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【#教育006】ゲーム使用のルールはどう作る?~ゲーム依存にしないための対処法①~

 「うちの子はゲーム依存ではないか?」そういったご相談を受けることが近年増えています。特にコロナ禍以降、ステイホームと言われゲームに触れる機会が増えたことも影響してか、ゲームの話題が多くなってきているように思います。

 WHO(世界保健機関)が出している「ICD-11(アイシーディー・イレブン)」という病気の分類リストがあるのですが、ここにはじめて「ゲーム障害」が明記されました。これにより「ギャンブル」に加えて「ゲーム」も依存性がある行動の一つとして認識されるようになり、新聞やテレビなどでも取り上げられるようになりました。

 「ゲーム依存」とは端的にいうと、ただのゲーム好きとはちがい、本来やるべきことである学習や日常生活に大きな支障が出る程度に没頭してしまう状態をいいます。今回は、ゲーム依存にさせないための対処法①として、ゲーム使用のルールについてお話しします。

ルール決めの実際

 「ゲームで遊ぶ時のルールを作る」。これは、ゲーム依存にしないための最も基本的な対策の一つで、多くのご家庭で試している方法です。

 しかしゲーム好きのお子さんの中には、なかなかルールが守れず、保護者の方も根負けして気づけばズルズルと約束が反故にされてしまうことも少なくありません。特に、思春期以降のお子さんですと、親のコントロールが効きにくくなりますので、一層難しくなります。

 では、ルールを守りやすくするためにはどうすればいいのでしょうか? ルール作りのタイミング、ルール内容、決め方の3つの観点を見ていきましょう。

ルール作りのタイミング

 ルールを作るタイミングですが、やはり原則はゲーム機(やゲーム目的のスマートフォン)を買う時になります。ルールを守ることをお子さんが約束してからゲーム機を渡すのが最も効果的です。お子さんはゲーム機を欲しがりますので、多少厳しめの条件をつけても「守るから買って欲しい」となります。せっかく買ってもらったゲーム機を取り上げられては困りますので、ルールを守ろうという意識も強まるため、ルールを守りやすくなります。

 もうすでにゲーム機を持っている場合にも、できるだけ早いタイミングでルールを決めたほうがいいでしょう。夏休みなど長期休みに入るタイミングや、定期テストの前ないし終わった後など、お子さんが納得しやすいタイミングで、一度家族で話し合ってみてもいいでしょう。

どのようなルールにすればよい?

 私も多くのご家庭とゲームの話をしていますが、ルールやその運用の厳しさはまちまちです。ここでは比較的多いルールをいくつかご紹介します。

1)平日は1時間、休日は2時間まで

 ゲーム機等には、ペアレンタルコントロールという、保護者のスマートフォン等でゲーム機に制限をかけられる機能があります。それを活用しつつ時間を制限して遊び過ぎを防ぐという対策は多くのご家庭で取り入れられています。お子さんの下校時間や習い事、宿題のペースなども考えつつ、ゲームで遊んでもいい時間を決めていきましょう。

 ゲーム依存の専門家の間では、最長でも1時間半から2時間くらいと言われていますので、まずはそのあたりを目安にしてみましょう。ゲームがないと、遊ぶものがなくなってしまうという状態になると、お子さんのイライラ感も強まりますので、ゲームの他に楽しめるものをいくつか持っておくとスムーズな切り替えにつながります。

 また、友達が遊びに来て一緒にゲームで遊んでいる際には、状況に応じてやや緩めてあげるご家庭もありますので、そういった際には少し柔軟に考えてあげましょう。

2)自室に持ち込まない

 ゲーム機は、テレビにつなぐだけでなく持ち運べるようになっているものが多くあります。自室に持ち込むと勉強しているのかゲームをしているのかも見えにくくなり、年齢が上がるほど夜まで部屋でゲームをしている、という状態に陥りやすいですので、早い内に「ゲームはリビングで」などの習慣をつけていきましょう。

3)充電はリビング、親の寝室で

 充電場所を子ども部屋にしてしまうと、近くにゲーム機があるため、学習の集中力が削がれたり、つい触ってしまうことにもつながります。また夜にゲーム機に触れていることを把握できなかったというケースもあります。お子さん自身「やめなきゃ」と思っていても、近くにあるとなかなか自己コントロールが大変ですので、物理的に距離をとってあげることは効果的です。

