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生命の火花。
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2017年9月の記事一覧

魂の旅性

此処ではないところを渇望する人間にとって、「今ここ」における自分を考えることは無意味である。此処ではないところを追い求めていけば、常に自分の存在するところが「今ここ」になってしまうとしても、そうであるからといって「今ここ」にいる自分が自分のすべてである、とする前提は間違っているのではないか。

セクシュアリティの分野を例に取れば、自らがヘテロセクシュアルであるとすること、ゲイであると認識するこ

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生きていてほしい。

自殺していいのか?

もう二年も前になる。友人と、伝統(≒ボロさ)で名高い京大吉田寮に泊まったときの議論テーマだ。
11月末なのだから、オンボロの建物内は当然ながら寒かったが、今思えば9月半ばのドイツよりはましだった。

いいでしょ、と私は簡単に言った。
自分の命なのだから、どうしたっていいはず。自己所有権は自分にあるのだから。

友人は唸った。
そうは言えないんじゃないの。
空衣が死

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幸せな鳥

幸せな鳥

どこにもいられない鳥が、君の隣ならどこへでも夢を見、共に羽ばたけた。

鳥は、生まれつき足がなかった。だから巣を作ることも、子供を持つことも、鳥にはできないのだった。生きるには飛び続けるしかなかった。そんな鳥と同じ密度と温度で呼吸をできる生きものは、いるはずがないと思っていた。信じるだけ無駄なのだと、鳥は知っていた。

気を狂わすほどの花粉の風にも、焼き鳥になりそうなほどの灼熱の陽射しにも

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言えないから、書く。