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社長になりたいが口癖だった友人が社長になる方法を教えてくれた

「俺、ついに明日社長になるわ。」
先日、衝撃的なニュースを告げるLINEが僕のiPhoneに届いた。送り主の名は吉田くん。高校の同級生で、酒と女とタバコとギャンブルを愛するナイスガイだ。

「決まりを守るのが苦手なんだよね」「俺に期待しないでほしい」「俺自身俺を雇いたいと思わないから将来社長になるわ」「社長になったらお前を雇ってやるから楽しみに待っておけ」
など高校時代にはクズ寄りの発言が目立った吉田くんだったが、大学でラクロス部に入部してからは嘘のように真人間となってしまい、卒業と同時に大企業に就職した。
大企業に就職したと聞いた時、彼は遅めの厨二病に罹患していたんだな、としみじみ思ったものである。

そんな彼から「社長になる」という知らせを受けたとき感銘を受けた。
有言実行、高校の時の彼は未だ死せず。この時を待っていたと言わんばかりに大企業に就職してからも虎視眈々と機会を伺っていたのだ。
これを喜ばずして友達と呼べるだろうか。決して働き者とはいえない彼がどんな仕事をするのか興味があり、カフェで会うことになった。



待ち合わせのカフェに着いた時、彼はまだ来ていなかった。いつものようにカフェアメリカーノを頼んでから数分、吉田くんがやってきた。
PRADAのセカンドバックに白いパンツ、黒のタートルネック、見るからにお金持ちの服装だ。僕のスウェットにパーカーとは雲泥の差で、身分で服装が分けられていたという歴史は繰り返すことを悟った。


たわいの無い会話の後、本題を切り出した。

「ついに社長になるんだね。口だけじゃなくてびっくりしたよ。」
「そうだろ。俺はやる時はやる男なんだ。」

早速どんな仕事内容かを質問しようとしたが、僕の言葉を遮って話し始めた。
「社長になる男は社会に風穴を開けなければならない。」
どうやら社長たるものの器の話をしているようだった。しばらく黙って話を聞いていたのだが、抽象的で意味不明だったので痺れを切らし、「どんな会社か教えてよ」と問い正した。

「そういえば言ってなかったな。会社のホームページがあるから見せるわ」と答えると同時にスマホを手渡してきた。



受け取ったHPはどうみても風俗店の公式HPだった。見るからにコスプレものである。見てはいけないものを見てしまったような罪悪感に駆られた。正直君の性癖は興味がないし、知りたくもない。

画面と吉田くんの顔を反復横跳びしたところで種明かし。あのLINEを翻訳すると「明日風俗に行ってきます」という宣言だったようだ。

そのお店では自分のことを「社長」と呼びながらサービスをしてくれるため、吉田くんの会社の中で「社長になる」はその風俗店に行くことの隠語だそうだ。

社会に風穴を開けるというありがたいお言葉は、履いているストッキングを破くこと。ストッキングを破くことで露わになる肌とパンツは芸術的かつ観音的で、一度やると病みつきになるらしい。

「お前こういうの好きだろ?だからこのお店教えたかってん。」屈託のない笑顔でそのお店の良さを語る吉田くんは高校の時から変わらなかった。



蓋を開けるとくっそくだらない内容に脱力してしまったが、お金さえ出せば60分間は社長になれるという事実は僕の胸に深く刻まれた。

心の底から誓っていうが、コスプレ物が好きと言うわけでは決してないけど、近いうちに訪れる昇格試験のイメージトレーニングのため近々社長になりに行こうと思う。

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