 リビング充電のご家庭も多いですが、夜にこっそり持ち出すお子さんも中にはいますので、そういったことが心配されるようであれば、はじめから親の寝室で充電すると決めておいた方がいいかもしれません。

4)宿題が先、勉強の合間にゲームをしない

 宿題など学習を先にするというルールも比較的よく聞くルールです。まずやるべきことを済ませたほうが、心置きなくゲームを楽しめるため、短時間でも満足感が高まるでしょう。

 この順序が逆になると、特に勉強が苦手なおこさんには「ゲームをやめたら勉強させられる」と不快感を感じやすくなり、よりゲームから抜け出しにくくなります。ですので、学校から帰ってきて少し気分転換をしたい場合でも、「ゲームは後」のほうがお子さん自身も楽といえます。

 また、勉強の休憩時間にゲームをしないというルールも、お子さんの負担軽減につながります。勉強の合間の時間にゲームをしてしまうと、休憩後、再度勉強に向かう際にまた大きな負担を感じやすいためです。勉強の合間には、おやつを食べる、少し体を動かすなど、切り替えのしやすい休憩がオススメです。

5)就寝時間を決める

 ゲームで遊ぶ時間が増えると、特に宿題などが多い場合には就寝時間が遅くなってしまうこともあります。そのため、ゲームの許可時間に関わらず「○時までには寝る」というルールを作るご家庭もあります。

 ゲーム依存傾向が強まると、特にオンラインゲームの場合には夜型になりやすいと言われていますので、寝る時間を決めておくのは大切なポイントの一つといえるでしょう。

取り上げたら「どうしたら返すか」を決めることが大事

 ルールが守れない時に一定期間ゲーム機を取り上げるご家庭も多くあります。

・2回ルール違反があったら取り上げる。
・○時までに充電器に置きにこなければ取り上げる。

 など、取り上げる基準も見える化して、お子さんと共通理解を図っておきます。あらかじめ決まっていますので、いきなり取り上げるよりも納得感が得られやすくなります。

 ただここで気をつけたいのが、「どうしたら返してもらえるのか」も含めて決めておくこと。ただ取り上げるルールだけを決めると、お子さんはいつ返してもらえるのかが分からないため、ゲームの隠し場所を探ろうとしたり、友達から借りてきてしまうなどの状況になったり、がっかり感が強すぎて、本来やるべき学習についての意欲まで下げてしまうお子さんもいます。ですので、

・5日間したら返す
・3日間○時までに寝られたら返す
・家の手伝いを○回できたら2日で返す

などの返してもらえる目安を事前にしっかりと約束しておきましょう。

お子さんと一緒にルール作りを

 そして最後に一番大切なことですが、ここまで見てきたようなルールについては、親が一方的に決めるのではなく、お子さんと一緒に作るようにしましょう。ゲームに一番詳しいのはお子さんでしょうし、実際に遊ぶのもルールを守るのもお子さんです。ですから、親の希望を伝えるだけでなく、お子さんにとって守りやすいルールを一緒に考えていくことが大切なのです。それがルールを守りやすくするためのコツの一つとなります。

 自分で決めたルールは、一方的に決められたルールよりも、納得感があり守りやすいのは言うまでもありません。これを守っていくことは自己コントロール力の向上にもつながります。

 また、年齢や環境変化によって定期的なルールの見直しも大切です。他のご家庭とルールが違いすぎると「うちばかり厳しい」となってしまい、ルールを守ろうという意欲が下がってしまうこともあります。しっかりとお子さんの話に耳を傾けつつ、お子さんの生活全般を一緒に確認し、保護者の方の心配も伝えつつ、よりよい落としどころを探っていきましょう。

 そして、一旦決まったらしっかりと文字にして貼っておくなど、すぐに確認できるようにしておきましょう。

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 今回はゲーム依存にしないための最も基本であるルール作りについてお話ししてきました。ゲーム問題でお困りの方はできそうなところから、ぜひお試しください。

(山崎 衛 公認心理師/臨床発達心理士/特別支援教育士)

【参考サイト】
日本の依存症治療の中核となっている、
独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターのホームページで、
「ゲーム障害・ネット依存・スマホ依存の治療施設リスト」
が紹介されています。また、同ホームページには、
ゲームやインターネット依存のチェックテスト(スクリーニングテスト)
も掲載されています。
必要に応じてご活用いただけるようご紹介しました。