見出し画像

ゼロかイチかは、実は大違い。

持っている人は更に与えられて豊かになるが、持っていない人は持っているものまでも取り上げられる。
新約聖書 マタイによる福音書13章12節 (新共同訳)

こんにちは、くどちんです。キリスト教主義学校で聖書科教員をしている、牧師です。

まあまあ長い間聖書という書物と付き合っているのですが、「よく分からんなぁ」と思う言葉もまだまだいっぱいあります。
でも人生の年月を重ねる中で、「あ、そういうことだったのかも」とふと腑に落ちる経験も、何度もあります。

今回は、冒頭の聖句に対するそんな「あ、そういうことか」についてのお話です。

この「持っている人は更に与えられるが、持っていない人は持っているものまで取り上げられる」という言葉は、福音書と呼ばれるイエス物語の中に何度か出てきます。
これを読む度に、「それってえぐくない……?」というもやもやした気持ちになっていました。
持っている人はもっともらえるのに、持っていない人はさらに乏しくなるの? 格差拡大??

いや、実際の世の中では確かに資本のある人はそれを元手にさらに儲けて、乏しい人は日々の生活を満たすことさえままならないままあくせくさせられる……ということがしばしばあると知っています。でも、だからこそ、「えー、イエスさままでそんなこと言う……?」みたいな、げんなりした気持ちになってたんですね。

ところが最近、ふとしたことから、「あ、この言葉が言っていたのはこういうことだったのかも」と思う経験をしました。
それは何か。筋トレです。

いや、筋トレって言うと言い過ぎなんですけど、あまりに肩凝りがひどいので、また毎日ラジオ体操をやっているんですね。加えて、ネット上でたまたま見た「2分間のエクササイズ」というのを合わせて続けているんです。「なんぼなんでも、2分だけならできるやろ~」と思って。

でも、たった2分であっても、日頃全くと言っていいほど運動しない私にとっては、初めはすごくきつかったです。「えー、たった2分やからまあやれたけど、やっぱりしんどいやーん( ノД`)」と思って、やめたくなりました。でも「まあ、たった2分だから」を合言葉に、ぼちぼち続けていたわけです。
するといつしか、その2分が、初め程は苦しくなくなってきたんですね。
最近では「まあそれなりにしんどいけど、ちょっと気持ち良くもあるかな」くらいになりました。

そこで例の聖句です。「あ、運動習慣の『ある人』はもっと気軽に運動に取り掛かって、一層体を動かせるようになっていくけど、運動習慣の『ない人』は、運動を敬遠しているうちにさらに運動ができない体になっていってしまうんだなぁ」と気付いたんです。

私は教員ですが、読書の習慣とか、向学心なんかも同じだなと感じます。
本を読む面白さを少しでも知っている人は、また本に手を伸ばそうと思うけれど、初めから読書習慣の無い人は、「読む機会」自体を避けるようになってしまって、ますます読まない……とか。
知識を得て考えの幅が広がることの豊かさを知った人は、いろんな機会に「学ぼう」という姿勢を持って臨むけれど、「知ることの価値」を知ろうとしない人は、何に対しても「知った顔」で済ませてしまって、ますます自分だけの偏狭な価値観に留まってしまう……とか。

言われてみれば冒頭で引用した言葉の前後も、経済的な話ではなく、「天の国の秘密」を知ることができるか、知ろうとするか、という話なのでした。
つまり「天の国について知ることが許されている人はいいけれど、そうでない人はどんどん天の国から遠のいちゃうよ」ということなのですね。

ただイエスはここで、「だからあの分かってない人たちには、たとえを用いて話すのだ」と言っています。
つまり、「持っていない人」は「持っていないからもう諦めな、残念でした~」ではなく、「持っていない人が、持っていないことを自覚できるように、ちょっとでも分かりやすく手渡すよ」とおっしゃっているんですね。親切だな、イエスさま!

そういう意味で、「はじめの一歩」って大事です。はじめの一歩を踏み出せた人は、きっとその後も「前進する喜び」を自ら勝ち取っていけるからです。

私は教員ですが、出会う若い人たちに、この「はじめの一歩」を後押しするのが仕事なのかもしれないな、と改めて思いました。「ゼロ」の状態ではなく「イチ」の状態にしておくための、お手伝い。
自己責任だの、効率だの、生産性だのと世知辛い世の中ですが、「あなたが一歩踏み出すだけで、世界はどんどん変えていけるよ。その『一歩』にはそういう可能性があるんだよ」と示せればな、と思います。

……とか言いつつ、前述の体操とエクササイズ、ちょっと体調不良で休んでました。2日休むと結構もう嫌になっちゃうんだよな……。でもここでも「はじめの一歩、再び」というのが肝心なんでしょうな。
よし、今日はやるぞ~。もう一回「イチ」から始めます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?