華江

27歳

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忘れないように、置く

くたびれた靴は、もう3年間オブジェのように玄関の隅に置いてある。 雨降りの午後、ほっと息をついてお茶をすすっていたわたしは、その靴を見ながら、今なら捨てることが出来るかもしれない、と思った。 その時、別れてから半年が経ったある夕方のこと、コンビニの前でコーラを飲みながら煙草を吸っていたわたしの前で楽しそうにはしゃいでいる中学生の男女5人の頭上にうっすら溜まっている光を、わたしは目を細めてみていた。コンビニにも、彼の名残はあって、それが、うっとおしくてたまらなかった。 一

    • シャッターの先の永遠

      わたしは、写真を撮るようになってから、 「一瞬」というものに、とても意識的になった。 とはいえ、 ひとつひとつの シャッターチャンスを 逃さずにいられるか、と言われたら、 そんなことはないし、 人と、間違わないコミュニケーションが 取れるようになったか、といわれると、?が 頭に無数に浮かんでしまう。 わたしが触ったもの、話しかけたものはすべて そこから 風化していくような気がしてしまうときもある。 アナ雪の、エルサのように。 あんなに、美しくは、ないけれど。 今日なん

      • いつかみた花を愛すように

        今日もいつのまにか時計の針が進んで 夜になってしまったな、 と思う。 ずっと辞めたいと思っていた仕事も いざ急に行かなくなると、すこし恋しい。 書くことで自分の中で の違和感をなくしたい、と、 自分のために書いていたものが、誰かに 触れた時にその人の一部に なるなんてことを期待してる。 今日の岡江さんの報道、とてもショックだった。もし、家に一人だったらしばらく泣いて立ち直れなかったはずだ。でもわたしは、しばらくたったら、父が咳払いをしたことに対して 「え、コロナ?コロナ

        • 「このままでいい」を貫く勇気

          池袋の構内で、ふと、たたずむ。 スーツのサラリーマンに追い越される。 バッグが体にあたり、思わずよろめく。 辺りを見回す。 「わたし、このままでいいのだろうか?」 この本が発売した2013年の日本は、 そういう疑問を心の内に隠していた 人が非常に多い年だったのだと思う。 2013年に、初めて店頭に並んで以降、 現在(2018年付け)まで、発行部数は238万部。 この、青い海のような表紙の本は、 そんな、時代の淀んだ空気にぶわっと風穴を開けた のだと思う。 そして、今、

        忘れないように、置く

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          どこに行ってもどこにも行けないような、どこにいてもどこにでも行けるような

          くどうはなえ おしりについた白い粉を払うと、辺り一面にチャイムの音が鳴り響いた。 夕昏よりも、もう、真夜中のようだった。 甲州街道近くの団地。道の先で トンネルに入るオレンジ色の強い光が見える。 コンビニエンスストアのやけに広い駐車場の中で 白い息をもくもくと上げながら喋っていたわたしたちは 誰ともなく手に持っていた菓子パンの袋を回収しはじめたのを合図に、 自転車の止め具に足をかけたり、ゴミ箱にゴミをつっこんだり、 ラケットバッグをしょったり、マフラーを巻きなおしたりしは

          どこに行ってもどこにも行けないような、どこにいてもどこにでも行けるような

          4年前、渋谷の東急の地下で橋本愛に出会った話

          くどうはなえ 記憶は不確かなものだ。そして、記憶をいかに鮮明に辿ったとしても、そのまま過去に戻れるわけじゃない。どうしたら、わたしたちは今を生きられるのだろうか。 がらがらの電車の車内。 無意識に過去の付き合っていた人との楽しかった記憶を再生するプレーヤーを、気になる誰かと向き合っている瞬間にも探しているような気がする。 向いの席で、会社の同僚っぽい二人組のかたっぽの女の人が、「今更新しく誰かとボディーブロー打ち合うのもめんどくさくて」と腕を組む。後輩の犬顏の男の人が

          4年前、渋谷の東急の地下で橋本愛に出会った話