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Émile / GALS の深読み

GALSのÉmile(エミール)という曲の歌詞について、暗喩が多かったり聞き慣れない単語が多かったりして理解が難しかったので、自分なりに解釈したり深読みしたりしてみました。共有したり備忘したりするためにここにまとめたい。
※あくまで僕なりの解釈であって、これが必ずしも正解とは思ってません。それぞれの受け取り手が自由に解釈していいと思います。よく分からないな~って人の参考になれば!自分の気に入るところだけ抜き出して参考にしてもらっても構いませんし。

楽曲(サブスク)はこちら。

歌詞はこちら。

まず、タイトルのエミールですが、本来は教育論(教育のための本)のタイトルであり、その本に登場する少年の名前です。この曲においては、擬人化した教科書(人はこう生きるべき)みたいなイメージで良いと思っていて。
この曲は「人はこう生きるべき」と教えてくれる人(=エミール君)と主人公はどう向き合っていくのか?といったお話だと思っています。そんなイメージで、それでは歌詞の頭から。

あの朝焼けスペクトル嘘でも
この際もうどうでもよくて
世界はどうせ美しいから
綺麗にさよなら

Émile / GALS

ここだと「スペクトル」というのは理系の人じゃないとあまり聞かない単語かもですね。ここでは「風景」「色合い」みたいな意味で捉えればいいかと。前後含めると「あの朝焼けの綺麗な見た目が見せかけであってもかまわない」のようなことになるでしょうか。じゃあその朝焼けってなんなの?というと、外の景色で、次の段落の「外を眺めてたら」の外と同じかと思います。つまり自分から見える周囲(の人々)が嘘でもそうじゃなくても構わなくて…。
最後の綺麗というのは「綺麗な生き方」のことかと思っています。つまり、綺麗な生き方(一般的にこう生きるべきみたいな、常識みたいなもの)にさよならして、自分なりの生き方をしていくゾって決意ですね。

外を眺めてたら
明日がすぐにきてる
満たされない今日から
自動で出る拍手
一瞬で過ぎ去ってく
ゆっくり探している

Émile / GALS

外を眺めてたらの「外」は、単におうちの外ってだけの意味じゃなくて、自分の競争相手(ライバルたち)の隠喩だと思います。この次の段落の歌詞で出てきますが「どれくらい離れてる 距離ばっか測って」という歌詞がありますが、そういう自分より先を行っている人たち。これを外と表現しているんじゃないでしょうか。
で、次に分かりにくいのは「自動で出る拍手」ですけれど、これは、そういう先を行く競争相手(ライバルたち)に対して、もう勝負することをやめて傍観者になってしまっている現状を表現しているんじゃないかと思っています。拍手するのは観客ですよね。演者や競技者ではなくて、それを見てる人たち。そうなってしまってる現状を示唆している。
つまり、この段落では「まわりの先ゆくライバルたちを眺めてたら、あっという間に時間が経っている。そして自分はそれを拍手して見送っているだけ。自分はどう生きたらいいんだろうか…。」というような主人公の悩んでいる情景を表しているんだと思います。
(書きやすさから一口にライバルたちと書いてしまいましたが、クラスメートや兄弟、友人、同僚、同期、同業他社、スポーツやってる人ならまさにライバル選手など、人によって色々あると思います。あるいはなんとなく社会から求められている、〇〇らしさ。学生らしさ、女らしさ、こうあるべきみたいなものとか。それらをひっくるめて外って言ってるのかと。そういう「外」についていけてない現状、を示してるんだと思います)

