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【#教育005】ただ褒めるだけではダメ! 褒めて伸ばすために気をつけること

 「褒めて伸ばす」。子育てについては、最近当たり前のように聞く言葉になりました。実際に保護者の方もなるべく褒めようとしますし、子どものほうも褒められることに慣れているように思います。反対に、注意されることが減ったためか叱られ慣れておらず、少しの注意で落ち込んでしまう子もいます。

 確かに褒めて伸ばすことは大切です。注意や叱責をするよりも、できているところを褒めることが行動改善につながる、という行動を分析した研究もあります。

 ただ、やみくもに何でも褒めればいいというものではありません。褒めるには「褒め方」もありますし、「褒めるタイミング」もあります。本当に子どもの自己肯定感を高め、力を伸ばすためにはどうすればいいのか。今回は褒め方についてお話ししていきます。

「当たり前」にせず「褒めポイント」を探す

 自分では普段からいろいろな事を褒めているつもりでも、実際には子どもが「褒められた」と感じていないことがあります。その裏には「これくらいできて当たり前」という大人側の意識があるようです。

 例えば、朝起きるのが苦手な子がいたとします。10回中せいぜい2回か3回くらいしか自分で起きてきません。「自分で起きるのは当たり前」という思いがあると、せっかく自分で起きてきてもあまり褒めようとは思わないでしょう。「当たり前」だからです。

 ただ、子どもにしてみると、普段起こされないと起きられないのに今日は起きられた、という気持ちがあります。ここをうまく拾って褒めてあげることが大切で、これを「当たり前」にしてしまうと、「せっかく起きたのに認めてくれないなら自分で起きようが起こされようが一緒」となってしまいます。そもそも、普段半分もできていないことは、これから伸ばしていくべきところですので、「当たり前」にしないように気をつけましょう。

 この例であれば、「今日はよく一人で起きてこられたね、えらいね」という声かけをしてあげたいところです。するとその声かけによって子どもは嬉しくなり、もっと褒められようと思って起きられる回数が増えていきます。また「自分はできる」という自己肯定感の向上にもつながり、次の「できる」にもつながります。

何を褒められているのかをはっきり伝える

 褒めても褒めても伸びない場合、そもそもお子さん自身が「何を褒められているのか」がよく分かっていないこともあります。褒めて伸ばしたい力があるのであれば、何ができたから褒められているのかをしっかり伝えることが大切です。

 「今日はたし算の繰り上がりを忘れずにできてよかったね」「洋服を自分でかけられてえらいね」など、何を褒められているのかが分かると、お子さんは次にそのポイントに意識を向けやすくなりますし、その行動を続けようとするでしょう。

嫌みを加えず無条件で褒める

 また、褒める時に嫌みにならないようにも気をつけましょう。せっかく褒めているのに「やればできるじゃない。いつもそうやってくれればいいのに」などと、大人はついつい言葉を加えがちです。

 しかし、聞く側の子どもの立場に立つと、「せっかくやったのに注意された」「いつもできていないと言われた」と感じてしまうことがあります。これは場合によっては、褒めるのとは逆効果になってしまうことも。褒める時は「いつもそうやってくれれば」などの言葉は控えつつ、無条件に褒めることが大切です。

反抗期の子どもへの褒め方は要注意

 お子さんが反抗期の年齢になると、そもそも褒められたことを素直に受け止めず、逆にイライラしたり、時に褒められたことと反対の行動をとろうとすることもあります。なかなか難しい年齢です。

 この思春期・反抗期の時期に気をつけたいこととしては、年齢的にできて当たり前のことを大げさに褒めないこと。ようやくできるようになったと思って褒めてみても、「そんなのみんなできてるし」となり、「ばかにされた」となってしまうこともあります。

 こういった場合には、「褒める」を「感謝する」に変えてみましょう。先の例でいけば「一人で起きてきてくれてありがとう、助かるよ」などのような言葉かけです。これだとあくまで親の気持ちを伝えているだけですから、否定されにくく、言われた子どもも比較的受け入れやすいといえます。

 ただ、表向き反抗していても、やっぱり褒められれば嬉しいものです。テストの点がよかった、委員に選ばれたなど、お子さん自身が喜んでいるものがあれば「すごいね」「よく頑張ったね」などと褒めつつ一緒に喜んであげてください。子どもの喜びに共感することが大切です。

 褒められるのを嫌がるようなら「私は嬉しいよ」と気持ちを伝える程度でもかまいません。子どもは自分の嬉しさが親にも伝わったと感じると、安心して自立に向けて進んでいくことができます。もしかしたら「うざい」などといわれるかもしれませんが、成長にとってはきっとプラスとなるでしょう。

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 このように、「褒める」を「伸ばす」につなげるためには、ちょっとした工夫や年齢に応じた対応が必要です。この前褒めた行動が続かなくなることもありますが、成長は一直線ではありません。ここでご紹介したポイントを振り返りつつ、少しずつ「できる」を増やし、自己肯定感を高められるように接していきましょう。

(山崎 衛 公認心理師/臨床発達心理士/特別支援教育士)