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ほんの少しの優しささえあれば【感想】

戦争は女の顔をしていない、1巻を読了しました。

本作は本当に素晴らしい。素晴らしいが故にこうも苦々しい気持ちにさせられてしまいました。


1941〜45/5月までに起きた独ソ戦を、参戦した女性達にインタビューし漫画化したもの。

あまりセリフや説明が多い訳では無いけれど、しかしそこにあった人としての誇りや友情、愛が感じられました。
だからこそ、こんな素晴らしくも残酷な体験を記した本があるのに、どうして戦争など始めてしまえるのか……と思わざるを得ませんでした。


現代と1940年代を比べると情報収集する手段には圧倒的な差があります。ヒトラーがそうしたように、群衆の洗脳が今よりも簡単だったでしょう。
盲目的にテレビやラジオの言う事を鵜呑みにし、その正しさを疑う事もない。声を上げれば逮捕されて罰せられ、殺される。
ナチス・ドイツや日本がそうでした。

しかし現代において、そこそこに進化した現代においても何故盲目的に信じられるのでしょうか?
例えばTwitter(X)でも日々自論が展開され、脊髄の反射の様に脳に刻み込む人々がいます。
ちょっと調べれば済む話なのに、何故
「これは本当に合っているのか?」
と疑問を持てないのでしょうか?

ウクライナが悪いと親が友人が先生が大統領が言った。
だから立ち止まらずに人を殺せるのでしょうか?

今月の4日、プーチンが徴兵する年齢の引き上げを決め、徴兵令状が出た者が出国した場合、禁固刑を科すと法律改正を進めています。
それは徴兵制が決まった直後に、ロシアから出国する人が急増したからです。
「自分が、家族が戦争に行って欲しくない」
誰しも死にたくなんかない。当たり前ですよね。

そう、当たり前なんです。何故その考えが戦争の前に出て来なかったのでしょう。自分達の時だけ都合が良過ぎはしないか、なんて声も上がっていました。

その家族や友人に向ける優しさを、ほんの少しだけでも他人に向ける事がどうして出来ないのか。
なぜ寛容になれないのか……
ただ平和に生きたいだけなのに。
ウクライナの人達は強くそれを思っているでしょう。



私は怪談やそれに類する物を書いています。
怖い物が好きというのも大いにありますが、それと同じくらいに
ほんの少しの優しささえあれば、そんな悲劇は起こらなかったのに、どうして
を描きたいと思っています。
戦争という大きい悲劇だけでなく、「変な家」の惨劇も数多ある事件事故も、見ず知らずの他人を誹謗中傷する事も、ほんの少しだけ他人を思いやれれば起きなかったはずなんです。

人は物を見る時にその物の一面しか見えていない。
ある人は丸だと言い、ある人は長方形だと言う。
物理学的に言えばそうなのかもしれません。
しかし、ふと立ち止まってちゃんと確かめてみれば

それは円柱であり、2人は同じ物を見ていた

なんて事もあるのです。
戦争を止める事が自分には難しくても、周りに起きるイザコザは止められるかもしれない。
そう気付ける人が増えればと思った今作でした。

余談ですが、進撃の巨人のエンディングを貼っておきます。
宜しければぜひお聞きください。

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