どれくらい離れてる
距離ばっか測って
いい子にしてたから
あなたに出会えたの?
未完成な運命だから
ずっと優しくしてね

Émile / GALS

そんな前段を受けて、ついに”エミール君”と出会うのがここの描写です。出会った”エミール君”に運命を導いてもらいたいという願望もあるように見えますね。

目を閉じていなさい
耳を塞ぎなさい
ほんとを教えて
ちらばった綺麗事
輝いて見えたけどもういらない

Émile / GALS

そんな出会った”エミール君”の教えは一見するとわかりやすくて「〇〇しなさい、そうすれば幸せになれるよ」みたいな綺麗事で、心惹かれるものがあるんだけれど、主人公はそれにとらわれず「それは本当なの?そんなものもういらない」と決別している、というのがここの描写ですね。

そんないい加減に愛さないでね
正しいとかなんてわかんないけど
私の中入るあなたの残像が離れてく
曇り空の隙間を覗いて
虹の塗り絵好きな色描いて
はみ出した極彩色の
ハローユートピア
バイバイまたねエミール

Émile / GALS

そして1番サビです。子どもの頃、両親や先生など人生の先輩から「あーしろ、こーしろ。そうすれば幸せになれるから。お前のためを思って言っているんだ」みたいなことを言われた人も多いと思います。でもそれって本当に色んな可能性を考えて、それぞれの子どもの立場になって本気で考えて言っているか怪しいものです。だから子どもも反発するんだと思うんですよね。そういうものが、ここで言う「いい加減な愛」だと思います。愛は愛だけど、ちょっといい加減じゃない?みたいな。
で、主人公はそれに反発して、「正しいかまでは分からないけれど、そういう残像(エミール君の教え)から離れて生きていく」ことを選ぶんですよね。(1~3行目)
そういう色んな困難や鬱屈した思いを「曇り空」と比喩していて、その隙間から抜け出して、自分の生きたいように生きていく様を「好きな色」や「極彩色」と表現しているんだと思います。
ユートピアというのも聞き慣れない単語かもしれませんね。直訳すると理想郷ですが、ここでは自分の思い描く理想の状態や目標みたいなイメージ。将来の夢、と言ってもいいかもしれません。(このユートピア=理想郷はキーワードなので覚えておいて)
で、サビの最後でエミール君(人はこう生きるべき)とバイバイ(決別)しています。これって、実は最初の「綺麗にさよなら」と同じこと言っているんですよね。
※とはいえ「またね」とも言っているのが優しさというか、柔軟な姿勢で良いと思うんですよね。「人はこう生きるべき」みたいなものに縛られないのも大事ですが、そういう教えも全部が全部嘘っぱちではなくて、参考にすべきところも大いにあるはずで、それを時には思い出していくみたいな柔らかさを感じます。

続いて2番です。

心迷ってるなら
キスしてもいいよ
そんな覚悟だって
気付いていないみたい
いつもそんな感じだから
テレマックに恋して

Émile / GALS

ここは”テレマック”が珍しい単語ですよね。僕もこの曲で聞くまでは1ミリも知りませんでした。テレマックとは、「テレマックの冒険」という小説の主人公で、ユートピア(理想郷)を目指す冒険者なんです。つまり、この曲では人生の目標や夢に向かって実直に頑張ってる人みたいな意味だと捉えるとよいです。
つまり「テレマックに恋して」いるというのは、本気で夢に向かって頑張っている様子の比喩で、主人公はそれに対してすごい覚悟(キスしたっていいくらいの覚悟)を持って臨んでいるんですよね。

マリア偽って多淫なイノセントイヴ
ほんとを教えて
私こそプラトニックロビンソンクルーソー
自然にらしく生きてる

Émile / GALS

ここは特に難しいですよね(笑)聞いたこと無い単語が多い人もいるかと思います。一つずつ見ていきます。

まず、最初のマリアは聖母ですよね。ここではお行儀よく、おだやかに清く正しく美しく生きてる人みたいなイメージでしょうか。
「偽って」も辞書的には2つ意味があって「身分を偽る(=ふりをする)」「人を偽る(=だます)」このどちらととるか微妙なところですね。前者だとするとマリアのふりをしてとなるし、後者とするとマリアをだましてとなる。
僕は前後のつながりを考えると前者だと思っていて、そうだとすると1行目は「聖母みたいに見えるけどその正体は純粋に貪欲な人」って意味になりそうです。
(一応、字面的には性的な欲望(多淫)と言ってるけど、本当に言いたいことは「自分の生き方に正直」とか「欲張りな生き方」みたいなことでしょう)
さらに2行目まで含めると、そういう人を仲間だと思っていて、その人にほんとを教えて(=正直・欲張りな生き方を教えて)と言ってるんだと思います。

