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百人一首は日本古来のラブレター

百人一首、小学生くらいで触れたことがある人も多いのではないでしょうか。
ぼくもそうでした。
でもなんとなく音で覚えて、何言ってんのかわかんないなってくらいで
終わっていました。

先日青森まで夜行バスで行くという無謀なことをしたのですが
10時間、全く眠れず、死にそうになりながら退屈の極地で辿り着いたのが

百人一首、現代語訳で読んでみるか

でした。
これが、現代語訳でもよくわからないものもある中で
ロマンチックなものがたくさんあって驚き。
不愉快な体の疲労感に反して心の栄養になりました。

そもそも百人一首とは

百人の読み人の選りすぐりの一首(一句)を選んだ
今でいう、ビルボードトップ100のようなもの。
そりゃいい句が集まっているわけです。
中には”読み人しらず”とされる誰が読んだものかもわからないものがあったりします。
どんな人が読んだのか、わからないのもまた、オツですよと。

特にぼくが好きなものをいくつか。
僕なりの現代語訳&意訳も含むのでご容赦を。

和歌番号15 光孝天皇
君がため 春の野にいでて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつつ

訳:春先、まだ雪も降る寒い時期で私の袖にも雪が積もってきているけど、君のために若菜を摘んでいるよ。

いきなりロマンチックじゃん。
天皇が寒い中、想ったひとはどんなひとだったんでしょう。
想像が膨らむ。

和歌番号18 藤原敏行朝臣
住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢のかよひ路 人目よくらむ

訳:住の江(地名)の岸に押し寄せる波のようにあなたへの想いは募っているのに、夢の中でさえもあなたは人目を気にして会いにきてくれないね。

想っても夢に出てきてくれない人。いますよね。
なんで出てきてくれないんだ!じゃなくて
”恥ずかしがっている”と解釈しているのが素敵な視点だとしみじみ。

和歌番号23 大江千里
月見れば ちぢに物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど

訳:秋の月を眺めていたら、いろんなことを思い出してしまって物悲しい気持ちになってしまう。秋は自分にだけ訪れているわけではないのに。

なんかもう、わかる!その気持ち!という句。
少し違う見方をすると
いろんな悩みがあって、自分一人大変な目にあっているような気がしても
それは思い過ごしで誰しも経験するような"ありふれた苦悩"
なんだろうなって。

和歌番号38 右近
忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな

訳:あなたに忘れられた自分のことなんてどうなってもいい、
ただ”私を愛する”と神に誓ったあなたに、神様が罰を与えないかが心配よ。

洋楽カリスマ女性シンガーの歌詞和訳を読んでるのかと思うような、
未練と振り切りの表裏性!心がゾワゾワする感覚にさせてくれる。
最高。

和歌番号50 藤原義孝
君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな

訳:あなたと会うためなら命だって投げ出せると思っていたのに、
あなたに会えた今は、いつまでもあなたと生きていたいと思っています。

最高です。一番好きです。
少しでも会えたらと思っているのに、会うと離れたくなくなる。
恋や、愛ってそういうことなんだよ!っていう句ですね。

和歌番号63 左京大夫道雅
今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで いふよしもがな

訳:もうあなたへの気持ちは断ち切ったけど、このことは人づてではなく
あなたに直接伝えたいのに。

でました、セレーナゴメス系。
未練と前に進む気持ちの表裏性。くうぅ。


どうよどうよ、まだまだ恋にまつわる句はたくさんあるんだけれども
百人一首、めちゃくちゃよくないですか?

限られた文字数に込められた意味。
僕の意訳も含む訳を書いたけど、人によっての感じ方も
百人百色。
日本語の奥深さと、昔の人たちの感性の豊かさに
一晩でいいからこの頃にタイムスリップしてみたいなと思う。

でも絶対に一晩でいい。

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