ゴールの解像度とアイデアの関係
先日、とある企業で「アイデアについて講演してほしい」とお声がけいただき、大人数の前で私なりの考えを話してきました。
その中で「ゴールの解像度」という話をしたパートが評判がよかったので、noteに書いておこうと思いました。
(ちなみに具体的なアイデアの出し方については今回は触れません。色んな流派がありますよね)
そもそもアイデアとはなにか?
かなり広範囲な用途や解釈で使われている「アイデア」。そもそも何を意味するものなのか、言葉としてのアイデアをwikipedia(en)とOxford Dictionaryで調べてみると、
wikipedia
In a popular sense, an idea arises in a reflexive, spontaneous manner, even without thinking or serious reflection.
一般的な意味でのアイデアとは、思考や深刻な反省がなくても、反射的に自発的に発生するものを指す。(哲学のイデアの記述後)
Oxford Dictionary of English
a thought or suggestion as to a possible course of action :
実行可能な行動方針に関する考えや提案
と書いてあります(下の翻訳は意訳です)。
上記を前提に、さらに私の考えも加え整理すると、
”アイデア”とは、課題に効果があり、実現可能な実行案。
と定義してよいかと思います。
よいアイデアとは何か?
上記の「アイデアの定義」から考えるとアイデアの良し悪しを判断するには、「課題に効果があるか」「実現可能か」の二点を判断基準とする必要があることが説明できます。
そのアイデアは課題に効果があるか?
これは課題がそもそもどういう性質のものなのか、制約はどんなものなのかを知らないと効果があるかどうかも判断できません。なので、この判断基準のためには課題への理解をぐぐぐっと深めることが最も重要です。課題がどういう風に解決されればいいのか?を細かく想像する、課題が解決された状態の細かな想像、解像度を上げる必要があります。
そのアイデアは実現可能か?
アイデアが実現可能かどうかは、人、資金、期限の三点で判断できます。人と資金は大体の組織ではプロジェクトごとにいくつかのパターンがあるので、アイデアの実施の際にプロジェクトごとに大きく差が出やすく毎度確認の必要性が高いのが期限です。アイデアの実現可能性を考えるためには期限に関する解像度を上げる必要があります。
つまりゴールの解像度を上げるということ
つまり、良いアイデアかどうかは解決された状態はどんな状態か?実現時期はいつなのか?ということに対する理解度を上げ、具体的に想像できる状態になることで判断しやすくなると言えます。これはゴールの解像度を上げると言い換えるとわかりやすいと思います。
ゴールの解像度とアイデアの自由度の関係
すべての課題にはアイデアの効果への期待として水準(必要水準)があります。上記の図の赤い横線です。このレベルというのはゴールへの理解度が高まってこないと見えてきません。上記の図で横軸の時間が進み、ゴールへの解像度が上がりAの地点に達して初めて見えてきます。そして、Aが見えた地点から期限までに出たアイデアがよいアイデアの可能性が高く、上記の有効アイデアと記された三角形の範囲を広げるように動けばよいアイデアの出現確率を上げられると考えています。
何よりもまずゴールの解像度を上げろ
上記の図でAのポイントを時間的に前に持って来れば、有効アイデアの範囲は拡がります。通常、プロジェクトを通して期限は変わらず、アイデアが求められる効果の水準も変化はありません。さまざまなアイデア出しの流派や手法がありますが、多くのケースでよほどのアイデア出しの手練でもない限り、人が出すアイデアのユニークさには大差がありません。つまり、ゴールの解像度を上げる速度を上げるしか「よいアイデア」の出現確率を高める方法はないのです。
多くのプロジェクトは初期にアイデア出しやリサーチ作業に力を入れて、ゴールへの理解度がやっと高まって来るのは後半で、しかもその時点では捨てにくい思い入れが入ったアイデアを持ってしまっていて、バイアスに絡まれ身動きも取れない状況に陥りがちです。何よりもまずやるべきはゴールの理解度、ゴールの解像度を上げることです。
自由度下がらない?
ゴールへの解像度を上げることとは、思考の幅を狭くすることではありません。むしろ、ゲームの全体像を把握することで、トリッキーなアイデアなどゲームのルール内でのぎりぎりの線を行くアイデアなどが生まれやすくなるのです。「おもしろいけれど、プロジェクトの目的にフィットしないアイデア」にかける無駄な時間をなくすことができます。無駄な時間を減らすことでより自由に発想する余裕ができます。制約や水準が理解できたプロジェクト中盤以降にこそアイデアの自由度を保存することが重要です。
新しいアイデアを求められるプロジェクトでは、つい楽しいアイデア作業にすぐ移りがちです。ポストイットを手に取る前に、そもそもどういう状態が自分たちのゴールなのか?を考えることに時間をどっぷりかけること、オススメです。
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