続いて「プラトニックロビンソンクルーソー」ですね。これもあまりピンと来ないかと思います。ロビンソン・クルーソーもテレマックと同じく冒険者です。プラトニックは「純粋な」。つなげると「純粋な冒険者」になります。つまり、私こそまさにユートピアを目指している者(夢に向かって突き進んでる者)だ、と主人公は声高らかに宣言しているんです。

※少し補足すると直前に「多淫」等の性的な表現があるので、それを受けて日本語的な「プラトニック(肉体関係のない)」という単語を採用してるのかなと。ただ意味的にはロビンソン・クルーソーを強調してるだけかと思います。たとえば英語で言えばjust nowのjustみたいな。

まとめるとこの段落前半では、
「聖母みたいに見えるけどその正体は純粋に貪欲な人に、
ほんと(エミール君の言うような綺麗事でない生き方)を教えて」
と言っていて、おそらくそういうほんとを教わった主人公が、
後半では
「私こそまさに夢に向かって突き進んでいる者だ。
それはまさに自然で自分らしい生き方だ」
と言っている様を表現しているんだと思います。
堂々としていてめちゃかっこよくないですか。
(歌詞と関係ないですが、
ここはLUNAがセンターで堂々と歌うんですよね。
この曲の現場での見どころの一つです)

そんないい加減に愛さないでね
自分の価値くらいわかってるから
決めたんだ
ただあなたじゃなかっただけ
もう会えないよ
暗い土の中片隅でも
光の粒自分で集めて
自由に綺麗に咲いてくから
バイバイまたねエミール

Émile / GALS

2番サビです。言いたいことは1番サビと同じだと思います。
いい加減な愛(人はこう生きるべき)を拒否して、自分の価値を信じて生きることを決めた主人公。
3行目の「あなた」はエミール君だと思います。もうエミール君とは会わず、じぶんなりの生き方をしていくという決意ですね。
1番サビの曇り空がここでは暗い土の中になっていて、
土の上を目指して花が成長して咲いていく風に表現されています。

朝も夜も恋でも仕事でも
もっと幸せになりたい
世界はどうせ美しいから
綺麗にさよなら

Émile / GALS

最後です。今までの歌詞の総括みたいなことかと思います。最初の1~2行目は、いうなれば多淫(欲張り)ですよね。そういう欲張りを躊躇なく目指して、綺麗な生き方にさよならして生きていくゾっていう覚悟・決意。主人公からエミール君への回答ですよね。

全体を通して簡単にまとめると、
最初は周囲の人に遅れをとって傍観者みたいになっていた主人公が、エミール君と出会って、少し惑わされそうになるけれど、エミール君の教える綺麗な生き方を捨てて自分らしく生きていく覚悟を決める、そんなストーリーだと思います。GALSのテーマであるGALマインドが随所に見られる非常に良い曲だと思います。

僕は上記のように解釈しましたけど、失恋ソングみたいな側面もあって、そう捉えるのもいいかもしれません。でもいずれにしても、元々自分の信じていた・愛してた何か(人にしろ生き方にしろ)と決別して、新しいところに向かっていくというニュアンスなんだろうと思っています。少し寂しいけど前向きみたいな、そんな感覚。

一気に書いてしまったので読みにくいかもしれません。また、過保護というか細かく書きすぎて野暮だったかも。すみません。少しでも参考になればと思います。

それではまた。

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