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提灯の火を消す女【怪談】

まただ。
俺が夜出掛ける時には絶対にいる。
それが多分……この世の者ではない事は何となく分かっている。
どんな土砂降りであろうが傘も差さずにそこにいるし、誰1人としてそいつに見向きもしないからだ。

自宅を出、駅方面に向かう途中、鳥居がある。
普段はなんてことの無い鳥居だが、何かの節句にはその鳥居に提灯が幾つも吊り下げられる。詳しい日程は知らないが、大体四季ごとに1回、多分1ヶ月くらいの間だとは思う。

今年の冬、年を越して少ししたくらいだった。
あぁ今年も提灯が吊り下げられてるな、と何気なくそちらを眺めていた時だった。

ふと、鳥居の奥から和服姿の女性が現れ、1度俺の方を見、3段ある内の最下段の1番左に吊り下げてあった提灯の火を消した。
そしてそれ以外は何もすること無く、ふらりと鳥居の奥に戻って行った。

その時は特に気にも止めなかったのだが……次の日も、その次の日も。時間も曜日もバラバラなのに、俺がその鳥居の前を通る時は必ずその女がいる。
タイミング良く目の前を人が通ったとしても誰も見向きもしないし、提灯の火が消えても電気系統の故障かと思うくらいなものだろう。

日を空けて行くと空けた日数分消されている。
……今日でとうとう最上段の真ん中まで来てしまった。

最後を消されると何が起こるのか分かったものではないが、確かめに行きたい気持ちもある。

どうするかは当日考える事にしよう。

……とにかく、悪いことではないと願うばかりだ。


雨の日の鳥居が大変素敵でしたので…

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