したようだった。あきっぽい彼は「もういいや」と途中でゲームを中断した。

私は懐かしさもあったのと、夫にいいところを見せたいがために(冷静に考えるといいところなのかは疑問なのだが)久しぶりにプレイした。

やっぱり子どもの頃に進んだところまでしか、クリアすることはできなかった。気を抜いたらすぐ「パリーン」といちごぱんつだ。

くやしい。どうしたらぱんつにならずにボスを倒せるのか・・・。

私はその日から研究を続けた。

まず会社の同僚のさわやかパパさんPTに悩みを相談した。彼はいつも私のゲームオタクな話に乗っかってくれる気のいいやつである。彼はやっかいなやつの攻略法について教えてくれた。(下の画面のこいつである)

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次にやったのはyotubeを視聴することだ。
検索するとyoutubeで攻略方法を見せてくれる人が案外多く存在していた。昔はこんなコンテンツはなかったので、便利さに感謝しながらも今のゲームユーザーにちょびっとうらやましさを感じた。

私はその動画を見ながら家事などの隙間時間を利用し、日々できる時間で攻略に励んだ。

そのかいあってか、とうとうボスまでたどり着き、ボスをやっつけることができた。

やった~!とうとうクリアしたよ!ちえちゃん!

これでいちごぱんつの日々も卒業だね!

感無量である。私はよっぽどちえちゃんに連絡しようかと思った。「人間は何だってやればできるんだな」と自分自身に感動していた。

ところがである。

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肝心の助けるべきプリンセスは出てきたものの、妖精の腕輪だかなんだかがないとボスは倒せないので「もう1回最初からやりなおして腕輪を探してこい」と言い始めた。

は?

また最初から?

・・・でも思い起こせば・・ちえちゃんのお母さんがそんな事を言っていた気がする・・・。私は数十年前の記憶を手繰り寄せながら、その場にコントローラーを投げ捨て、うつぶせになって泣きたくなった。

通りがかった息子が

「おかあちゃんがんばれ」

とじゃがりこを食べながら一言言い残して消えていった。


そんな訳で、これはちょうど一年前くらいの出来事であったが、私は再びいちごぱんつの戦士と、魔界村を行脚する日々に追われていたのである。

おしまい。

※緒方さん、とうとう約束の品(?)書きましたよ。

※2周目のボスまで行ったのですが、腕輪の射程範囲が短すぎていまだにクリアしていません。良い攻略方法を伝授してくれる方を募集しています。(特にゆうゆうさんに期待)


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