ありのままの姿で
「ありの〜ままで〜・・よ!」
「どうしたんですか?」と私は問う。
デイケアの利用者さんを今日もリハビリにお誘いしに行った。
誘おうとしていた方と一緒に話していた女性が、急に私に振り向いて笑顔でこう言った。
私は少し驚きながら尋ねた。
「アナと雪の女王を知ってるんですか?」
「知ってるよ。もう私も78歳になるのよ。」
「私はいろいろと思うのよ。」
話を聞いた。
「なんかね。コロナになっちゃってさあ。いろいろと思うのよ。私ももうあと何年生きられるのかなぁなんてさ。」
「糖尿病で足を切っちゃったでしょ?こんなみっともない姿で同窓会なんて出られないって思ってたんだよね。」
「でも、コロナで人に会えなくなって私なりに考えたんだよ。」
「だからありの〜ままで〜よ!」
「私はもし次の同窓会があったら、この姿でも行こうと思ってるの。」
「だってこんな年だから、みんな何かしら欠陥品みたいなもんでしょ?」
「そんなこと気にしてちゃもったいないと思って。だったらみんなに会いたいから車椅子でも何でも行こうと思ってるの。」
彼女の決意を聞いて私は心の底から応援したくなった。
話している彼女は軽やかで、飛んでいってしまいそうだった。
エルサも押しのけて、車椅子で氷の城を走り回りそうなパワーが感じられた。寒い海だって渡れるかもしれない。
今日は、彼女が片脚で新しい世界へ飛び出そうとしている第一歩を見届けた。
その横で私が誘おうとしていた利用者さんは、彼女の決意を聞いて何を感じただろうか。
彼は怪我をして、体が不自由になってから、近所の人たちに見られることを恐れ、カーテンをしめて家の中でひっそりと暮らしている。当然同窓会なんて行かないし、交流もほとんど断っている。
どんな心理状態だって前を向けなくたってその人であるし、その人の思いは尊重すべきで、優劣なんかつけられない。
私はエルサになれる彼女も、閉じこもっている彼も尊敬している。
障害者が優等生にならなくたっていいと思う。
私だって優等生になんかなれない。
ただ、チャレンジする人のパワーは見ているまわりの人たちにもお裾分けができるような気がしている。
お裾分けの効果がどれくらいあるのか見届けていきたいし、次の誰かがアクションを起こした時に、みんなで応援できるような関係性をお互いに築いていけたらよいなぁと思った。
こういう関係性というか、集団の力は、訪問リハビリテーションの中で関わることだけでは体験できない事だと思う。
デイケアに関われる残りわずかな時間で、今までのお礼の気持ちを含めて自分が最後にできることを考えていきたい。
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