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AIは発明者となることができるか?:最新の動向

特許出願において人工知能(AI)を発明者とすることができるか、という問題については、AIである「DABUS」を発明者とする特許出願が世界各地でなされ、これに対して各国の特許庁・裁判所がそれぞれ判断を示しています。
本記事では、この問題についての最新の動向を紹介します。

オーストラリア

オーストラリアは、以前の記事でも紹介しましたとおり、2021年7月30日にオーストラリア連邦裁判所(第一審)が、特許出願の願書においてAIを発明者として記載することは許される、との判決をしていました。
しかしながら、その後の控訴審において、オーストラリア連邦裁判所は、2022年4月13日、特許法における「inventor(発明者)」の文言解釈として、「発明者」は自然人に限定されており、AIは発明者となることはできないとして、第一審判決を覆す判決をしました(判決文)。
オーストラリアはこれまで唯一、AIが発明者となる余地があることを裁判所が積極的に認めた国だったのですが、この控訴審判決により、オーストラリアにおいても結局、AIは発明者となることはできないことが示されました。

欧州

欧州においては、欧州特許庁(EPO)審判部が2021年12月21日に、DABUSを発明者とする特許出願を拒絶する判断を維持する決定をしていましたが、その後、2022年7月5日に、決定の詳細な理由を公表しました(決定文)。
詳細な理由の中で、EPO審判部は、欧州特許条約における「inventor(発明者)」の文言の解釈として、「発明者」は人格を有する人である必要があり、AIなどの機械は発明者たりえないと述べています。

米国

米国においては、連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)が2022年8月5日に、DABUSを発明者とする特許出願を拒絶した原判決を維持する判決をしました(判決文)。
CAFCも、特許法における「inventor(発明者)」の文言解釈として、「発明者」は自然人に限定されており、AIは発明者となることはできないと判断しました。

まとめ

以上のとおり、米国・欧州においては、AIは発明者となることはできないする判断が上級審においても示され、また、オーストラリアにおいては、第一審ではAIが発明者となる余地があると判断されたものの、控訴審ではこの判断が覆されました。
これまで、DABUSを発明者とする特許出願に対して特許を付与したのは南アフリカに留まります。もっとも、南アフリカは特許出願の実体審査を行わない国であるため、南アフリカにおいて、AIが発明者となることが積極的に認められたという訳では必ずしもないように思われます。
結局、世界的な潮流としては、(政策論は別として、現行法の解釈としては)特許出願にAIを発明者として記載することを認めない方向にあると言えるように思われます。

 (文責:弁護士・弁理士 乾 裕介)

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