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生命の火花。
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2018年2月の記事一覧

沈黙

「あ、最近私に連絡した?ごめん、しばらくLINEブロックしてたからさ」

だらしなくベッドに寝そべって生命力を感じながら、日本の友人と通話してそんな報告もした。

日本ではそろそろ日曜の午後が終わる頃で悲しみが増す時間帯だろうけれど、その友人は忙しいのが当たり前の生活を送っているから、何曜日であろうと社会の荒波に揉まれている。

真逆の性質を持ったその友人は、交わることのないような私の

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残酷な人

女も人間も生物もやめたい。

貴方がそれを阻むのです。

短編夢劇場

一夜にして

10か20の夢を見た

一話10分もなかった夢もある

それだけたくさん見たのに。

ひとつだけを覚えている

あなたの寮内に侵入して

廊下で待っていた

あなたは見て見ぬ振りでわたしの横を通り過ぎる

わたしはもちろん追いかける

エレベーター内で他の人に気づかれないよう

わたしはあなたのうなじに口付ける

そっと温もりが伝わる

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本当は

こんなに長生きする気はなかった

だから

金も人脈も物も

もはやほとんどない

生き通しただけでも褒めてください

ごめん

せめて何処へも出かけず

悪い気を起こさず部屋にこもるつもりです

今日が一年で一番嫌い

恐怖している

それでも

ついてきてくれるのですか

あなたには絶望を知ってほしくない

『君の名は。』

高級イタリアンレストランにて、私は待っていた。

無限に続く喧騒の中で、ミラノ風ドリアが50皿を超えて提供される。赤と白のワインボトルは机上に乗り切らない数ほどあり、それに伴って学生のノリもタチが悪くなる。まれに注文されるミラノ風ドリア以外の料理をどの卓上に載せればいいのか店員は困惑し、ベタベタになったテーブルを拭くための紙ナフキンも散乱している。以前悪酔いしてミラノ風ドリアを他の客に投げつけ

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