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If You Leave (君がもし去っていくのなら)。


『僕はきっとこの温度を忘れることはないだろう。』 

小学生編 -5

通学路のイチョウの木にはあざやかな緑が色づき、
夏への扉は、その入り口をもう開きはじめていた。

僕は来る日もひとり学校から帰ると、まっすぐ部屋にあがり、前にもまして狂ったように音楽番組を観あさっては、数少ないレコードを繰り返し回し続けていた。

小学生の男子に処理し切れない感情なんて、ぜんぶ音楽に向けるしかなかった。

そんなエモーショナルな86'、こんな泣いちゃう曲に出会うのかよ。

ちょっと、意訳してみた。

If You Leave (君がもし去っていくのなら)

離れていくとしても 今はまだ行かないで
僕の気持ちを置いていかないで

約束してよ 今だけは待ってほしい
そして それから僕らは別々の道を歩もう

僕たちは余りある時間を一緒に過ごしてきた
でも もうこれが最期なんだ

一秒 そして 一瞬
僕らは 僕たちを終わらせなきゃいけない

(中略)

もし 行ってしまうなら
もし 去っていくのなら
もう 戻ってこないのなら

振り返るなよ
もう 振り返らないで

もちろん、原詞は男女の歌なんだけどね。

音楽を聴いて、涙って出るんかい… 
ってこの頃に知ったのかもしれない。

楽しいのも強くなるのも切なくなるのも穏やかになるのも、みんな音楽で追体験できた。

UK出身のOMD (Orchestral Manoeuvres In The Dark) 、この最強とも言える名曲は、青春映画「Pretty in Pink」のサントラで脚光を浴びて全米TOPチャートの常連になっていくんだけど、

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なにはともあれメロが最良、そしてキャッチーきわまりないシンセ。
PET SHOP BOYS派だったら好きにならずにいられないわけで。
(MVでタキシード着てたり金網つかんだり壁崩れるのとか意味不明だけど)

いま思えばこのスタイルは後のBEAT CRUSADERSにもふんだんにフレージングされていく。

KRAFTWERKに影響を受けたとのことだけど、YMOがシーケンス(自動演奏)で演っていたのを生だと思ってバンド組んだみたいなエピソードも面白い。(名前そのままだし)
かたや卓球さんはOMDのコピーとかやってたみたいで、いろいろ繋がる。

↓ これとかわりとまんま「N.O.」だよね。



それから時が過ぎ、アメリカから送られてくる吉岡の手紙に返事を書いては受け取り、書いては、という幾度かやり取りをした。
向こうの学校のことや音楽事情や食べもののこと etc…

しかし、時間というものは残酷なもので、いつしかお互いの新しい世界を生きることに必死になって、次に晴れて再会を果たすのはまだずっと先のことになる。


そんな小さな小学校の世界で、音楽仲間も皆無、孤立無援な日々の中、ある日ラジオで聴いた1曲により、僕はまた新しい扉を開けることになった。


ーつづくー


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